2024年09月16日

嘘もイイ加減にしなさい。その7:新技術だけでは通用しない。

  新技術だけでは通用しないのがハンティングでした。
昔はどの業種も高齢者の経験と言うのはかなり有効でした。
分からない事は高齢者に相談する事が最も有効でした。
しかし今ではパソコンやスマートフォンで検索するのが、最もStdな手法となり、答えはAIが出してくれる時代になりました。

ではそれで獲物に出会え、獲れるのか?  
少しは助けになる事もあるでしょうが、余り有効ではありません。
それは多くのブログ等は上手く行った時の事しか書かれていない為です。

失敗を正しく書いてあるブログは殆どありません。もし実際の失敗の経験値が漏れなく登録されていれば、これを全て学習したAIの言葉は、通常のベテラン高齢者を凌ぐ、かなり有効な手助けになると思います。

所が失敗談は殆ど書かれておらず、稀な成功例だけを連ねても、それは偶発的な要素が大きく、その答からは正解が得られないのです。

夢よもう1度で同じ手法を使って獲れた試しはありません。 
それで行けばAIの助言で夢よもう1度も無い事になります。

元々成功からは「獲れて良かったねしか」得られませんが、一方失敗からは多くを学ぶ事が出来ます。狩猟は失敗の経験から上手くなるのです。

ケンさんが鹿猟を始めたのは1983年33歳からでした。
当時は無線はなし、車も麓に置き、数㎞を全員で歩きました。
AMに待ち場に入る時は弁当持参でした。
獲れなければ猟犬を離した位置で戻るまでひたすら深夜まで待ちました。

そこにマチュアハンディー無線と4WD車を持ち込まれ、やがて無線機はモービル機で高性能となり、更に猟犬に付ける発信機(GPS型ではない)が導入されました。

猟犬が戻らない時はあちこちに分散して猟犬からの電波を探し、モービル機で連絡を取り合いました。最も反応が強い所に飼い主を誘導し猟犬を呼び戻しました。

このお陰で1日に2ゲームが可能となり、捕獲量は倍加しました。しかしケンさんの所に来る鹿は相変わらず皆無でした。

古老からは「新兵器や射撃技術に頼っている内は獲れない」と言われました。
結果はその通りでした。獲れない原因は「殺気」や「気配」の振り撒きでした。

物陰に隠れて「見張り」で頭を動かす、或いは  無線や受信機等を操作するので、声も含め「気配」が漏れてしまっていたのです。

結局獲る為の「禅の心作戦」では獲物が近寄って来る時間帯の30~60分「無線機にも受信機にも頼らずSWを切りました。見張りも辞め、丸見えの所で目を瞑って待ちました。

「気配」振り撒きは消え、鹿は射手の気配が取れなくなり、射程内まで来ました。見張りをしていなければ「鹿が射撃ポイントに来た事が分からない」のではとなりますが、「気配」は相対的な物であり、自らの気配が大幅に下がっていれば、目を瞑っていても鹿の気配に気が付きました。

丸見えの場所で見張りをしな禅の心作戦」に変更してから、あれ程獲れなかった本州鹿も3週連続で獲れました。古老の「教え」は半分正解でした。

古老に依れば、けもの道に銃を予め向けて置き、獲物が来たら「十分に引き付け引き金を引く」と言う物でした。「銃は腕(射撃技術)で撃つ物ではなく、肝で撃つ物である」と教わりました。

事実古老の捕獲成績はグループ内でトップでした。
古老の行動を更に詳しく分析すると、見通しの良い所で、スナップショットをしない代わりに銃を予め予測した鹿のコースに合わせて銃を構えておりました。

新兵器類は全てOFF、見張りでキョキョロする事無く、鹿が近付いても微動する事もなく、ガマンして10mまで引き寄せ引き金を引いています。

ケンさん考案の「禅の心作戦」は独自考案のつもりでしたが、実際は「古老作戦」の改良版でした。 
改良点は銃身を指向して肩付け前に撃つ「スナップショット」及び「連射」、そして「目を閉じて待つ」事であり、「新兵器OFF」「気配を撒き散らさず」「微動もせず」「肝で引き付ける」点は共通でした。

連射は失中時のカバーではなく、複数時及び、非常に高速でブッ飛んで来る鹿への対処用でした。
ケンさんの初捕獲時も鹿は3頭の群れで来ました。先頭の鹿に高速3連射、更に2発追加装填で残る 2頭に2連射しました。スナップショットや連射の技術は非常に有効でした。

3発喰らった先頭の鹿は 即倒、残る2頭も多少被弾しコースが分かれ、それぞれ隣の待ち場で捕獲されました。従来の考えでは3頭を捕獲となりますが、ケンさんの考えでは捕獲1頭です。

古老は以来「肝で撃つ」話はしなくなりました。最も効果があるのは「気配消しとスナップショット」これは現在も非常に有効です。

スナップショットとその後の連射により捕獲率はダブルを含め、大幅に向上しました。
しかし現実には射程内まで鹿を寄せられても、更に射撃技術自体には大きな問題がありました。

銃には反動があり、この反動を体は上手く受け様として発射直前に体が固くなってしまうのです。
その結果として動的ではスイングが止まってしまう「引き止まり射撃」となり、静的では照準が絶妙に ズレるフリンチング射撃となります。

その為に、散弾銃は「30m以内の低速に限定」され、フリンチングに依り散弾銃射撃ではリード合わせが困難になり、フルチョークと小粒弾の運用が出来ず、結果はそれが出来るハンターの「1/10の成果」に留まり、ライフル銃も「20m未満の歩速に限定」されました。

ライフル射撃では照準がズレてしまい、ベテランでも100mの実用能力が限界です。
その為にエゾ鹿は余り撃たれない150mにいます。

これらは共に射撃場通いをする事で、多少の向上は見られますが、そもそも銃の反動がその主原因であり、射撃場通いはその本質的な改善にはなりません。

ライフル銃は本来100m以遠の急所を狙う為の銃で、銃と弾の性能は300mの性能を持っています。
しかしこれらの「性能を発揮出来る」絶妙な撃ち方が出来る人は元々1/100~1/1000しかおらず、AIもそれが出来る人のデータだけで判断すれば十分参考になる筈です。

そのベースとなるデータの何処にも私はフリンチングを克服した射手ですとは書いてありません。
実際はフリンチング射手が99%以上ですからコンピューターやAIとは、その詐欺ガイドのつもりで付き合う必要があります。

巷には自称ベテランが書いた本が多数出廻っていますが、先にも書きました様に実際は99%が反動を克服しておらず、著者はそれすらを自覚しておらず、分かった様な事が書いてあるだけで、本質 追及の参考にもなりません。

巷の先輩の教えを乞う場合も、勿論銃砲店に相談しても店主がそれを心得ている筈もなく、解決策になる筈がありません。

助言が役に立つのは、市販ノーマル銃でワンホール射撃を達成した人(殆どいない)、また300m以遠の遠射を実戦で成功させている人(稀にいる)だけに限られます。

ワンホール射撃は銃と弾の限界ですから、フリンチングを完全に克服していなければ出せません。
ケンさんから皆さんに伝える事は、フリンチングは大幅軽減する射撃方法の紹介です。

銃だけに撃たせる為、左手は銃を反動で落とさない程度しか「持たず」、右手は中指で銃のグリップを「握らず」、銃はフリンチングが伝わらない様に「肩に当てず」、引き金はそれにより銃が動かない様に必要最小限の力とストロークで「そっとですが一気に引く」、これで150~200mまでの実用性が得られます。

ケンさんは2002年にワンホール射撃を達成し、2006年までにライフル射撃全項目を達成出来ました。出来る人の本を読み、出来る人の指導を受けなければ、反動に対する生理的反応が主原因ですから、結果は反動の弊害から抜け出る事は出来ず、真のライフル射撃が出来る様にはなれません。

ケンさんも1983年始めたスラグ弾射撃では的紙にヒットしない事も稀にありました。またライフル銃の初心者教習には実技試験が一応ありますが、的紙に全く命中しない人がザラでした。

これがフリンチングの平均的現状でした。
そんな人達もイカサマ救済措置に救われ、本州猟では殆ど無意味なライフル銃を所持しました。

命中させる為の射撃場通いをすれば良かったのですが、それらは無く、概ね全員が300mに命中させられる魔法の銃の所持に憧れていただけでした。

ライフルの魔法は難しくて誰も使えませんでしたが、もう1つ低難度な魔法は散弾銃に依る「4号バックショット27粒弾のショットガン効果に依る3粒被弾撃墜」がありました。

しかし、そんな小粒弾でトンコロが可能とは誰も信じず普及せず、装弾も売っていませんでした。
ライフル銃はその後長らく平穏に継続所持が出来ましたが、2012~2015年には旧技能講習と言う制度が新設され、これは50mで1点圏が17㎝の的を撃ち、20発撃って40点以上が合格基準です。

ライフル銃は本来100m以遠の急所を狙う銃ですが、50mの実戦能力があれば旧技能講習は合格する内容でした。しかし受験者は日頃50m射撃練習を全くしておらず、70%以上が脱落しました。

余りの難度で受験しなかった人も多く、90%以上が振るい落とされました。
つまりライフル射撃が趣味の人と、エゾ鹿猟をするライフルハンター以外は、概ね全員と言える90%以上が50mの実戦能力を全く持っていない、これが巷の現状でした。

従って一般の先輩や銃砲店のアドバイスは全く的を得ていない可能性が高いのです。
通常の現状からすれば、ケンさんの成果を理解する事は難しく、「嘘もイイ加減にしなさい」と思う人も少なくないと思います。

本格的な領域に挑戦する第2段階では、「実射を長期間絶ち」長期間弾を入れない「ドライファイア」を繰り返し、「銃の発射には反動を伴わないと体を騙す」必要があります。

長期間とは1~2年、未完状態で成果を試す為に実射をすれば、即座フリンチングがブリ返し、最初からのやり直しになります。

また実射1発毎の毎回直前にドライ10~20回が必要です。
ケンさんは2年後の2002年射撃再開のその日にワンホールが達成されました。効果は絶対にありますが、強い決意が必要です。

市販銃と市販弾でサコーは90mで12.7㎜以下を保証、ミロクの出荷基準は50m10㎜以内です。
これはベストグルーピングではなく単に3発撃った結果です。

従って100mワンホールを出せる可能性はかなりあり、未熟な射手のフリンチングがそれを妨げているのです。

フリンチング対策には長期間の特訓を要しますが、克服出来れば、100mワンホールや、300m遠射は自動的に達成されます。

更に動的では引き止まりの無い「スイング射撃」により、最も障害となっていたリード合わせが自動化され、その結果、散弾銃では射程距離が2倍近く延長され、しかも命中率が劇的に向上しました。

更にこの技術はライフルのランニング射撃にもそのまま応用出来、50mを走る鹿には即座に応用可能でした。ケンさんのライフル銃に依るエゾ鹿第1号は50m先を走る中型エゾ鹿でした。

少しコツを掴めば200mを走る鹿を即倒させる事も充分可能になります。矢先注意で是非チャレンジして下さい。但し小手先の照準では幾ら工夫しても絶対に命中せず、きちんと手順を踏んで下さい。

フリンチングを克服すれば、散弾銃とライフル銃は驚く程類似と言えましたが、しかし引き止まり射撃の散弾銃動的射撃と、静止オンリーのライフル射撃は全くの別物です。

この時の散弾銃は「近距離&低速限定」であり、ライフル銃はかなり練習しても「完璧な静止状態の100m未満」で、十分な照準時間がある時しか機能せず、僅かでも動いていれば必ず失中しました。





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Posted by little-ken  at 15:20 │ハンティング銃と弾