2023年06月02日

ランニング射撃とスナップスイング射撃

  12ランニング射撃
走るエゾ鹿をバッタバッタ、これが目標でした。
虚像を追い越した時に引き金を引く、散弾銃のスイング射撃の考え方は、驚いた事にそのままライフル銃の200mまでのランニング射撃にも応用出来ました。

走るエゾ鹿の即倒には±7.5㎝の精度を要し、散弾パターンの50m時の±30㎝に比べ精度4倍、そして距離4倍、合計して16倍と大幅精度向上問題が絡みますが、一定リズムで虚像を追い越し、虚像を見直す事なく、引き金を引けば、簡単に200m以内の鹿の急所に確率70%でヒットしました。スイング中のライフル銃はジャイロ効果でかなり安定しているのです。

中速度(36㎞/h)の鹿でも見える虚像と見えない実体は100m先で4mも離れており、16倍の高精度の中で、見ないまま、スイングを継続したまま、引き金を引く事には、頭の切り替えが必要でした。

しかしこれさえマスターすれば、ランニング射撃は驚く程良く命中しました。
またライフル銃のスコープ専用銃でも、チークピース調整済であれば、スナップショットもショットガンと同様にスイング射撃が可能であり、得意側項目と言えました。

2007年の根室では、平均150m先を走るエゾ鹿のランニング射撃で5日間に50頭を捕獲、必要とした弾は70発、初弾の70%が急所直撃となり、5発5中の大記録も3度記録されました。

またサコーの300m遠射は当たり前の様に決まり、半依託遠射380m、150mテーブル撃ち3発の11㎜と言う記録もあり、フリンチング対策さえ完璧なら、市販ライフル銃&市販弾は、恐るべき高精度を発揮します。

しかしライフル銃は不可能を可能にする、魔法の銃ではなく、それを可能としたのは人間の能力でした。銃には300mの能力があっても、巷のエゾ鹿ハンターの能力は僅か100mに留まり、150mの能力はなく、エゾ鹿は余り撃たれない150mにいるのが、その証拠です。

本州ハンターでは、驚いた事に70%以上が静止50m能力すらなく、本州猟には不可欠な筈のスナップショットもランニング射撃能力も皆無、勿論旧技能講習を70%以上がクリア出来ず銃の更新は不可でした。本州ハンターに取ってライフル銃とは何だったのか、理解に苦しみます。

巷の散弾銃が「近距離&低速専用」だった様に、北海道でも巷のライフルは100m以内の「近距離&静止時専用」でした。サボットスラグ銃は精度的にライフル銃よりやや悪い程度で、100m実用性は十分にあると言えますが、弾速が遅くランニング射撃は多少不利、且つ100ⅿ超えは落差補正を要し、150mが限界です。

ケンさんのスクールでも多数の生徒がサベージボルト12番で、2頭/日のエゾ鹿捕獲をしましたが、100m静止専用で、150m遠射成功者は皆無でした。そして数年後経験10年を満了し、愛銃はライフル銃になりますが、その初年度に静止150m射撃を達成した生徒も皆無でした。

つまり150mに成功しなかったのは、サボット銃の能力不足が原因ではなく、単に射撃技術の未熟が原因でした。

新人ライフルマンも数年後には技術向上し、150mをクリア出来る様になりますが、その後も含め、ライフル銃で200m以遠の遠射即倒を成功させた生徒は皆無でした。300m以遠のヒット例では、全てマグレヒット、照準点から1m以上ずれたヒットであったり、倒れたのは隣の小さな鹿であったりしました。

銃自体には300mの遠射能力があっても、現実には150mの能力があれば数少ない上級者となり、300m達成者は例外的な1%未満です。尚サボット銃の150mは遠射ですが、ライフルの150mは近射に分類され、その近射能力すら持たないのが、平均的ライフルマンの現状です。

  13.予想外に好成績だった、ボルト銃の再肩付けスナップスイング連射。
サコーボルトアクション銃の連射は、一見して最も遅いと思われる、再肩付けのスナップスイング 射撃です。自動銃派のケンさんは、散弾銃の連射と同様に、自動銃が最高のパフォーマンスが出せると信じており、それ故にH&K SL7カービンを購入し、実戦90日と3000発から、ライフルのスイングショットの基礎を得る事が出来、動的対応が可能である事を証明出来ました。

H&Kは予想外に高精度な銃であり、150mのテーブル撃ち5発が12㎜にまとまりましたが、300m遠射は(落差補正に自信が持てず)未達成でした。当時はH&Kオートでランニング射撃を極めたと思い込み、次なるテーマの300m遠射を目指して、銃をサコーボルトに換えました。

サコーに換えた初年度末期に得られたのが、憧れだった150m先を走るエゾ鹿の5発5中(13項)であり、70発で走る50頭を捕獲と言う想定外の大記録、今度こそランニングを極められた様でした。サコーボルトの好記録は、ボルト操作とスナップショットの練習を1か月程しただけの、まだ不慣れと言える初年度の出来事でした。

サコーボルトの300m遠射は当然の様に命中、H&Kオート時、50mの動的射程は、短期に200mまで延長され、5発強で1頭だった捕獲率は、即座に2倍の2.7発に1頭に向上、更に2か月後には更に2倍の1.4発まで向上、気が付けばオート時よりも速い連射、ケンさんはオート派を辞めボルト派に転向しました。

ボルト銃は遠射だけではなく、最も不得意と思われた連射でも、オートより遥かに高性能だった事は全くの想定外でした。オートはスコープから反動で消えた目標の再補足に、思ったより遥かに長時間を要し、その間に焦りが生まれ、故に連射は遅く、射程は短く、低い命中率でした。

一方、ボルト再肩付け射撃は 肩に銃が着かないので、反動で目標を見失う事は無く、体の方は追尾を継続しており、再肩付け射撃は思ったよりも遥かに短時間で完了し、結果は速い連射が 可能であり、また焦りを生じないので、圧倒的な高命中率と長射程が得られました。
  


Posted by little-ken  at 08:45ランニング射撃銃と弾

2020年02月11日

正しいスナップショット。

銃は向けるだけではなく、狙わなければ命中させられません。
つまり照準を要する事になり、それにはそれなりの時間が必要と思われています。

これを少しでも短縮しようとするのがスナップショットであり、構えるや否や撃つと言う射撃技術です。
スナップショットの重要性に関しましては今までも事ある毎に書いて来ましたが、その手法を我がスクールの生徒や後輩達の動作で見ますと90%以上が間違っておりました。
構えるや否やと言う言葉が適切でなく、正しくは肩に銃が着く前に撃つ射撃術だったのです。

ケンさんも昔は肩に付けてからと思っていたのですから余り偉そうな事は言えませんが、間違った手法はまず銃を精密に肩に付け(これが間違いの1番目)、それから頭が前進して(これが間違いの2番目)ショットガンならリブ線、ライフルならスコープのクロスを通して照準を始めると言った手法でした。
肩付けを最重要視しており、それには慣れが必要、従って相当量の訓練が必要としています。

  1.正しいスナップショットの手法。
発砲の決断と共に全身は最終射撃フォームに1行程で移ります。
勿論頭はショットガンならリブ線、ライフルならスコープクロスを通して目標を照準出来る位置に、頭が銃より先に移動し、そこで待機しているのです。これが1番重要なポイントです。

そしてライフルでもショットガンでも全く共通ですが、腕を伸ばして銃身で正しく目標を指向します。
これが2番目の重要ポイントです。そして銃はホッペをかすめる様にして真っ直ぐ肩に引き寄せます。
すると頭はすでに先にその位置にありますから、チークピースが正しく調整されていれば、銃が肩に着く前から照準が開始でき、銃の方向が合っていれば肩に着く前に撃っても十分命中します。
この時に最も重要な事は肩付けの精度ではなくチークピースの調整です。

銃に対する慣れや練習量の問題ではなく、チークピースが正しく調整されていれば、銃の指向の練習は多少必要ですが、肩付けの練習は不要とすら言えます。チークピースの必要精度はmm単位です。チークピースさえ完璧であれば銃を目標に指向する事は自然であり、ホッペをかすめて銃を肩に引き寄せる事を含めて極めて自然に行われ、特別な訓練と言う程の物は何もありません。
これで引き止まり対策さえ完璧であれば、射撃技術としては完璧と言えます。

この様に全ての銃に対し、最も重要なのはチークピースの調整です。
高級散弾銃の世界では重要視されていましたが、特にライフル銃では全く軽視されていました。
スコープ専用銃にStdサイズのスコープを取付ければ、概ねチークピースの調整は済んでいます。

銃の実用化が始まって以来500年以上が過ぎ、各種発火方式、元込め式、金属薬莢式、連発式、無煙火薬、等々の数々の画期的な発明により、1900年代の前半には現在使われている全ての銃が完成しました。
1990年前後から始まったスコープ専用ライフル銃と言う考え方は、銃の歴史の中でも最大の発明だとケンさんは思っています。

  2.オープンサイト付のライフル銃。

こちらは1998~2006年まで愛用したライフル銃のH&Kオートの308です。
ヨーロッパではスコープ専用銃と言う考えは普及しておらず、銃のスコープマウントは純正の着脱式ですが、ストックのセッティングはオープンサイト用のまま、これではスコープに正しく目の位置を合わせられません。
そこで取り付けたのがストックの上の黒い自作部品、これが新設されたチークピースです。
このお陰で肩に銃が着く前に撃つ完全なスナップショットとスナップスイングショットが可能となりました。

  3.スコープ専用ライフル銃。

こちらの写真は2006~2018年まで愛用したサコー75バーミンター改の308の手動5連発です。
チークピースは無調整ですが、スコープ専用の本銃はチークピースの位置が完全にスコープに合わせ済みでした。本銃はH&Kで可能となったランニング射撃の初期が更に大幅に磨かれ、総合4倍の大幅パフォーマンスアップを、しかもオートより速い連射を達成すると言った快挙となりました。
また150m先を走る鹿の5発5中を3度記録出来ました。

  4.ショットガン。

こちらの写真は2017年のNZのパラダイスダックで使った現地レンタル銃です。
レミントン11-87の28インチ銃身のStd銃ですが、ストックにガムテープ重ね張りし約2mmでホッペの当たりを調整しています。その結果、2日目は85発から47羽、1.8発で1羽と言う我ながら信じ難い超高撃墜率が出せました。因みにケンさんのカモ撃ちプロ時代でも1羽捕獲には3~5発を要し、巷では25発撃って1羽捕獲なら上出来と言われておりました。チークピースの効果はこれ程までに凄いのです。

またケンさんは1993年からスコープ専用ライフル銃ルガー77のボルトの308を運用開始しました。
元々ショットガンのスナップショットをすでにマスター、スコープ付ライフル銃でもすぐにスナップショットは使える様になり、最初の捕獲は森の中の50m先を走るエゾ鹿の中型オスに対するスナップスイングでした。

  5.スナップショットは安全。
ある時スナップショットを実戦で披露した所、リーダーの目には安全確認無視の危険な乱射に見えたらしく、ちゃんと当たったから良かった物の、その様な危険な撃ち方は2度とするなと酷く叱られました。ケンさんは反論せずに黙って聞き流しましたが、勿論方向や矢先等々の安全が十分に確保され、決意実行したスナップショットである事は言うまでもありません。
そしてヒットも決してマグレではなく、ちゃんと狙ったのですから当然の結果として命中したのです。

その後、速射5連射から2頭捕獲を複数回成功させるとやっとリーダーから認められましたが、自称走る鹿の連射名人であったリーダーには自分より速い速射や連射で走る鹿にも命中させられる射手がいる事が信じられなかった様です。そのリーダーのランニング射撃は何と肩付けのままボルト操作、最大射程100mの固定待ち射法でした。それでも撃てば殆どがヒット、しかし回収率はケンさんのスイングショットに比べて大きく劣る30~40%程度でした。リーダーはその後まもなく営林署の仕事で倒木に挟まれ事故死しました。

スナップショットは銃を構える直前に方向が安全である事だけを確認しますが、実は常時から今ならここまでは発砲可能、ここからは撃たないを確認して決めておき、いざ発砲の時はその安全範囲にある事と、直接の獲物の奥だけを再確認し発砲します。従ってスナップショットの方が安全度は1桁以上安全度が高くなります。通常射撃では速めに構えて照準しますので視野狭窄症に陥り、特に鹿が移動していると照準追尾している内に危険範囲に入った事に気が付かず、獲物を目にすれば発砲したくなり危険発砲をしてしまいます。


  


Posted by little-ken  at 16:38ランニング射撃銃と弾

2019年10月05日

憧れの連発銃。

   ウインチェスターM100 と シャープCO₂-5

                       ウインチェスターM100

前作ウインチェスターM88は1955年レバーアクション銃でデビュー、デビューしたばかりの308を使用するスコープ対応の意欲作でしたが、同じ1955年デビューしたレミントン740の30-06オートには敵わずでした。しかし1960年にオートになってM100としてデビューするや否やライバルレミントンを蹴散らし、ウインM100がベストセラーとなりました。外観上の相違は装填レバーがオート型のボルトハンドルに変わった程度です。

基本的にオート派のケンさんは、何時の日にか、このカッコ良いウイン100を所持しよう心にと決めました。このカッコ良さを受け継いだ空気銃がありました。シャープ-CO₂-5と言う5連発の炭酸ガスを使う空気銃でした。18歳なるのを待ってこのシャープ-CO₂-5を購入しようとしたのですが、銃砲店のアドバイスで5連発も実際は1発で全ての獲物が逃げるので役に立たず、炭酸ガス銃は元々弾速が速くない事に加え、冬場は炭酸ガスの活性が低下して、更に弾速が下がりガッカリするから辞めなさい、と言う事で見送りました。

代わって購入したのは単発アンダーレバーポンプ式の絶版久しい兵林館ASと言う空気銃でした。
1発毎にアンダーレバーを3回圧縮する単発銃でした。精度もパワーも現在にもそのまま通用するレベルで、30m先の雀の頭を外さない精度と70m先のキジバトを貫通するパワーを持ち合わせていました。しかし散弾自動銃の5連射3羽撃墜を見せ付けられ、心はもう連発のショットガンに移り、連射こそ狩猟最大の醍醐味と思う様になり、この時からケンさんは完璧にオート派になっていました。

そして早々に中古のSKB1900オートを入手し、ケンさんも5連発を存分に謳歌したと言いたいのですが、 実実用化に数年を要しその間に5連初時代は終わり、謳歌出来たのは4連発時代、更に数年後には3連発になってしまいました。しかし高速3連射等々の新射法の開発に成功し、また撃墜率のベストは7.5号装弾の小粒弾にある事を発見し、毎朝定数の8羽を捕獲し夕方に売却、カモ撃ちのアルバイトで本業以上の高収入を得ておりました。

オートによる連射で鹿の群れの中から3段角大物をバッタバッタと倒す、或いは逃げるビッグトロフィー大物を連射でカバーする、これはハンターたる者の永遠の夢であります。勿論ケンさんも同じでした。
しかし散弾のバラ撒きショットガン効果を期待する連射は容易でしたが、ショットガン効果が全く期待出来 ないスラグ弾の連射で急所を撃ち抜くとなりますと、それは絶望的な高嶺に咲く花の様に見えました。しかしその手法は必ずある筈だと思い、何時の日にか、そこまで辿り着きたいと思いました。

   レミントン1100ディアーガン

       上:レミントン742ライフル銃  下:レミントン1100ディイアーガン20番

将来はライフル銃で走る鹿をバッタバッタが夢なのですから、ライフル銃レミントン742と類似のレミントン1100ディアーガン(写真下)のスラグ専用銃を最初の銃として選びました。そして走る鹿を想定したトレーニングを 繰り返したのですが、いざいざ初戦の現場ではバッタバッタ処か、見事な全弾失中に終わりました。

失中の原因はその時は分かりませんでしたが、後刻照準器の欠陥である事が分かりました。オープンサイトは古くから使われている照準器ですが、照門と照星と獲物の3つを同時に見通さなければなりません。指向性を追求したリブ銃身に比べ、指向性が殆どゼロですから、照門を通して照星を見損なうと、どちらにどれだけズレているのか、全く分からなくなってしまう欠陥がありました。ライフル銃であるレミントン742も使いましたが、同じ照準器の欠陥に加えて、精度も回転性能も思った程良くなく、本銃は失格となりました。

憧れだったウインチェスター100に代替えも検討したのですが、撃針が折れると暴発をすると言うリコールがあった事、やはり設計年代が古く、使用弾は同じ308でも100m程度の実用性しかない事が分かり、同様に15連発のM1カービンもカッコ良いと思いましたが、30カービン弾は100m以遠の精度不足とパワー不足でエゾ鹿猟には使えない事が分かり、見送られました。この頃からエゾ鹿猟も視野に入っていたのです。

   ルガー77スコープボルトアクション専用銃

                     ルガー77スコープ専用銃308

結局次に使ったのは精度と回転性能がもう少しまともである事を願ってボルトアクション銃を購入しました。仕様は今までの経験から撃つ機会も少ないだろうと見て軽量型を選択しましたが、これは大失敗でした。成功したのはデビューしたばかりのスコープ専用銃を選択した事、そしてプラ銃床のステンレスモデルを選択した事でした。そして最初のエゾ鹿は踏み出しで50m先の森の中を走る中型エゾ鹿でした。特に走る鹿を撃つつもりも無かったのですが、結果的には意図も簡単に命中しました。

当時のスコープは100m以遠にはそれなりの価値があるが、近距離の動的は絶対に適さないと思われていました。先のオープンサイトの欠陥を考えますと、スコープ専用銃としてストックの調整が合っていれば、近距離の動的を捉える事は少なくともオープンサイトに比べれば遥かに簡単で圧倒的に優れていました。従来スコープが動的を捉えられなかったのは、スコープを後付けし、ストックがそのままであった為、眼の位置が定まらず、動的を捉えられなかったのが原因だったのです。
残念ながら意外と多くのハンターが未だこれを理解出来ていない様です。

   オートの夢が捨てられず、再びオートにチャレンジ
さて前項までの事実から、オープンサイトのライフル銃は使い物にならないが、スコープ専用のライフル銃は静的にも動的にも十分に使える事が分かりました。
実はルガー77は軽量モデルを選んだ事もあって余り命中精度に優れず、そこでデビューしたばかりの並のボルト銃以上の命中精度を謳うH&Kオートを購入し、遠射とランニング射撃に挑戦する事にしました。尚、本州鹿用対策としましては、12番21インチのリブ銃付短銃身のバックショット専用銃で対処しました。

                       H&K SL7 オート308                    

1998年、初の実射をしますと謳い文句に偽りはなく、数年後には150m5発のテーブル撃ちが12mmに纏まりました。H&Kは5発のグルーピングはよく纏まっても、その繰り返しは今一つ安定しない欠点がありました。不安定と言っても最大で±5cm程度、300m遠射でもボデーには十分にヒット出来る筈でした。

しかし射撃時の心の不安が反映され、300mの遠射は只の1度も成功した事が無い処かボデーにヒットした事もありませんでした。命中率が劣らないのであれば、銃はオートが絶対に有利、本銃選択は大正解に見えましたが、実はこの次項のサコー75によって、全くそうではない事が完璧に証明されてしまいました。

そう言う欠点はありましたが、3年間に90日の出撃から3000発を走る鹿に向けて撃ち、ランニング射撃のスイングショットを完成させる事が出来ました。その性能は次の通りでした。最大射程距離は100m弱程度、平均5発強で1頭捕獲と言う程度で、本銃では約350頭を捕獲、内150頭以上が走る鹿でした。ランニング射撃は完成したかに見えましたが、実はまだまだ未完成、これも次項サコーによって完璧に証明されました。

   サコー75改ボルトアクション銃

                      サコー75 バーミンター改 308

まだ未達成の300mの遠射を成功させるにはやはりボルト銃しかないのかと思い、精度の良さそうなサコー75バーミンターを2006年に購入しました。H&K時代には高精度のラプア150円/発を使っていましたが、超ユーロ高で250円/発となった為、アメリカ製のウインチェスター安売り弾の120円/発に変更、その為にサコーのベストグルーピングは150mの5発が19mmに留まりました。

しかしその安売り弾の弾頭をバーンズトリプルXにすげ替えた弾は、苦も無く初回から連続で300m遠射に成功、また全依託射撃では540mでも2連続即死、以後300mはサコーのお陰で外し様の無いイージーな射撃と思える様になりました。

一方でボルトにすればH&Kオートに比べ、ランニング射撃性能は半減以下になる事を覚悟しましたが、いざ撃ってみますと驚いた事に、初端からH&Kオートよりも遥かに良く命中しました。
データを取って見ますとH&Kの射程が100m以下であったのに対して、150mが楽勝になったばかりか、200mでも十分に全く問題なく、射程距離が驚きの2倍に伸びました。距離が2倍になったにも拘らず、命中率は2.7発/頭とこれも約2倍になりましたから本当に驚きました。

銃を交換直後に300m遠射とランニング射撃の総合効率4倍の大記録を早々と立ててしまったのですから、サコーボルト選択は大正解と言えます。そしてランニング射撃はその後も進化し、同じ狩猟年度の2007年1月、朝夕各々5頭ずつを5日連続捕獲 計50頭の大記録となりました。その間に5発5中を3度記録、3度再現出来ればもうマグレではありません。以後は回収が大変なまとめ捕獲は控え、最大でも2頭までに留めました。

更に驚きはこれに留まらず、連射速度に於いてもH&Kオートよりも少し速い連射速度である事を発見しました。ケンさんの射撃方法は発射後に肩から銃を降ろし、再装填しながらのスナップスイング射撃です。オートは発射するとスコープから目標が消えてしまい、再捜索の後にランニング射撃の再開となり、ここに時間ロスと心の焦りが生じますが、再肩付け射撃では射手の体は追尾を継続しており、スナップスイング射撃でいきなり再開出来るので、連射速度も速く、且つ見失っていない事で命中率も高かったのです。

       左:ウインチェスター1873             右:サベージ1899

連発銃の歴史は概ね西部開拓史の時代にウインチェスター1873によって始まりました。しかしウイン1873は連発数が多くても、コルトピースメーカー用の拳銃弾では用途が自衛用や近距離の鹿程度に限られました。

本格的連射ハンティングライフルはレバーアクションのサベージ1895、全く新しい無煙火薬の新弾薬303サベージで デビュー、30-30のウイン1894とベストセラー争いを続けましたが、サベージ改良型1899は308級の新弾薬300サベージの追加やスコープ運用が可能となりやがてベストセラー、対するウインはスコープ対応が大幅に遅れました。ここにスコープは登場しましたが、専用銃のアイデアはまだもう少し後の事になります。

西暦1500年頃に銃が実用化されて以来、世界中の多くのハンターが ずっとずっと夢にまで憧れた 連射 ですが、連射を得意とする最新型オートが何時の日にか当然の様に達成すると思われていました。しかし達成は連射が最も不得意に見えた旧型のボルトアクション銃の再肩付け射撃によってなされました。

最も貢献したのは1990年頃からのスコープ専用銃のアイデアであり、専用銃が故に可能になったスナップスイング射撃だったのです。同時に分かった事として、期待の星だったオートライフルはスコープ専用化してもそれ程は役に立たず、オープンサイトのオートライフルはその存在意味さえが全くないと言う事でした。

尚、スコープの倍率は結局6倍ニ落ち着、出会い頭15mのヒグマに対しスナップショット1発、またヒグマ5頭は森の中の50m以内を走っていましたが、しかし6倍のサコーボルトは当然の様に命中しました。森の中のド至近距離から300m超の遠射まで、また200m級のランニング射撃5発5中の成功はスコープ専用化したボルトアクションライフル銃と自らが開発したスナップスイングショットのお蔭と言えます。オート派のケンさんがこれを証明してしまったのも何かの腐れ縁と言えます。

ケンさんは2006年度中にライフルハンターの憧れる項目の概ねを達成出来ました。内容は半委託150m5発が19mmのワンホール、肩に銃が着く前に撃てるスナップショット、鹿が逃げる前に撃てる150mアバウト早撃ち、直撃300m遠射法の発見、5発5中のランニングショット、5日間でエゾ鹿50頭の捕獲、超大物エゾ鹿の迫力負けの克服、猛獣ヒグマに対する恐怖負けを克服、等々があります。

サコー中盤以後は悪評のロシア製弾に初期型バーンズ弾頭と言う超悪評コンビ弾、それでも実戦での不満は皆無、射撃は銃や弾の精度よりも、射手の心が1番影響し、心の不安が最大の失中要因である事が改めてよく分りました。

おかげ様で2016年には庶民の手の届く大物猟の全てを達成、2018年にはライフル銃を無事に卒業出来ました。この過程をまとめた物が狩猟大全集です。そのPDF版を読めば、連発銃が始まった150年前から世界中のハンターが憧れた連射が、読者なら手が届く位置になりました。
ランニング射撃の理論は難解ですが、やるべき事は非常に簡単、スイングで追い越す時に引き金を引くだけなのです。イメージトレーニング1万回で正しく再現出来れば必ず誰でも命中します。

まずは出来る様になられては如何でしょう。
手法はスコープ専用化したボルト銃の再肩付けスナップスイング射撃です。


  


2019年01月03日

究極の射撃技術&狩猟技術。

先回のレポートで究極の銃には辿り着く事が出来ました。
筆者は命中率さえ優れていれば、永らく究極の銃はオートではないかと考えておりましたが、それは間違いでした。

そして狩猟形態が変われば、その究極とする所は少し変わるかも知れない、筆者も当初はその究極の銃はそれぞれの用途毎にあると思っておりました。
少なくともヒグマ用には専用マグナム銃が必要と考えておりました。

しかしそれは間違っており、308は先回レポートのサコー75改の達成レポートの様に、予想以上に万能で高性能であり、且つボルトアクション銃は予想以上の万能銃でした。
ならば1つの銃を全ての用途に使いこなした方が遥かに高効率が出せる事が分かりました。

ではその銃さえあれば、誰でも高パフォーマンスを発揮出来るのかと言えば、残念ながらそうではありません。これから紹介する射撃技術と狩猟技術がなければ、銃は只の飾りにしか過ぎません。
その射撃と狩猟の技術は容易に得られない物もありますが、地道に積み上げていけば、必ず到達する物と筆者は信じております。

究極の銃は308のボルトアクションのスコープ専用銃だと申し上げましたが、本州巻狩りの様に射程距離を50m未満に限定すれば、リブ銃身のフルチョークのセミオート散弾銃から発射する小粒バックショットに全く敵いません。また射撃距離を更に短縮限定すれば、ベストチョークも変わって来ます。
ここでは50mを超える射撃が多いと言う前提でお話を続けます。

究極の射撃法 : その1 : ランニング射撃
連射ロマンとは言葉を変えますとランニング射撃技術の事を指します。
ライフル弾は速いので、リード射撃なら一口に言って100mに対して1m前を狙い続けて撃てば、胴体位なら簡単に命中させられます。それはショットガンと同じ撃ち方に近いと言えますが、10%以下しか出来ないと言われる正しいショットガン射撃が不可欠となります。

ライフル弾は急所に命中させなければ意味がありませんが、それには正しいリードが必要となり、それには距離と獲物の速度と相対角度のデータが必要となりますが、それらを瞬時に正しく計測する事は不可能です。正しいリードで撃たなければ急所に命中しない、これがリード射撃の欠点ですが、そこで筆者が考えたのがスイング射撃です。


獲物を追尾し、その後スイングを加速し、追い越した所で撃つと言う単純で簡単な一律的射撃方法です。詳しい説明は省きますが、距離や速度に概ね無関係に予想外に上手く行く射撃です。
唯この射法は肉眼で見えている映像が古い虚像である事を理解する頭の切り替えが必要で、最後の引き金を引く時に見ないままで撃つ事が絶対前提条件となります。数ある射撃にはそれぞれの究極がありますが、筆者が得る事が出来た「スイング射撃」もこの究極射撃術の1つだと思います。

究極の射撃法 : その 2 : 遠射
「遠射」とは遠くの目標に命中させる技術です。ライフル銃その物は308の150grの弾頭の場合は、300m先になりますと空気の抵抗で弾速は65%程度まで減速し、銃口延長線からは約90cmの落下をします。
しかし実際は弾を少し上向きに弾を発射する為に300m先では35cm程の落下に留まります。急所の大きさは直径15cmですから、150mで7.5cmなら当たる事になり、それを超える精度を出せる腕があれば、そして落差を合わせれば300mの遠射は難しくない事になります。

銃自体は150mで2.5cm程度に命中する能力を持っており、ならば余裕率3倍で楽勝300mは当てられる事になりますが、実際は遥かに至難の技となります。精度が出せない最大の原因はフリンチングと言いますが、人間の体が反動を嫌い無意識に発射直前に強張り、その為に照準がずれてしまう事にあります。
反動は原理的に無くなりませんから、銃口から弾が出るまでの僅かな時間に、銃が微動もしない様な訓練を繰り返す事が必要になりますが、これは殆んどが家で行うトレーニングですから誰でも出来る様になります。


筆者の場合、反動を克服するのに12年程掛かり、やっと150mでワンホールと言える12mmが出せました。ならばもうそれ以後の300mの15cmは6倍の余裕率で楽勝の筈ですが、その頃はまだマグレ以外に300mを命中させる事は出来ませんでした。
その原因は心に距離に対する不安や落差補正に対する不安があったからでした。この不安を払拭するには更に4年程掛かりました。これは実戦のみしか磨けない技術です。

単位を年で表しましたが、筆者はこの頃には年間30日前後の出猟でした。通常の本州からのハンターですとシーズンに3日程度しか実戦経験を積めませんから、達成は特別な練習方法を開発しない限り、絶望的な 難度となります。
出来る様になってから申せば、銃は人間がなるべく関与しない様に銃だけに撃たせる様にし、雑念なしに射撃する様にすれば当たります。言葉を換えれば命中して当然と言う射撃をすれば当たります。これが究極の射撃術の1つである「遠射」と言う技術です。

究極の射撃法 : その3 : 早撃ち50mのスナップショット
ライフル銃の精度は良いのですが、精密な照準を要し、通常的な 手法で行きますと多少慣れた人でも発射まで10秒以上を要します。保護区の野性動物でも50mで10秒以上の時間がもらえる確率はゼロに近いと思われます。

これを西部劇の早撃ちの様に構えるや否やで撃つ技術をスナップショットと言います。左写真がその始めと終りの写真2枚を重ねた物ですが、ボルトオープンでセーフティーONの銃を、ボルトを装填しながら指で試行する様に銃身を目標に向けて突き出し、この時の精度が概ね照準精度になり、距離が非常に近ければそのまま撃っても命中します。


そしてセーフティーを解除しながら肩にまっすぐ引き寄せて撃つ技術ですが、2枚の写真を重ねますと頭や体の位置が殆んど変わっておりません。つまり発砲を決意した瞬間に体は最終形状に移行し、そこに銃が嵌まり込む様な形になります。更に言えば心にそのつもりがあれば、肩に銃が着く前にもうスコープを通して不完全ながら急所付近の映像が飛び込んで来ますので、肩に着く前から撃っても必ず命中します。
これが究極の射撃術の1つである「スナップショット」です。

この技術は単に早撃ちの為だけの技術ではなく、銃は早く構えられるに越した事はありませんから、全ての射撃の基本技術となります。そして他の技術と違って家で特訓すれば数カ月で必ずモノに出来る技術です。
装填しながら安全装置を解除しながら行っても総時間は変わらず、安全度は100%増しながら、通常の照準時間の1/10以下で収まるスーパー射撃術です。ぜひ自分のモノにして下さい。

究極の射撃法 : その4 : 150mアバウト照準早撃ち
昨今のエゾ鹿は1年中駆除の圧力を受けており、150m前後に多くおりますが、銃を向けると数秒で動く鹿が多くなりました。撃たれる事が分かっているのに、なぜライフル銃の射程距離内の150mに居るのか?
それは150m射撃が通常の射撃技術ではかなり難しい側に入り、そこにいるだけでもそれ程は当たらないのですが、更に銃を向けられたら数秒で動けば照準が定まらず撃たれない、或いは撃たれても絶対に当たらない事を学習した為です。つまり通常射撃術ではこれを撃ち獲る事は困難な時代になったと言えます。

しかしこれを撃ち獲る射撃術はあるのです。それにはその2で紹介したワンホールの技術と、その3で紹介したスナップショットの技術が必要です。150mでワンホールを出す為には銃だけに撃たせる技術が必要であり、精密照準も必要で時間もそれなりに必要です。しかし150mで20mm程度の射撃術があれば急所は150mmと桁違いに大きく、アバウト照準で早撃ちしても十分に命中させられます。

つまりスナップショットで瞬時に銃を構え、アバウト照準で早撃ちすれば銃を向けてから数秒で撃て、鹿が動き出す前に撃ち獲る事が可能になります。通常は難しいと言われる領域の150m射撃も、スナップアバウト照準をすれば150m射撃は近射のイージーショット側に分類変更出来る様になるのです。これが究極射撃術の1つ「150mアバウト照準早撃ち」です。

究極の狩猟 : 「迫力負け」と「恐怖負け」そして「出会い術
近射50m前後なら「スナップショット」、中距離150m前後なら「アバウト照準早撃ち」、そして走っていれば「ランニング射撃」、遠ければ「遠射」、この4種の究極の射撃術を持ち、究極の静バランスと動バランスの両方を満足するボルトアクション銃を持てば、無敵の狩猟が出来る様に思えますが、まだそれだけでは無敵の狩猟は出来ません。

それは本州では起り難いのですが、エゾ鹿猟では獲物が大物となりますと、射手より大きい事から対戦する前にその大きさに「迫力負け」してしまい、足が地に着かない射撃になってしまいます。
迫力負けは初期には3段角であるだけで起こりますが、数が多い中型までは実戦で回数をこなせば自動的に乗り越えられますが、稀にしか会えない超大物クラスには特殊なイメージトレーニングが必要になります。
これを乗り越えない限り、ハンターの悲願であるエゾ鹿の大物は永久に捕獲出来ないのです。

同様に相手がヒグマの様な猛獣となりますと対戦する前から「恐怖負け」てしまい」、体が動かなくなったり、或いは足が地に着かないを遙かに超えた気狂いに刃物的なハチャメチャ射撃となってしまいます。これも出会い数が少な過ぎて実戦で腕を磨く事は出来ませんから、特殊なイメージトレーニングが必要になります。筆者はおかげ様で450kgのヒグマを始めとし、6戦6勝を記録させてもらえました。

この様にエゾ鹿大物には「迫力負け」の克服が必要であり、ヒグマには「迫力負け」と「恐怖負け」の克服が 必要ですが、それ以外にも、鹿の様に立ち止まりませんから、「スナップショット」と「ランニングショット」の技術が不可欠になります。また国内の狩猟制度にはありませんが、狩猟制度が全く違う海外の大物猟を行う場合には、失中や未回収には別途高額料金が必要で、射撃には「ペナルティー恐怖」対策が必要になります。
その1例として下記のクドウの場合の1発には約2000㌦が伸し掛かって来ますから大変です。

筆者が実際に行なったナミビアの人気NO.1のクドウ猟の場合のお話をします。
エゾ鹿猟より遥かに難度が高いだけではなく、ミスショットが2000㌦になると言う厳しい猟になります。クドウのデビューは5歳、それまではガイドが撃たせませんが、そうは言っても群に適齢なクドウがいれば撃たれる為、デビューはいきなり200mクラスの甘くない勝負になります。
殆んどはこの時に捕獲されてしまいますが、生き残ったクドウは300m以遠に生息する様になり、以後は容易に撃たせてもらえなくなります。

300mは難度が高い為、撃つハンターは少なく、その間にクドウは成長し大物になります。
ミス射撃は獲物に傷が付かなかった完全失中時は無料ですが、少しでも傷が付けば生存率が低くなりますので、クドウ動物代の2000㌦が未回収料金として請求されます。大物になりますと2000㌦のペナルティー覚悟の300m射撃にチャレンジするハンターもおり、ここでも半数以上が捕獲されてしまいます。

これにも運良く生き残る個体は非常に少なくなりますが、次は400mクラスに生息する様になります。
400mとなりますと最早ライフル銃の限界をやや超えており、挑戦する人は益々稀になり、クドウはその間にも更に成長し、やがてはレコードクラスになります。
筆者はこのレコードクラスに挑戦、2000㌦の圧力下で380mを遠射、この捕獲に成功しました。

さて何だかんだと銃の構造や射撃技術、そして心の問題を論じて来ましたが、それら以前に重要な事は 如何にして獲物と出会うかです。獲物に出会えなければ全てが始まりません。
エゾ鹿は基本的に1年中の駆除圧から、ハンターに出会わない様な行動を取り、そんな状況下でエゾ鹿に出会うにはエゾ鹿の本来の習性にプラス、エゾ鹿がハンターを避ける方法にも精通しなければなりません。

それには過去の膨大な出会いのデータを分析し、そしてこの1週間程の天候の推移から、筆者は本日なら何処に何時に行けば鹿に出会えるのか分かる様になりましたが、これに「ポイント猟」と名を付けました。
10月25日から11月20日までの1カ月弱、高い山が冠雪し鹿が降雪の都度に山から降りて来るのですが、その時期が繁殖期と重なりエゾ鹿は特異な行動をします。

筆者はそれを分析し1日平均出会い数が5回/日、出会い内容は成獣オス率が70%と、奇跡の出会い数や出会い内容が可能になりました。この 「ポイント猟」 こそが、最も究極の狩猟技術となります。

      超大物の捕獲はハンターの悲願です。
      2009年の1月には概ね毎日1頭の超大物が捕獲出来ました。


  


Posted by little-ken  at 09:03ハンティングランニング射撃銃と弾

2018年07月11日

連射ロマン(ライフルは単発がベスト)

  1.マスケット銃 時代は単弾と散弾は同じ銃から発射。
1700年代の後半までの銃はノーライフルで、マスケット銃と呼ばれていました。
銃は先込めの火縄点火式から始まり、やがて燧石式となり、これは非常に長い間使われました。
主力の口径は18~15mm、つまり散弾の口径で言えば12番~20番でした。
単弾は丸弾の1粒、ほぼ同重量の小粒散弾を運用する時もありましたが、銃は同じ物が使われました。
マスケット銃の時代から銃を2本並べる連発のアイデアはありましたが、重過ぎてダメでした。

  2.ライフル銃 と散弾銃が分かれました。
やがて1800年代の中場になりますとライフリングが普及し、単弾はドングリ型で口径が12mm程度となり、散弾との共用が出来なくなり、専用の散弾銃が出現しました。
散弾専用であれば銃身をかなり薄く作れ、水平2連銃にも出来ましたが、弾は先込め式のままでした。
銃は発火方式が燧石式の長い時代を経由してパーカッション式となり、ほぼ全天候式となりましたが、連発は  まだもう少し先の事になりました。

  3.ウィンチェスター 1873.
ハンターの憧れは確実な発火と全天候性と連発でした。
1864年、金属薬莢式が発明され、最初のヒット作品はウインチェスター1873とコルト1873でした。
前者は44口径、後者は45口径でしたが、コルトがウインチェスターレバーアクションと同じ弾薬を使う44口径  モデルを出し、これがピースメーカーとなり、このペアが西部を征服した銃と言われる様になりましたが、この黒色火薬の金属薬莢式は僅か20数年後無煙火薬の時代となり、甚だ短命でした。
黒色火薬のピストル弾を使うウインチェスター73の威力は現在の308の30%弱でした。

  4.ロングリコイル式。
1906年、レミントンがモデル8をデビューさせました。それはロングリコイル式のセミオートライフルでした。
このモデルは308の70%程度のパワーがある無煙火薬弾であり、何とか使える銃でしたが、まだ機械の精度が悪く100mが遠射の時代でした。時々起こる回転不良も悩みの種でした。
同じ特許の散弾銃版はレミントン製よりもブローニング製が世界中にヒットし、ベストセラーとなり我が国でも自動銃の事を「ブロ」と呼ぶ程に知れ渡り、よく普及しました。

長い間の憧れであった自動装填式は、散弾銃では非常に大きな効果を発揮しました。
散弾銃の連射は精度の甘さをパターンでカバー出来、連射の意味は大いにあり、捕獲率捕獲数の向上となりました。
しかし、ライフル銃の場合は急所に命中させなくてはならず、指向性の無いオープンサイトで精密照準のやり直しは100m先を走って逃げる獲物に対して難し過ぎ、実用性の薄い物である事が分かりました。
それでも連射に対する憧れは無くならず、スライドアクションやレバーアクションの手動式連発銃多数がデビューしました。

  5.レバーアクション銃。

1900年前後に無煙火薬化され従来のパワーが2倍以上の現在とあまり変わらない時代が始まり、間もなく自動銃も多種がデビューしましたが、満足の行く自動銃は少なく、1970年頃までは初弾命中精度の比較的高い写真のウインチェスターM88やサベージ1899レバーアクションのハンティングライフルモデル多種が使われました。
目的は自動銃と同様の肩に付けたままの連射にありました。

これで憧れのハイパワー銃に待望の連射機能が付いた訳で、ハンターは400年来の夢が叶った筈ですが、待望の新式連発銃も思った程の働きはしてもらえませんでした。
オープンサイトの時代には100mを超えると落差補正が必要であり、銃身精度上からも実用距離は100m前後でした。照準器側から見ても指向性の無いオープンサイトは、使いこなしても50mの走る鹿が限界でした。

50m先を逃げる鹿の胴体に命中させる程度であれば、ベテランであればある程度期待出来ますが、連発容量の5発ではショットガン効果が期待出来る3発の命中には届かず、倒し切れない状況でした。
スコープも後付けではチークピースの高さが合わず、走る鹿の連射には非常に合わせ辛い物だったのです。50mの走る鹿でしたらフルチョークのショットガンでバックショットを撃つ方が遥かに高確率です。

  6.スコープ専用銃 のデビュー。
そんな時代に終止符を打つ決定版と言えるボルトアクションのスコープ専用銃がデビューしました。
それが1936年のウインチェスター70でした。どの銃より高い命中率と高い回転率を誇り、ハンティングライフルの決定打と言える物で、ベトナム戦争で狙撃銃として大活躍しました。

スコープと銃身の取付高さの違いから、照準線を下向きに設定出来、狩猟用途でしたら150mゼロに設定すれば、200mまで落差補正せずに直撃で急所を狙えると言う素晴らしい物でした。
150mゼロの場合、40mで交差し、その後は3cm程上を飛行し、150mでゼロ、200mで5cm落ちました。

その後ウインチェスター70はマイナーチェンジ失敗でソッポを向かれ、レミントン700の時代となりました。
レミントン700のバーミンターは100mのワンホールが可能な銃であり、その後世界中の狙撃部隊にも採用されました。日本自衛隊も警察も同モデルを少数装備しています。

  7.スコープ専用銃 のその後。
スコープ専用銃のストックはスコープに合わせてありますから、これでスナップショットも可能になり、ランニングショットも落差無視の直撃距離の200mは難しくない物となり、急所狙いのランニングショットが可能になりました。

自動銃の最も得意とする連射でさえも、ボルト銃はスナップスイング射撃で撃てばそれより速い連射が可能となり、5発5中もそれ程の難易度ではないと言える様にもなりました。もちろん300mの遠射も楽勝でした。

これこそが究極のライフル銃であったのですが、当時はまだ誰もそこまで分かっていませんでした。

筆者が2006年にこれを発見したのが世界で1番早かったと思います。
その少し前から銃器業界のライターとなったのですが、どのレポーターも連射の操作性に付いてはレポートして おりましたが、ボルトの方が連射が速くて良く当たると言う話は何処からも出ませんでした。

銃は1990年頃、新しい合金鋼を使い、新しいNC加工をすると言う前提で再設計され、高精度となり再デビューし、2000年頃までの出揃いました。現在読者が使っている銃は殆んどがこれになると思います。

100mでワンホールが可能となり、同時に高精度化した市販弾を使って300mの遠射も可能となり、200mのランニング射撃も可能とするスコープ専用銃です。
しかしスナップショットもランニングのスイングショットも多くの生徒等に教えましたが、誰1人出来ませんでした。

  8.ライフル銃 は単発で構わない。
誰もスナップショットやスイングショットが出来ない事から、1発で倒し切れなかった場合、走る鹿や一瞬だけ振り返る鹿に命中弾を与える事は最早絶望的になります。

また単発運用のスクールが何処よりも高捕獲率をキープしている事、EHG5205では1日に5回の出会いがあり、2頭の捕獲があり、その中に0.5頭の大物が含まれる、それが平均値です。

スクールでは鹿を見付けてから1発を装填するのですが、直前まで装填せず、発砲直前に装填&セーフティー解除をしてスナップショットモドキで撃ちます。狙うはショルダーのナミビアポイント、ここは1発でその場にひっくり返る可能性が最も高い急所です。撃ったらすぐにエジェクトしますが装填はせず、マガジンに1発入れるのみ。
撃つ時の装填は肩付け工程で行うのです。そして必要であれば止矢を撃ちます。

撃たなかった時は肩から降ろす時にボルトのハーフコック、次いで安全装置を掛けます。
そして脱砲は安全装置を掛けたままボルトオプナーを操作して脱砲を行います。
これが最も安全な銃の操作方法であり、且つ最もよく獲れる射撃方法でもあります。

つまり、銃が誕生してから500年来の長い間の憧れであった連射ロマンですが、ショットガンには抜群の効果を発揮した連射も、ライフル銃の場合はボルト銃に勝てず無用の長物だったのです。

またエゾ鹿猟を通して考えますと、連発機能その物も誰も使えずに危ないだけであるなら、不要だと思います。
これは法律で禁止しても良いと思います。

そして300m遠射能力があるライフル銃ですが、これも殆んどのハンターに取って憧れ状態のままとなっております。
こうして見ますと300mの遠射も200mのランニングショットも、銃にはその性能があるのですが、その技量を持っているハンターは驚くほど少ない事が分かります。それが出来るのは伝説級の名人だけなのです。
連射ロマンも遠射ロマンもそう言う物であり、巷のハンター諸氏には無縁の物だったのです。

筆者は15年間に500日近い出猟を得て、これらを独学で会得しましたが、これは年間30日以上で巷のハンターの10倍ペースです。筆者に言わせればスナップショットは単に素振りのトレーニングの回数だけの問題であり、これが出来る様になれば全ての射撃の照準時間が半分以下になりますから、自分の物にして絶対に損はありません。

検証はイメージが上手く行けば特に不要で、やがて実戦の全ての場面で証明出来ます。こちらは見て撃つのですが、見直しはありません。

これが出来る様になりますと、同時にアバウト狙いの早撃ちも出来る事になり、今まで遠射と思っていた150m 射撃が近射側に分類される様になり、それが出来る用になりますと、更なるテーマにチャレンジが可能となって来ます。300m遠射もこちら側の射撃技術となりますが、これらが出来れば名人級と言われます。

  9.見ないで撃つ スイング射法。
スイングショットにしましても同様です。こちらの場合は射撃場で検証する事は出来ませんから、実戦で検証するしか方法がありません。その為には速やかに車外に出る方法を含めてのイメージトレーニングとなります。

ランニングショットを頭で理解するには、見えている映像が古い虚像である事を理解しなければなりません。
従って目視照準では絶対に当てられないと言う事です。今現在の映像も見る事は出来ませんが、着弾時の未来位置の見えない映像位置を心の中で推定して、見ないままでスイングを止めずに、引き金を引きます。

見ないまま撃つのですからスコープは照準器ではなく照準補助具になります。
走っている鹿を見付けたら試行錯誤で積極的にチャレンジしてみる事です。

筆者の場合は理論も何もない状態でしたから90日3000発を要しましたが、理論はすでに出来ており、試行錯誤が残されているだけですから、2流の頭をお持ちであれば、30%の期間で会得出来ると思います。

上記実戦日数は1日5回の出会い数が基準ですから、腕の良いガイド猟が基準になります。
結局の処、実現させるには情熱であり、諦めなければ何時か達成させられます。従って成功率は100%です。




  


Posted by little-ken  at 16:43ランニング射撃銃と弾

2016年07月25日

銃床のセッティングと動的射撃。

1.散弾銃の照準器はストック
散弾銃には照準器がなく、銃身の上に付いたリブを通して目標を見る事が照準になります。
その為にはリブの真後ろの線上に目が行く様に銃を構えなければなりません。
その精度は±1mm以下を要します。

ところが人間の顔はそれぞれ違い、従いまして銃床の形状はオーダーメイドがベストであり、
高級銃は全て特注です。旧日本軍の様に体を銃に合わせろと言うのはやや無理があり、
市販銃でも近年はアジャストが可能な物が増えつつありますが、それも当然の成り行きです。
散弾銃はスナップショットで銃を向けるだけで狙わなくても当たるのがメリットですが、良くセッティングされたストックが前提必須条件になります。

2.ライフル銃もスナップショットやスイング射撃は得意項目
実はこれライフル銃でも全く同じ事が言え、スコープ銃がスナップショットや動的に向かないと
言うのはストックのセッティングが合っていないからだったのです。
最新狙撃銃ではストックがアジャスト出来る様になっている物が増えて来ました。
ストックを正しく体格に合わせ、且つ裾銃練習をしっかり積めばスナップショットもランニング
射撃も必ず当たる様になり、それらは筆者の様に得意項目に変わる事でしょう。

    筆者が依然使っていたH&Kオート、自作の黒いチークピースがポイントです。
    オープンサイトの銃にスコープを後付けしただけではあまり成果を上げられません。

3.動的の撃ち方
今更と言う感じがしますが、飛行している鳥に対しどの様に当てるのかを考えてみます。
目に見える映像はリアルタイムの様な気がしますが、実は予想外に古い虚像です。
ではどの程度古いのかと申しますと弾の飛行時間の0.1秒も含めて経験上で約1秒です。
如何ほど古いかは別にして動的射撃はこの考え方を抜きには成立しません。

飛行速度を36km/hと仮定しますと10m/sになり、距離に関係なく見えている虚像の10m以上
前に銃を向けて撃たないと当たらない事になります。
実際はそんなに前ではなくリードは数mで撃つ人が多いと思いますが、それは銃が目標を追尾しているからです。

追尾が完璧で相対位置が変わらなければ1秒古い虚像と実像の位置関係は変わりません。
従いましてこの状態であれば弾の純飛行時間分、距離30mを300m/sで飛行すれば0.1秒
と言う事になり1m前を撃てば当たる事になり、これがリード射法の考え方です。

先ほどの一般的経験量のリードは数m、何故違うかと申せば、それは引き金を引く時に
銃が止まっている引き止まり射法をしている人が殆どである事からそうなります。
なぜスイングが止まるのかは銃の反動を体が受け止める為に力が入るからです。

4.動的射撃は散弾銃もライフル銃もスイング射撃
狩猟の実戦は距離も速度も飛行方向も定かではありません。その都度リードが変わり
ますが、これを後述のスイング射法で撃ちますと余りリードを考えずに撃っても当たります。
やり方は標的を追い越した時点で引き金を引くだけになります。実際は少し遅れて弾が
出ますが、その間も銃は目標を追い越し続け、それがリードになります。

速い目標には速いスイングで追い掛けますからリードも自動的に多くなります。
遠い目標には同じリード角度でも先が開いて距離に比例したリード量がこれも自動的に
得られると言う、恐ろしくアバウトですがかなり上手く行く射撃方法です。
実際は小粒弾で射撃距離が長くなると弾速の途中低下が大きくなり、その分のリードを
少し追加してやる必要がありますが、中距離までは非常に上手く行く射法です。

筆者はスイング射撃と秒速3発を実用化してから捕獲率はぐんと上がり、若い頃は愛銃
SKB1900でアルバイト、毎朝カモの定数5羽を捕獲してから出勤しておりました。
捕獲したカモは当時月給が5万円の時代に平均800円/羽で売れ、そのおかげで日本中の旅行に行けました。

    現在の筆者の愛銃:セミオートのSKB1900改12番フルチョーク、ベスト仕様は
    24インチリブ銃身 先台の前はバランス用の錘。ストックもパッドエンドの角度を
    多少変えていますが、それ位に銃床のチューニングは重要アイテムなのです。
    カモ撃ちバイトの頃は30インチフルチョークを使っていました。


スイング射撃で重要な事は安定した銃のスイングが不可欠と言う事になり、発射の瞬間に
サイトを見直す或いはリードの再確認を取ろうとするとスイングが乱れ、見ないで撃つと
言うのが正解になります。実はこのスイング射撃方法はライフル銃でも全く同様です。

ただ近距離パターン射撃の散弾銃はかなりラフ精度でも命中させられますが、しかし
遠距離で単弾を急所に当てるライフル銃の射撃精度は散弾時の10倍の精度を必要とし、
その為により完璧なスイングの保持が必要になります。

5.ライフルのスイング射撃の成功は散弾射撃がベース
射撃の極意のヒントになれば幸いですが、90%の普通のハンターは散弾銃で引き止まり
イカサマスイング射撃をしていますが、少し経験的補正を加えると何とか通用する程度になります。
これをヨシとすればそれ以上の上達はなく、浮き沈みの多い成果となりますが、それは
基本が間違っている点に原因があります。

しかしライフル銃の動的射撃にはそのイカサマスイングは通用しなく、それ故にチャレンジ
する気が起こらない程に当たらない、それが普通ハンターのライフル動的射撃です。
つまり、散弾銃もライフル銃も同じ撃ち方ですから、散弾銃が正しく撃てなければ
ライフル銃の動的射撃はやるだけ無駄と言う事になります。

   サコー75バーミンター改 ボルトアクション銃 口径308マガジン5発。
   本銃はStdから色々変更されていますが、これがベスト仕様だと思っています。
   変更箇所はストック後端カット2cm、軽量化、グリップの形状変更、銃身カット5cm。


本銃サコー75改ではピーク時にはほぼ連日5頭のAve.4.7頭/日を記録し、19日間に90頭
を捕獲、長期で見ても10シーズンに約750頭を捕獲、その内の350頭以上が走る鹿でした。
最大遠射は500mで2頭連続命中、300m遠射の3連続成功や、5発5中も2度達成しまして、
以後は回収が大変で遠射は撃たなくなり、複数捕獲も2頭に留める様になりました。

更にヒグマ6頭を捕獲、4頭がウォーキング又はランニング射撃、2頭は至近距離のスナップ
ショットでした。猛獣にも臆する事無く対処出来た事に満足しています。
海外猟7回では国内を遥かに超える海外の大物19頭を捕獲。
こうした多大な成果が上げられたのも、道具の選択が良かった事と、射撃の基本が間違っていなかったお陰です。

筆者の合計捕獲数は 1222頭、 29%をH&Kオート、61%をサコーボルトで仕留めた事に
なります。また散弾銃側ではアルバイトのカモ撃ちとボランティアの害鳥駆除で40年間に
軽く9000羽以上を捕獲、この95%以上を6本のSKB1900で捕獲しました。
筆者の狩猟人生の殆どはショットガンのSKB1900オートとライフル銃のサコー75改と共に過ごして来たと言えます。





  


Posted by little-ken  at 16:33ハンティングランニング射撃

2016年04月13日

ライフル銃の欠点-3:動的射撃。

従来の考え方ではライフル銃の照準には相当な精密さが必要であり、それには相当に時間を要し、目標が完全に止まっていてもそれなりの難易度ですから、移動していたら不可能であると考えられていました。

拙者も当初は走っている場合は難しいと思い、まずは100m以下の歩いている鹿を従来法で撃ってみました。弾着までに鹿が多少は移動する事は分かっていますが、距離が100mなら弾の飛行時間は0.1秒程度、その間に鹿が歩く距離は10~20cm程度ですからどんなに悪くてもケツより前に当たる筈です。

ところが撃ってビックリ、着弾は鹿のケツの少し後方であり、誰が何度やっても同じ結果でした。心臓狙ってケツの後方と言う事は鹿の移動速度から逆算すると1秒強と言う事になります。

これはどう考えても信じ難いのですが、誰が何度撃っても同じでしたからこれは避けがたい事実、これに対処しなければ解決は出来ません。つまり肉眼で見ているのは虚像であり、見えていない真の像とは約1秒ずれている事で考えを発展させなければならないのです。

そしてこれは見えない目標を撃つのですから従来の視力に頼った照準を辞めなければならない事を意味し、真の位置は心の中で推測する以外に方法はないと言う結論になります。ライフルスコープは見て撃たないのですからもはや単なる照準補助具と言う事になります。

拙者、その考えで弾薬約2000発と3年間で約100日の実戦でランニングショットの色々を試しました。その結果として得られた極意は獲物を1度追尾し、安定追尾後はそのままスイングを加速し、以後は見ないままで追い越した頃合いで撃つと言う、手法になりました。

銃はH&Kのオートで実戦100日から300頭程を捕獲し、約100頭が走っている鹿ですが、この時の射撃距離は100m程度、1頭を捕獲するのに末期でも5発強を必要としました。

その後に銃をボルトアクションのサコー75バーミンターに替えましたが、僅か1年で予想外の事が幾つも起こりました。まずランニング射撃の射程距離が200mまで延長され、それでいながら1頭捕獲に必要な弾数が約半分の2.7発になりました。

距離が2倍で命中率が2倍と言う事は4倍の向上率になりますからこれは驚きです。更に驚きはそれに留まらず、連射速度が自動銃の時よりも多少速かったのですから、もうセミオート銃の存在意味すらが無くなります。

    80cm級の超大物の群れ、中央が1番デカく、次は最後尾、最後に先頭を撃ちます。

その後の約10年間実戦300日でサコー75は約800頭を捕獲、300頭以上が走る鹿です。長い間の憧れであった5連射5頭捕獲も2度達成し、これで移動目標射撃は達成したと判断し、以後は回収が大変ですから1度に捕獲するのは2頭以下に留めました。

遠射最高記録は600mの2頭連続、300mでは5度連続で成功、これで遠射も目標達成と判断し、以後はこれも回収が大変ですから遠射はしなくなりました。1度出会った鹿はかなりの率で数日以内に再び出会える事が分かった為もあります。

ランニング射撃の秘訣は見ている映像が虚像であり1秒古い事を理解し、従来の肉眼照準の考え方を捨て、スイングを絶対に止めずに目標を追い越す頃合いを見ないで撃つ事です。
遠射の秘訣は銃を持たずに全依託射撃とし、銃だけに撃たせる様にすれば必ず命中します。

海外で試しましたが、この移動射撃法は飛んでいる鳥や飛び立ちの鳥に対しても有効でした。これが一般のハンターに出来なかった原因は肉眼に頼る従来の射撃方法や見える映像がリアルタイムの実像ではないと言う従来の考え方を捨て切れなかった事が原因です。

次いでですから空中の空き缶撃ちも解説しましょう。
ピストルの場合はホルスターに入れている状態からの抜き撃ちになります。
空き缶が投げられてから銃を抜き、セーフティーを外しながら照準して発射します。

拙者はこれを玩具のエアガンで練習し、当たる様になってからは海外の実銃でも試しました。ショットガンもライフル銃でも同様に海外で試しましたが、どの銃でもよく当たりました。先に抜いて或いは肩付けしたりして、準備していると当たりません。

実はこれにも秘訣がありまして、この撃ち方は移動標的撃ちではなく、単に止まっている空中標的として撃つのです。つまり投げた空き缶の空中弾道コースを読み、その上死点ポイントに向かってそのタイミング良くスナップショットをするだけなのです。
  


Posted by little-ken  at 15:06ハンティングランニング射撃

2012年05月22日

走る鹿を撃つ。


ライフルの弾は非常に速くマッハ2を超えています。秒速で800m位です。
スラグ弾でも音速を超えて400m/s程度です。

しかしこれでも目標に届くまでには時間が掛かり、その間に目標が移動します。
ライフルで大雑把に距離100mに対してリード1m、スラグの場合はその2倍程度が必要です。

写真のリードを保ったまま銃のスイングを止めずにライフルを撃てば中央後方のオス鹿に命中しますが、銃を止めて撃つともう少し後方を走っている鹿のケツの更に後方に着弾します。

なぜそうなるかと申しますと人間の反応時間も相当掛かってしまうからですが、見ている情報は意外と古く虚像を狙ってしまう事に最大の原因があります。
そしてこれは虚像ですからどんなに完璧に狙っても絶対に命中しません。

命中すればこの場合の弾頭は貫通しますので写真の場合、その奥に居る鹿にも命中し、1発で2頭捕獲出来る事になると思います。

またこの様な密集集団は殆どあり得ませんが、こんな集団であればリードは多目に取っておけばどれかに命中します。
しかし通常は鹿1頭以上の間隔をあけて走りますので適当に撃てば当たる筈がないと言うのが正解になります。

ライフルですと200m位、スラグの場合は100m程度まで可能になりますが、普通の人には不可能です。
詳しく説明すると非常に長くなりますので略しますが、銃のスイングを止めないで狙わないで撃つと言う感じになります。
狙う=見る=古い虚像を撃つ事になりますので、見ない=狙わない撃ち方が必要になるのです。

見ないで撃つのですが安全の為に鹿の遠方及びこれから銃を向けるであろう方向に付いては良く見て安全確認しなければなりません。

これはネットを挟む対戦球技で相手チームのアマを見極めるのに似た行為です。
要するに訓練を積む事の上に更に心の余裕が必要です。



  


Posted by little-ken  at 09:30ランニング射撃