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2020年09月09日

使えないハイパワー弾と使えるローパワー弾。

   ショットガンの場合
鳥撃ち用の散弾では撃墜出来ない理由を弾の威力不足と見て殆どが散弾粒を大きくして行きます。ケンさんも初期の頃には大粒を試しました。その結果としてパターン密度が低くなり、思った様な効果は上がりません。

散弾の場合はショットガン効果で大きな成果を上げられます。それには3粒以上の被弾は絶対条件ですが、1粒のエネルギーには概ね無関係、マガモ撃ちでも射撃用の7.5号が最有効であると結論付けました。カモ猟に9号は小粒過ぎますが、海外の狩猟では8号装弾が多用されており、8号装弾がベストなのかも知れません。

   ライフル銃の場合
大物猟では3粒被弾を期待するショットガンのバックショットは射程距離が50mと短過ぎて余り使えず、単弾のスラグ弾やライフル弾が主に使われます。しかしヒットしても倒れず、逃げられ回収不能になる事も残念ながらよくある事ですが、これは弾頭のパワーが足りなかったのでしょうか?

結論から先に申しますと、現在のStd装弾である12番スラグは2360ft-lbf、12番サボットスラグは2040ft-lbf、ライフルの308は2800ft-lbf、下記の昔の銃と比較すれば十分過ぎる程のパワーがあります。

20番サボットスラグは1445ft-lbfと12番に比べると40%レス、308の約半分程度ですが、倒れる確率は殆ど変わりません。そして一方ではマグナムの代表的な300ウインマグは308の1.4倍のパワー、20番サボットに比べて 2.7倍ですが、それでも倒れる率は殆ど変わりません。

これらの事実からエゾ鹿猟には308基準の2倍~0.5倍とかなり広範囲で、倒れる確率は変わらないと言う事が分かりました。重要なのは急所にヒットするかどうかであり、パワーには概ね無関係の様です。

   黒色火薬の時代
戦車戦に於ける弾の威力不足は狩猟時と全く違い、装甲版に跳ね返されて無効弾となります。
WW2の日本軍の97式主力戦車は57㎜榴弾砲、装甲は僅か25~50㎜、対するアメリカのM4シャーマン戦車は75㎜高速榴弾砲で装甲は38~76㎜でした。

日本の97式の57㎜榴弾砲は情けない事に、装甲の薄い真横を至近距離から撃ってもペンキが剥げる程度、シャーマン弾は至近弾でも大きな被害が出ました。97式にも後期型は47㎜の対戦車砲となり、これは500m以内の横方向のシャーマンなら撃破出来ました。

西部劇時代のウインチェスター1873は弾速1245fps(380m/s)、パワーは僅か690ft-lbf、30番村田銃は更に貧弱な435ft-lbfのパワーでした。弾速的には現在のノーマルスラグ程度、パワー的にはその30%程度でした。アメリカに於ける鹿とはホワイトテール鹿やミュール鹿ですが、エゾ鹿と概ね同格サイズです。

流石にここまでアンダーパワーですと、戦車戦の様に跳ね返され無効弾にはならないとしても、同確率で倒れるかの自信はありません。しかし昔はこれで獲っていたのですから、ちゃんと急所に当てれば獲れたと言えます。

但し黒色火薬時代は火薬の燃焼特性から現在の半分以下の弾速しか出せなかったので、弾速は現在の308に比べて43%と非常に遅く、射程距離は半分以下になります。更に銃身に直接付けられた、オープンサイトによる直接照準ですから、30m超えは落差補正が必要になり、50mが通常射程限界でした。

アメリカバイソン用の最強力な弾であっても弾速は僅か13%アップに留まり、100m程度が射程限界でした。尚、エネルギーは理論上でMV²ですが、この時代は弾速が遅く、パワーは重量弾頭で稼いでおり、MV²が低い割に良く倒れ、当時獲物を倒す弾頭エネルギーはMVであると言う見解の識者も多数いました。

   無煙火薬時代
無煙火薬は1884年にデビュー、弾速は2倍以上でエネルギー的には4倍、最早MV²に異論を唱える識者もいなくなり、弾頭重量を半分以下にしても黒色事代の2倍以上のパワーが出せる様になり、弾薬的にはパワーも射程距離も不足は無くなりました。

WW2後は合金の進歩で強度が大幅に向上、新加工方法も多数見付けられ、新合金と新加工を前提に銃は再設計されました。1960年以後、単純精度のみを競うベンチレスト競技が流行し、この結果が次期製品に反映され、市販銃の精度は飛躍的に向上して行きました。

1990~2000年には高精度な新銃が概ね出揃い、以降は高精度なカスタム銃が不要となりました。
Std弾308ウインは弾速2900fps(884m/s)、パワー2800ft-lbf、150mワンホールを可能となりました。

上手くライフルスコープの取付高さを利用すると、300m遠射も実用範囲になり、これで実戦上の不満は全て無くなりました。パワー面でもケンさんの内外多数の実猟経験から、308で500kg前後の獲物までは全く問題はありません。

現在皆さんが使っている、或いはこれから使おうとしているライフル銃は、道具的には長い歴史上で最高の銃と弾であり、射手がちょっと上手く目標に向けて、ちょっと上手くブレない様に且つ速やかに引き金を引けば、それだけで大成功が転がり込んで来ます。

実戦でちょっと上手くやる為には、それなりの練習の積上げが必要ですが、それは射撃場の実射からでは得られず、イメージトレーニングで取り込みます。
そのトレーニング量が至らなければ、残念無念と言う事になり、至れば勝利が待っています。

   昔の銃の性能
ヘンリーライフル1862:弾は44ヘンリー(44-28)のリムファイアー弾。原型はS&Wの考案した超低パワーのケースレスロケットボール弾のボルカニックライフルでしたが゙、ヘンリー銃からリムファイアー弾になりました。

44ヘンリー弾は弾速1245fps(343m/s)、パワーは僅か586ft-lbf、後述の30番村田猟銃よりはややマシと言う程度ですが、日本のマタギは村田でやっていたのですから、カウボーイもヘンリーで使えたと思います。弾速的には現在のバックショット程度、パワー的にはその25%程度、これで鹿が捕獲出来たのです。レシーバーは真鍮製、弾薬が短いので長いマガジンを有効に使え、16連発でした。

ウインチェスター1866 :レシーバーが真鍮製である事からイエローボーイとも呼ばれました。
弾は上記の44ヘンリーから変わらず、メカも基本的にはヘンリーライフルと変わりませんが、弾の補充方法で前下方からまとめて補充するのがヘンリー、1866は手元右側面から1発ずつ随時補充が可能になりました。

ただ10数発をまとめて補充する場合はヘンリーの方が圧倒的に早く補充出来ます。
低威力でしたが、時代的には意義のある銃で、南北戦争の北軍にも使われました。
使えないハイパワー弾と使えるローパワー弾。
使えないハイパワー弾と使えるローパワー弾。
            上:ヘンリーライフル、 下:ウインチェスター1866

   名称   外径&全長寸法㎜   弾頭gr  初速fps パワーft-lbf   備考
 44ヘンリー     11.6 x 34.2     200    1125     586    リムファイアー
 30番村田    13.6 x 75.0     230     921      434    12.3mm丸弾スラグ

ウインチェスター1873:西部劇時代の代表作であるウインチェスター1873は、初のセンターファイアー弾となり、弾速1245fps(380m/s)、パワーは僅か690ft-lbf、44ヘンリーよりは弾速で11%、パワーで18%向上、やや強力になりましたが、44-40と言う拳銃弾を流用した宿命でハイパワーとは言えません。

弾速は現在の12番ノーマルスラグ弾程度、パワー的はその30%程度でした。一方では本銃はコルトピースメーカーと同じ弾薬が使える事で西部のベストセラー銃のペアとなりました。コルトSAA(コルト45)はピースメーカーの先輩モデルである軍用銃ですが、こちらは45コルト弾でした。

1873は弾薬が長くなった為、ヘンリーに比べ3発減少し、13連発となりました。
弾薬の外寸は現在の44マグナムに近似していますが、パワーは無煙火薬の為に大違いです。
使えないハイパワー弾と使えるローパワー弾。

   名称   外径&全長寸法㎜   弾頭gr  初速fps パワーft-lbf   備考
 44ヘンリー     11.6 x 34.2     200    1125     586    リムファイアー
 ウイン1873    11.6 x 40.4     200    1245     688    44-40センターファイアー
  44マグ      11.6 x 41.0     270    1450     1260    無煙火薬

そんな当時の西部の最強弾はバイソン用の50-140シャープス、バイソンの成獣オスは1トン弱、ケンさんも1度対戦してみたい相手でした。
弾速は現在のノーマルスラグ弾程度、パワー的は現在の12番スラグより上で、308級となりました。当時のアメリカでは憧れのハイパワー弾でした。

スペンサーカービン1860:ヘンリーライフル同様リムファイアー弾ですが、44ヘンリーより遥かに強力な56-56スペンサー弾でストック内に着脱マガジンを持つ7連発銃でした。44ヘンリーとは比較にならないパワーで、次期モデルの1873の44-40とて太刀打ち出来ません。
使えないハイパワー弾と使えるローパワー弾。
スペンサーには本銃の後継モデルがありませんが、商売上手なウインチェスターが強力なライバルになると見て、事前に買収してしまった為でした。連発にはハンマー起こしとトリガーガードのレバー操作が必要でしたが、十分に使える銃でした。幕末の日本にも輸入されました。

   名称   外径&全長寸法㎜   弾頭gr  初速fps パワーft-lbf   備考
 44ヘンリー     11.6 x 34.2     200    1125     586    リムファイアー
 ウイン1873    11.6 x 40.4     200    1245     688    44-40センターファイアー
 スペンサー      14.2 x 39.2     350    1200     1125    56-56

スプリングフィールド1873:西部劇時代の代表作である、ウインチェスター1873と同じ年代の銃ですが、拳銃弾のウインチェスターではUS陸軍は戦えないと判断、45-70ガバメントと言うフルロードのライフル弾を使用する単発銃を採用しました。

パワーは44-40の2.5倍となり、アメリカの当時のStdライフル弾となりました。弾速は現在のノーマルスラグ程度、パワー的には20番スラグ級、バイソンのハンティングにも使われました。

スプリングフィールド1873は単発でしたが、トラップドアと呼ばれ、ハンマーを起こしてボタンを押すとバネで空薬莢が自動的にエジェクトされました。新しい弾の補充も外部式のチューブマガジンのボタンを押せば1発が出て来ると言う優れ物で、元込め単発銃の中では最速連射が可能でした。
使えないハイパワー弾と使えるローパワー弾。

そんな当時の西部の最強弾はバイソン用の50-140シャープス、バイソンの成獣オスは1トン弱、ケンさんも1度対戦してみたい相手でした。
弾速は現在のノーマルスラグ弾程度、パワー的は現在の12番スラグより上で、308級となりました。当時のアメリカでは憧れのハイパワー弾でした。
使えないハイパワー弾と使えるローパワー弾。
         
   名称   外径&全長寸法㎜   弾頭gr  初速fps パワーft-lbf   備考
 トラップドア     12.8 x 64.8     300    1597     1699    45-70ガバメント
 シャープス      13.4 x100.0     638    1413     2829    最強の50-140
  308       11.5 x 71.1     150    2900     2802    NATO Std弾
 
 12Gサボット    20.0 x 59.0     435    1450     2040    カッパーサボット12G
 20Gサボット    16.0 x 59.0     275    1500     1444    カッパーサボット20G
 12Gスラグ     20.0 x 59.0     435    1560     2361    フォスタースラグ12G
 20Gスラグ     16.0 x 59.0     275    1580     1513    フォスタースラグ20G



村田猟銃:原型は13年式(1880)&18年式の軍用銃、黒色火薬時代末期の口径11㎜ライフル銃でした。1884年に無煙火薬がデビュー、村田銃も22年式からは無煙火薬となり、更に30年式や38式歩兵銃等の新式軍用銃の普及に伴い、1890年頃、戦力外となった黒色火薬の11㎜村田軍用ライフルは、30番前後の猟銃に改造後払い下げられました。

払下げ銃の好評から、町の銃砲店(今と違って当時は製造業者でもあった)では村田式猟銃が多数新造され、1960年代前半まで日本独自の村田銃文化となりました。

11㎜軍用弾の方は20番スラグ弾並のパワーがあったのですが、30番村田はその1/4のパワーしかありません。これはどうしてかと申しますと鳥撃ち用散弾の黒色火薬でリロードした為です。
散弾の場合は燃焼圧力を上げるとボール紙製のワッズから吹き抜けパターンを乱します。

また弾速を上げると銃身壁と擦れ合う散弾は摩擦で溶けパターンを乱します。従って散弾用は多少低性能でも高価な火薬消費の少ないセッティングとなり、それをそのまま丸弾に置き換えたので、極めて低威力のスラグ弾となりました。
使えないハイパワー弾と使えるローパワー弾。

   名称   外径&全長寸法㎜   弾頭gr  初速fps パワーft-lbf   備考
 30番村田    13.6 x 75.0     230     921      434    12.3mm丸弾スラグ
 村田軍用     13.6 x 80.0     417    1375     1750    11㎜ライフル
 12Gスラグ     20.0 x 59.0     435    1560     2361    フォスタースラグ12G
 20Gスラグ     16.0 x 59.0     275    1580     1513    フォスタースラグ20G

村田猟銃はプロのマタギから一般のアマチュア大物猟ハンターまで抜群の人気で、非力ですが多数の猪や鹿や果てはヒグマまでが捕獲されていました。

1960年代に入りますと12番水平2連銃がバカ売れし、村田銃の時代は終わりました。2連発の為だったのか、12番と30番では倒れる率に少しは差があったのかは分かりません。1970年代には12番自動銃がバカ売れ、これは実用上無意味ですが、2連発対5連発(当時)の差でした。

      カートリッジ諸元表 1gr=0.0648g  1ft=0.3048m
   名称   外径&全長寸法㎜   弾頭gr  初速fps パワーft-lbf   備考
 44ヘンリー     11.6 x 34.2     200    1125     586    リムファイアー
 ウイン1873    11.6 x 40.4     200    1245     688    44-40センターファイアー
  44マグ      11.6 x 41.0     270    1450     1260    無煙火薬

 トラップドア     12.8 x 64.8     300    1597     1699    45-70ガバメント
 シャープス      13.4 x100.0     638    1413     2829    最強の50-140
 スペンサー      14.2 x 39.2     350    1200     1125    56-56

 30番村田    13.6 x 75.0     230     921      434    12.3mm丸弾スラグ
 村田軍用     13.6 x 80.0     417    1375     1750    11㎜ライフル

  22LR       5.7 x 25.4      31    1750      204    リムファイアー
  22マグ       6.1 x 34.3      30    2300     322      同上

 12Gサボット    20.0 x 59.0     435    1450     2040    カッパーサボット12G
 20Gサボット    16.0 x 59.0     275    1500     1444    カッパーサボット20G
 12Gスラグ     20.0 x 59.0     435    1560     2361    フォスタースラグ12G
 20Gスラグ     16.0 x 59.0     275    1580     1513    フォスタースラグ20G

  308       11.5 x 71.1     150    2900     2802    NATO Std弾
 6㎜PPC      11.3 x 53.3      70     3250     1641    ベンチレスト用


20番サボットスラグは12番に比べると40%レス、308の約半分程度ですが、それでも倒れる率は殆ど変わらず、一方でマグナム代表の300ウインマグは308の1.4倍のパワー、20番サボットに比べて2.7倍ですが、それでも倒れる率は殆ど変わりません。

かなり低威力弾であっても急所にヒットすれば十分捕獲可能であり、かなり高威力弾でも急所にヒットしなければ捕獲出来ず、パワーでバタルゾーンは広がらない事が判明しました。

これらの事からエゾ鹿猟には308基準で数倍~数分の1であれば、結果に大きな差は起こらないと思われます。その上限も下限も不明ですが、低パワー(例;ベンチレストの6㎜PPC)でも特に問題なさそう、これが結論です。

海外で試しますと体重5kg前後の狐や兎クラスは、胴体の何処にヒットしても即死しますが、エゾ鹿とは桁違いの体重比20倍以上です。同じ条件比で行きますと、エゾ鹿で何処にヒットしても倒れるのは20㎜以上のライフルになりますが、それでは個人で携帯不可能な50~100kgの超大型銃になってしまいます。

308の2倍程度マグナムでも無意味である事は以前から分かっていましたが、今回のレポートの分析で遥かに低威力の数分の1でも捕獲は十分可能だった事が分かりました。

結果として小粒散弾同様、ライフル弾でもパワーには概ね無関係と言うのが結論、パワー増に頼る狩猟、精度不足をカスタム銃で補う狩猟は、ライフル銃でもあり得ないと言う事が分かりました。





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Posted by little-ken  at 16:33 │ハンティング銃と弾