2016年09月01日

リローダーの愚かさ。

ライフル銃の用途は我が国では狩猟に限られています。
エゾ鹿用の銅弾は完成弾ですと600~700円/発と非常に高額です。
弾を安くするには薬莢再使用のリロードと言う手法があり、弾のコストは半額以下となり弾代を大幅に節約出来ますが、後述の様に重大な落とし穴があります。

リロードにはもう一つ射撃精度の追求と言う目的がありです。
ライフル銃身は発射の衝撃でかなり大きく振動し、振動の上下の安定期に弾頭が銃身から出る様にすれば射撃精度が大幅に上がる事になります。
その為に火薬の種類や量を超精密に調整すると言うのが精密射撃用リロードの考え方です。

その理論に間違いはなく、100mでmm単位以下の精度を追求するのであれば今でも非常に有効な手法ですが、後述の様に狩猟には超高精度は不要であり、一方で昨今は市販銃も市販装弾も画期的に精度が良くなり、今や市販弾の精度に通常のリロード法では太刀打ち出来なくなりました。

元々狩猟の実戦では150m程度の射程距離で直径15cmの急所に当てる精度があれば十分で、5cm以下の精度は全く不要です。
必要なのは早く撃つ事であり、更に言えば良い出会いを得るテクニックが最も重要です。

命中させられる能力の無い者の言い訳ではない事を証明する為に、拙者も射撃精度はそれなりに追求し、市販狩猟銃、市販安売弾、スコープ狩猟用4倍、射撃方法テーブル撃ち、それで150mから5発を撃ちベストは12mm、通常のリローダーの遥か上の性能を出せる事を証明出来ました。

そして一方、元プロの実験課員の筆者でもハンドロードではどうしても安売り工場弾の精度に至れませんでした。
通常のリローダーに拙者を大幅に上まわる実験結果が出せるとは到底思えません。

そう言う事実から、今や殆どのリローダーは自称本格派のカッコを付ける為だけにリロードを行っていると言っても過言ではありません。

そして一方で筆者自身ハンティングガイドをしている関係上、リロード弾のお粗末さを下記の様にたくさん見て来ました。ハンドロード弾には工場製弾に比べてポカミスが2桁以上高く、5シーズンに7名の生徒が下記の様に猟の全部または1部を無駄にしました。

  1.脱砲したら弾頭だけが銃身内に残ってしまい、半日を無駄にした。
  2.マガジンに入らない弾で1発も使えず、遠征猟その物が無効になった。
  3.薬室に入らない弾で1発も使えず、遠征猟その物が無効になった。
  4.1発目からオーバーロードで銃が壊れ、遠征猟その物が無効になった。  
  5.火薬のない弾が混入し弾頭が銃身半ばで停弾し、残り約半分の猟を無駄にした。
  6.肝心の時に製造ミスの不均一弾で稀に見る大物を失中し、悔やみ切れません。
  7.何時ものクセで薬莢を回収し、その間に大物チャンスを逸して悔やんでいます。

ライフル銃の所持目的はデカイ鹿を捕獲する事です。
実戦派の筆者は大物に出会う事を1番に考え、角長80cmを超える超大物チャンス40~50回から30頭の捕獲に成功し、総捕獲数は1200頭余に及びます。

そんな筆者が使う弾はその方面からすれば超粗悪品と言える弾です。
ベースは安いだけが取り柄の当たらない事で有名なロシア製工場弾、80円/発です。
そのままでは北海道で使えない鉛弾頭ですからバーンズの銅弾頭に挿げ替えています。

銅弾頭も良い物は200円/個、並でも100円/個ですが、筆者の使用弾頭はこれまた当たらない事で有名な初期型バーンズの銅弾頭、誰も買わない売れ残りを20円/個で購入しました。
この当たらない同士の組み合わせでは150mで5cm以下の精度にはなりませんが、これでも何ら不自由なく、1200頭の約50%をこれで捕獲しております。

それ以前の150mで12mmの安売り弾と超粗悪品と言われる弾で捕獲率に差は出ませんでしたから、実戦精度に50mm以下は不要と言い切れます。
実戦で最も重要な事は如何にして目標とする大物鹿に出会えるチャンスを作るかに掛かっており、出会いが無ければ射撃技術を発揮する事も出来ません。

そして次に必要なのは早く且つ冷静に撃つ事です。動かれたら普通のライフルマンではもう対処不可能、早く撃たなければ射撃チャンスその物を失ってしまい、稀なチャンスを生かせない様では大物捕獲成功は何時になるか分かりません。

銃がより当たる事は決して悪い事ではありませんが、物事には寄与率と言う物があり、その重要部分が全く分かっていない、これがリローダーの愚かさです。

リローダーの愚かさ。リローダーの愚かさ。
  左は安売り市販弾150m 5発テーブル撃ち12mm、リロード弾以上の精度です。
  右は当たらない同士の組み合わせで5発が80mm、両者に捕獲率の差はありません。


リローダーの愚かさ。
   超粗悪品と言われる筆者の使用弾。中はバーンズ初期型銅弾頭20円/個、右は
   ロシア製の鉄薬莢のベース弾80円/発、左はヒグマから回収した20円の銅弾頭です。





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Posted by little-ken  at 16:19 │銃と弾射撃