2024年03月13日

アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。

太古から続く狩猟は西暦1500年頃の銃の普及以前の狩猟道具は槍や弓矢で行われていました。
弓矢は便利な飛び道具ですが、矢速が低く急所を狙える射程距離は、落差補正をしても30m程度でした。ならば初期のノーライフル丸弾の銃と同程度だったではないかと言えば、その通りです。

しかし絶対的な違いがありました。それは照準器です。銃には初期の頃から照準器が付いており、落ち付いて照準して撃てば、落差補正は不要で、必ず命中しました。

それに対し弓矢では最近まで照準器がなく、目の位置と矢の位置は上下と左右がズレており、これをカンで補正し、更に10mを超えると落差補正をカンで処理しなければ、命中しない高難度な狩猟道具でした。

銃のライフリング自体は1498年に発明されましたが、1546年以降のミニエー弾の普及まで、実用化が遅れたとは言え、すでに450年以上前から普及しています。しかし実はノーライフルと丸弾の歴史は1965年頃まで続きました。どうして1965年まで丸弾は続いたのか?


  狩猟ブームの始まった頃の日本のハンター。
それは猪猟がメインで、大物猟時に散弾銃のノーライフルバレルから1粒弾を撃つ為にそうなりました。1970年代頃のハンターは殆どが雉撃ちで、そのイメージは猟犬を連れ、水平2連銃を担いでいました。

夢は猪や鹿の捕獲であり、服装は上からハンティング帽、厚手の赤チェックのシャツ、革のチョッキの、胸には丸弾スラグ弾2発、腰には25発弾帯、乗馬ズボン、靴は軽量地下足袋でした。
アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。
右写真は帽子がちょっと違いシャツが薄手ですが、概ねそんな感じでした。
下写真の少年は概ね当時のイメージです。弾帯は腰の位置が正しいです。

チョッキは革製以外や、サファリジャケットの様に長袖の場合もありましたが、偶発的大物戦に備えた、胸のスラグ弾2発は共通装備品でした。チョッキの背中部分はサブザックになっており、捕獲したキジを入れたり、雨具を入れていました。

水平2連銃は初矢がインプシリンダー、後矢フル チョークであり、丸弾スラグはフルチョークから安全に撃てる様に、やや小さ目に出来ており、その為に確実に急所が狙えるのは20~30mでした。

その後の時代では銃は単身のインプシリンダーチョークの自動銃となり、弾頭はフォスタースラグ弾となり、射程距離は50mまで延長されました。また射程80mのブリネッキ弾と言うのもありました。
現在の銃身ではリブがあり、その延長上は昔より容易に掴め、オープンサイトと大差ありません。


  コンパウンドボウの進化。
弓矢も和弓の初速は60m/sですが、近年の洋弓では用具も進化し、コンパウンドボウで100m/sの初速が可能となり、また矢の進化から精度も大幅に向上しました。

和弓では距離28mから直径36cmの的を狙いますが、オリンピックのアーチェリー競技では2倍以上の距離の70mから10点圏が12㎝強の的を狙います。

2.5倍の距離で33%の大きさの的ですから、和弓よりアーチェリーの方が原理的に高精度です。洋弓ならば70mの射程が十分有るかの様にも見えますが、実戦での落差補正を考えますと、現在でも有効射程は30m前後となり、50m前後が限界となりますが、事前試射が出来れば80mも可能です。

矢の初速からすれば、20mまでは落差無視で狙え、30mは完全に落差補正を要し、絶対確実と言う事になると僅か10~20mに留まります。
アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。
尚、ボウガンと言う、一見すると機能の高そうな道具もありますが、矢が短く精度が出ません。
従ってこれを使ってボウハンティングをしようとする人は少ないと思います。


  アラスカのカリブーのボウハンティング。
アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。
飛び道具研究科のケンさんは愛用のアーチェリーやパチンコで、30m先の空き缶を外さない程度の腕前は持っており、写真は2000年8月にアラスカ北部にて、飛び入り参加、捕獲させて頂きました。アラスカは8月20日、この日から冬が始まりました。

当時の弓矢もパワー的には馬鹿に出来ず、射程距離以外は少なく見ても308と同等以上でした。当時も今に比べれば不完全ですが、小さな照準器は付いていました。

ケンさんは愛用のアーチェリー感覚で照準器を使わずに矢を発射しました。30m先を走るカリブーに思い切りスイングし、前過ぎたかと思う位のリードを取って発射しました。

矢の行き先を見ていますと、前過ぎる様に見えましたが、最後の瞬間に矢は見えなくなりました。
その直後から、狙っていたカリブーは急に速度を落とし、やがて倒れました。ヒットは心臓のやや後方、矢は貫通しており、ヒットした周辺を見ても見当たりません。

見付かれば記念に貰って来ようと思ったのですが、残念に終わりました。鏃は3-1-4項左上のカミソリ3枚の3角鏃だったと思います。

エゾ鹿と同クラスのカリブーを貫通したのですから、少なくとも308と同じ程度のパワーです。
ボウハンティングではネット動画で見ても即倒する事はかなり稀ですが、ライフル銃のエゾ鹿心臓狙いで走られる距離よりも遥かに短距離で倒れました。現在のコンパウンドボウでは更に強力となり、マグナムライフル以上のパワーがあり、大型のブラウンベアでも貫通しています。

  3-1.野性動物へのハンディ政策。
1990年頃からの狩猟用ライフル銃は300mの射程を持つ様になり、野生動物側にハンディを与える為にピストル・先込め銃・弓矢・ショットガンの4種が新しい狩猟方法が検討されました。そして最終的に弓矢とショットガンが生き残りました。

アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。
  3-1-1.短銃による狩猟:454カスールでは300gr弾頭を1625fps、パワー1759ft-lbfと数字的には20番スラグ並の数値であり、最強のピストル弾500SWならば2500ft-lbfと30口径Stdライフルに肉薄して来ます。
しかし、命中しなければ、どんな強力な弾も無意味、強力過ぎる銃は命中させ難いのです。

ケンさんの感触ではまともに撃てるのは44レミントンマグの270gr、1450fps、1260ft-lbf程度までと思います。

銃身の前の部分はバランサーを兼ねたサイレンサーですが、弾は超音速弾であり衝撃波を発する事、及びシリンダーとバレルの隙間からの漏れ等々で消音効果は殆ど期待出来ません。

短い銃身に依り、射程距離を短くして野性動物にハンディを与え様とする物ですが、極めて短い銃身からは高精度を求める事が出来ず、獲物の急所に当てられず、またヒットしても半矢未回収が多く、ハイパワーマニアを刺激した新短銃のデビューだけに終わり、余り普及せずに終わりました。

アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。
  3-1-2.マズルローダーハンティング:黒色火薬のマズルローダーならば野性動物に与える短射程は可能ですが、半矢未回収を押さえる為、マズルローダー定義が拡大され、ライフリングも無煙火薬もサボットも全てOKとした為、現用ボルトアクションライフルを改造したモダン型マズルローダーでサボットを使えば現用ライフルとの性能差は無くなり、動物保護意味が薄くなり普及していません。

 
  3-1-3.ショットガンハンティング:初期にはノーライフルバレルから発射する射程50~80mスラグ弾で検討されていたのですが、半矢・未回収問題からサボットスラグ弾&フルライフルバレルもOKとなり、最大射程は150mとなりました。

それでもライフルの300mからすれば射程半分とハンディは確保されており、精度の実用性も十分にあり、その前の週はボウですから、よく普及していました。

しかし、エゾ鹿でもそうですが、通常のハンティングはアメリカでも100m前後が多く、実質ハンディが余り無い事が分かり、近年は減少気味となりました。
アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。
日本のエゾ鹿猟用サボットスラグ銃は国内法に合わせ、このライフリングを50%未満とした物が使われています。このサボットスラグ銃のお陰で経験年数がライフルに届かない新人ハンターでもエゾ鹿猟が可能になりました。

国内法ではライフリングのある銃身は全てライフル銃となり、ノーライフルでも ライフル弾の撃てる銃はライフル銃となります。その為、ライフリング長を50%未満としているのです。
長野の青木の陰で一気に悪者の銃と言う事になってしまいました。


  3-1-4.ボウハンティング:その名の通り弓矢による狩猟です。
ボウ射程距離は30~50m程度であり、野性動物側に最も大きなハンディを与えた事にもなります。多くのエリアでは狩猟解禁は1か月間、期間中の1カ月全部を休暇にする人も少なくはありません。

最初の1週間はボウで解禁、次の1週間がショットガン(バックショット禁止)、最後がライフルになります。多くの州で定数は1シーズン1頭のみ、もう1頭獲りたい時は別の州に行かなくてはなりません。

それに対し、日本の定数は1日オス1頭+メス無制限、シーズンは3か月間以上、ケンさんのスクールでは生徒が5日で19頭が最高、ケンさんは5日で50頭を捕獲した事もあります。
鹿猟に付きましては世界中で超ダントツ、如何に日本が恵まれている事か分かると思います。

ボウは射程内まで引き寄せる難しさもありますが、注意事項を守れば狩猟経験の無い獲物は引き寄せる事が可能です。また音がしないので獲物が余り逃げず、結果的に出会い率も捕獲率も共に銃猟に比べて遥かに高く高人気です。またド至近距離までじっと引き寄せるスリルも格別です。
アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。
アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。
上写真は左から従来型の貫通しないリカーブボウ、初期型コンパウンドボウ、後期型コンパウンドボウ、そして使う矢はカーボン製、照準器も完璧となりました。弓を引くとピープサイトが目の前に来る様に調節します。次に照星を希望の距離で正しく命中する様に調整します。

照星は3~5種あり、希望の落差に合わせられます。言葉換えれば、3~5種の射程距離の設定が可能になります。

ボウハンティングは後述の様に太い木に足場を作ってそこから撃つか、水場か餌場近くの待ち屋に隠れて待ち受けます。獲物の位置と落差がある事も多く、出来れば照星の数だけ試射をして矢の位置を確認しておきます。

これだけ事前に確認しておけば、落着いて所定の場所まで引き寄せ、予定の照準器に載せ、トリガーを引けば、矢は必ず急所にヒットします。

急所はライフルの時と同じと言えますが、骨の無い所を狙うか骨のある所を狙うのかによって、矢尻の種類を変える必要があります。
アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。アメリカでは大人気、日本では禁止されているボウハンティング。     
左側8種類は主に骨の無い所の急所を撃つ鏃です。鏃には剃刀並の刃が付いています。
鏃はヒットすると開く物も多くあり、下段がそれになります。この場合切り裂き幅は約5㎝に及び、また緑の鏃は直径3㎝を丸く切り取り、308弾頭の直径1.5㎝ダメージを遥かに超えます。

しかしこれらの刃物は余り丈夫ではなく、骨にヒットすれば壊れます。それに対し右の8種は骨の急所を狙う鏃です。

昔からのライフル弾の鉛弾頭は骨の無い急所を専用の撃つ弾頭でした。
骨にヒットすると、鉛が全量飛散して威力を失うと言う、非常に大きな欠陥がありました。

それに対し銅弾頭は骨をも砕く改良された万能弾頭となりました。この銅弾頭と前足軸線上の背骨との交点である「ナミビアポイント」の組合せは即倒率100%で「最強」となりました。

従来型ボウでは矢の刺さる深さもそれ程深くなかったのですが、初期型コンパウンドボウでは貫通または深く刺さる様になり、後期型のコンパウンドボウでは大物エルクやブラウンベアでも貫通する様になりました。
照準器は落差補正用に3~5種類のセッティングが可能になっています。

ライフル弾でもそうですが、貫通すると出血が数倍多くなり、倒れるまでが早くなり、且つ追跡が容易になります。ケンさんの使う308のバーンズ銅弾頭の140grは大物エゾ鹿のショルダーを貫通しますが、超大物エゾ鹿のショルダーでは最後の皮の所で止まり、ヒグマでは全弾が停止していました。

こうして見ると威力と言う点で見れば、コンパウンドボウは308弾以上のパワーと言う事になります。即倒と言う点では現在の高速ライフル弾が1番良く倒れます。特に銅弾頭ならではの撃ち方ですが、前足軸線上の背骨との交点付近がベストポイント、100%即倒します。




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Posted by little-ken  at 05:25 │ハンティング