2019年02月26日

鹿の圧勝構造の崩壊。

本州鹿猟愛好家の皆さん、頑張っておられますか? 特に正月明け以降は低捕獲率が延々と続きますが、これは獲物側の狩猟慣れもありますが、主には繁殖行動が終わって行動パターンが変わった為です。筆者は本州鹿の巻狩りに於ける平均捕獲率を0.05頭/日人と推定しています。
今まで調査した中では相当獲れるを自負しておられるグループでもこの平均値の1.5倍以下でした。

そして「禅の心作戦」をマスターした後の筆者の個人スコアは5倍の0.25頭/日まで上がりました。
もし、この0.05の1.5倍を上回る場合と、0.25を上廻る狩猟グループがありましたら、ぜひ御一報下さい。全国の鹿駆除の効果が大幅に上がる様に普及を図りたいと思います。

   本州鹿は何故獲れないのか?
近年は本州鹿も著しく増え、エゾ鹿に負けない程の勢力図となりました。
鹿に限らず野生鳥獣と人間の五感の差は数千倍とも数万倍とも言われており、とんでもない物があります。体力差に於きましても鹿の走る速度に人間は一瞬たりとも追い付けません。特に気配先取り合戦では超能力者との戦いとなり、通常の人間的な考えは全て言い訳に過ぎなくなります。

そう言う事から多くの狩猟は殆どが猟犬頼みの狩猟となります。しかし猟犬に追い出してもらって、その逃避コース周辺に待ち場を正しく置いても、射手の振り撒く殺気や気配が大きく、射手の視界20m外で鹿に感付かれ迂回されてしまい、鹿側の圧勝に終わるのが普通です。

また使う猟犬は鹿よりかなり小型ですから大物鹿を追い出せません。大型猟犬を使えば大物鹿でも追い出せますし、鹿並の足の速い猟犬を使えば気配先取り合戦は不要になりますが、そう言う都合の良い猟犬はなく、現実には長時間追跡が可能な小型のビーグル犬を使いますので大物鹿は追い出せず、鹿は猟犬より相当前を歩いており、射手と鹿の気配先取り合戦が勝負の分かれ目となり、鹿の圧勝構造を崩す事は出来ません。これが本州鹿が低捕獲率の最大の原因です。

本州鹿が獲れるのは、待ち場の射手の前に姿を出す稀に見る様なドジな個体と、位置的に下記の位置にあったアンラッキーだった個体に限られます。猟犬を大きくリードした鹿はゆっくり歩きと立ち止まりの気配取りを繰り返していますから、この間の勝負で勝つ為には「禅の心作戦」以外にありません。

しかし歩きの鹿は持続追跡の猟犬にやがて追い付かれます。すると鹿はダッシュし、その数百m間に待ち場があった時は気配勝負が無くなり、勝負出来る可能性が増えます。また鹿の逃避コース周辺には他の鹿もおり、これらが新たに追い出された時も同様に数百mをダッシュし、同様にチャンスが増えます。これら2項によりチャンスは増えますが、それでも後述の様に捕獲率が大幅に増える訳ではありません。

こうして全てが気配先取り合戦ではない本州鹿巻狩りもありますが、視界が悪い森の中で突然に現れ、僅かな時間内のチャンスで有効射撃をして撃ち獲る事はかなりの難度となります。
講師が捕獲した鹿26頭の内の2頭はこの突然タイプでした。

講師の待ち場に来るまでの3ケ所ですでに撃たれブッ飛んで来ました。講師は幸いにも「禅の心作戦」で自らの気配が下がっていた為、接近の気配が分かり、これら2頭をイージーショットで撃ち獲る事が出来ましたが、2頭共が3カ所で撃たれたものの被弾ゼロでした。
6名中の6名全員が失中、これがこの射撃の難度を物語っています。気配先取合戦では不戦敗の連続と突然の出会いでは高失中率、これらが本州鹿猟の低捕獲率の理由となります。

禅の心作戦とスナップショット、これにより捕獲率は5倍に高められましたが、それを以ってしても講師のエゾ鹿猟と比較すれば1/12に留まり、巷の本州鹿巻狩りの平均捕獲率から比較すれば1/60に留まる、これが本州鹿の巻狩りの現実です。
大幅に改善するには狩猟方法と猟犬の運用方法を大幅に変えなければなりません。

  2何時もの鹿との勝負し、何時もの様に負ける本州鹿猟
エゾ鹿は降雪によって移動しますが、本州では積雪が多くない地方が多く、この場合の鹿は移動しません。降雪によって移動したエゾ鹿は新しい土地で新しいハンターと毎回勝負しなければなりませんが、移動しない本州鹿は何時ものメンバーと何時もの場所で何時もの勝負をする事になります。

ある特定地域で考えてみましょう。そこには巻狩りのステージが10前後あり、鹿狩りのグループが2つ程あり、そこには鹿の群れ20グループ前後が生息しています。
毎回が完璧に同じではないのですが、鹿の数はともかくとしても、巻狩りのメンバー数と猟犬の数は共にかなり低い有限です。

11月は繁殖行動の為に若オスが盛んにウロ付きます。そのおかげで2段角や3段角になったばかりの若オスが比較的よく獲れます。大オスが獲れない理由は小型猟犬では馬鹿にされて追い出す事が出来ないからであり、メスが余り獲れないのはその地区に居付いたメスなので何時もの様に軽くかわされているからです。若オスは獲ればまた別の鹿が入って来ますから、獲れば獲るほど新しい鹿との勝負となり、勝てる率が高くなります。ところが12月も中旬を過ぎますと繁殖行動はすでに終わり、鹿の移動は激減すると思われます。

そうなりますと、その地区で狩猟をするグループは2つ程度ですから、鹿の側から見れば何時ものグループが何時もの配置に付き、何時もの猟犬が何時もの様に山を走り廻りますが、大物鹿には何時もの様に軽くあしらわれ、逃げる鹿には何時もの様に早立ちされ、鹿の方が五感の感度が比較にならない程高く、何時もの待ちに付いている何時ものハンターは、何時もの鹿に何時もの様に軽くかわされ、不戦敗が続く結果となります。

本州鹿が獲れないのは基本的には鹿の圧勝パターンを全然崩してない事が第1原因ですが、移動しない何時もの鹿と勝負する為に、何時もの様に負ける率は1段と高くなっています。
何時ものパターンで負けない様にする為には何時もの条件をせめて半分以上崩せば、かなりの効果があると思われます。

  3エゾ鹿はなぜ獲れるのか?
エゾ鹿も本州鹿と同じ日本鹿の仲間ですが、生息環境の違いも大きく、狩猟方法は全く違います。講師の猟場ではエゾ鹿猟は繁殖期に自己アピールの為に丸見えの平地に出現し、これを狙いますから、群のNO.2以降なら簡単に勝負出来ます。但し大物ほど広い場所でこの自己アピールを行いますので射程距離は100~200mとなり射撃的な難度は増しますが、気配合戦は無くなり行動パターンさえ掴めば誰にでも出会えます。また逃げられても鹿は空を飛べませんから、逃げる方向さえ分かっていれば車の方が速く、鹿との圧倒的な体力差も部分的ですが逆転出来ます。

本州鹿猟ではこれらの繁殖行動が森林内で行なわれる為、これを有効に使う猟が出来ません。
つまり本州鹿猟では鹿の圧勝構造は崩せず、低捕獲率に留まり且つ大物は望めません。
しかしエゾ鹿猟ではガイド又はハンターの能力次第ですが、鹿側の圧勝構造は崩れ、人間の頭脳&射撃技術との勝負となります。これがエゾ鹿猟の本当の魅力にもなります。
またこれがエゾ鹿なら大物を含め、たくさん獲れる理由にもなります。

エゾ鹿は繁殖行動で姿を丸出しですから、鹿の行動パターンさえ掴めれば大物鹿に出会えます。
そして射撃に至る過程で気配先取り合戦はなく、遠射+早撃ちと言う純粋な射撃勝負となります。
仮に走られてもまだランニング射撃と言う手法が残されます。
逃げた方向が分かれば車の方が鹿より速く走れますから車で先廻りも可能になります。
鹿の圧勝パターンは完全ではありませんが、かなり崩れた事になります。

つまり人間対エゾ鹿の直接対決となりますから、猟犬頼みの本州猟より遥かに難しいと言えばそれも正解ですが、猟犬を使わないのでもっと高度な狩猟が出来る、こちらも正解になります。
最も難しいと思われるのが対大物戦の迫力負け対策と対ヒグマ戦の恐怖負け対策、これらはまともな勝負以前に足が地に着かない射撃となってしまいますが、ある程度の実戦体験が避けて通れません。次いで遠射では、僅かでも心に不安や雑念があると命中しない事です。

しかし巨大な角長80cmを超える様な超大物も上手くやれば勝負出来、上手く射撃出来れば捕獲成功する、308やサボットスラグ弾は超大物エゾ鹿を1発で即死させるパワーに不足はありません。
また上手く射撃すれば100m以遠を走る鹿にでも命中させられる、これも精進すれば可能です。

しかし昨今のエゾ鹿猟では事情が大きく変わり、1年中駆除が行われ、鹿は通常のハンターから逃れる方法を学習してしまいました。従いまして、20年前以前なら獲れない数年を我慢すればガイドレスの自前出撃は可能でした。また地元3流ガイドでもある程度はエゾ鹿に出会え、そして獲れました。

それが昨今では学習済のエゾ鹿に会える特殊技術を持っている1部のハンターやガイドでない限り、獲れる以前にまず出会えない為、地元ハンターに猟場で会う可能性も激減しています。
そのお陰で鹿の動きが1段と読み易くなり、筆者のスクールでは出会い量の減少はなく、大物出会率は返って向上している状態ですが、捕獲成功率は射程が長くなりやや低下気味です。

  4エゾ鹿の越冬地猟
大物や超大物と勝負し易い解禁猟はエゾ鹿ガイド猟で最もエキサイティングな猟となります。
エゾ鹿は冬場に向けて移動しますので比較的勝負し易い構造もあります。全ての鹿が越冬地へ移動する訳ではありませんが、多くは移動します。根室半島はその越冬地猟の面白い地域となります。11月初旬に阿寒地区に冠雪が始まり、鹿は山から降り始め、1部は根室半島に向かいます。

根室半島は先細りですから、中場地域に鹿が至る頃には相当な密度となり、時に1日に数百頭を見る事もあります。その時期は12月中旬から年明けの1月の中旬になります。
この頃の降雪はブリザードとなり、それが明けると一斉に群が動き始めます。大きなブリザードの後には大移動が起こりますが、時に積雪が多過ぎて車の通行が困難になる事もあります。
しかしそのルートには規則性がありますから、ルート解明が出来ますと面白い猟が出来ます。

伝説の朝夕各々5頭ずつの捕獲を連続5日間も続けれた大量捕獲も、この越冬地に移動しようとするシカの群れが続いた為に捕獲出来ました。尚これは回収と解体のお手伝いがいたので出来た事ですが、それでも鹿が居なければ出来ません。この5日間で3度の5発5中の記録が出来ました。

根室地区の鹿は大きく、角長80cmを超える鹿は非常に少なくなるのが普通の地域ですがここでは85cm位までは珍しくありません。肉質的にも年末までは脂の乗りも良く良好です。

  5深雪時のスキー猟と春先の南側斜面猟
またその後に積雪が多くなりますと、鹿の足は細いので深く雪にめり込み走行困難となります。
車も走行困難となりますが、人間にはまだシールスキーと言う方法があり、これを上手く使えば鹿より遥かに速く移動出来る様になります。

雪の無い時期ですと自転車と歩行者の如きで人間は鹿に絶対に追い付けませんが、深雪になりますとそれは逆転し鹿が歩行者でシールスキーは自転車並となり、まともに追跡しても0.5~1時間程で追い付く事が出来ます。
シールスキーとはアザラシの皮を張ったスキーの事で平地は自転車並の速度で歩け、かなりの上りでもまっすぐ歩け、体力があれば上りでも雪の無い時期の平地歩行速度より速い位です。もちろん下りは言うまでも無く圧倒的な速さで滑り降ります。
相当な体力が必要ですが、これもエキサイティングな猟となります。

更に季節が過ぎ春の気配を感じる頃になりますと、根室地域は晴天が多く、海抜10mの半島の海岸線に向けた南側斜面には豊富な笹があり、この斜面の雪解けが周辺よりかなり早く、鹿はここに集中します。私有地の奥等でそんな場所を幾つか知っておれば、そしてそこまで行ける方法が確保出来れば、イージーな猟が出来ます。但し、根室半島のこの時期は駆除だけの世界となっており、一般ハンターはもう少し半島の根元寄りの浜中町や厚岸町付近の猟となります。

  6総評
越冬地猟も深雪のスキー猟も春先の猟もそれなりに非常に面白いのですが、やはり最も良いのは手軽にNO.2級の大物が獲れやすく、雪も少なく行動し易い、積雪で山の鹿が降りて来る地区の10月下旬からの解禁猟だと思います。

そして最も面白くない猟は10月1日からの解禁猟、この頃はまだ山の冠雪がなく、山の鹿は降りて来ません。大物鹿の繁殖期の独特の行動もまだ始まっておらず、平地にいる鹿は駆除の洗礼をたっぷり受けた逃げが上手い鹿ばかりとなり、対象が未成熟な鹿に限られ、しかも数が少ないと言う猟になります。

この様に本州鹿猟では鹿側圧勝の構図は健在で著しい低捕獲率に留まりますが、エゾ鹿猟では優秀なガイド猟に限りかなり崩す事が出来ています。ガイドに獲らせてもらうと言う部分はありますが、これも猟犬頼みの本州巻狩りと同じだと言えます。
費用は多少必要ですが捕獲効率は40倍、楽勝でモトが取れます。

また本州鹿1頭を捕獲するには20日以上の出撃を要しますが、スクールなら3日猟で捕獲ゼロはありません。それところか巷では出会う事が悲願であったエゾ鹿超大物の捕獲までが、平均19.3日と本州鹿の小物捕獲よりやや早く達成出来ます。

ぜひ悲願であった超大物エゾ鹿と勝負し、貴方の射撃技術でこれを捕獲して下さい。
末代まで続く伝説となる事でしょう。




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Posted by little-ken  at 14:50 │ハンティング