2019年02月12日

普通の狩猟 vs 桁違いの魅力、本物の狩猟。

通常で言う狩猟とは野性鳥獣の中に稀にいる、ドジで間抜けな個体との、猟犬頼みの勝負を言います。筆者は猟犬に頼らない本物の狩猟への探求を趣味として来ましたが、それは不可能に対する挑戦その物でした。圧倒的な五感と体力に優れた野性鳥獣との勝負は、超能力者との勝負に等しい絶望的な高い壁が間にありました。

後にこれらを乗り越える解決策は殆んどが見付かりましたが、何れも簡単ではありませんでした。パイオニア的&エンジニア的な手法を用いて約45年間、大まかに数えて39項目を達成出来、カモ猟、本州鹿猟、エゾ鹿猟は概ねを究める事が出来ました。

  1カモ猟
カモ猟の場合、1回の渡りで30%が脱落しますが、その寸前でかろうじて辿り着く個体も少量います。
そんな個体は最早生き残れない側にあり、野生鳥獣の圧倒的な五感はすでに失われており、本来なら撃たれる事が見え見えの場面でも、それさえ分からずに飛び込んで来ます。
俗に「カモがネギ背負って」と言う諺がありますが、墜としたカモは猟犬に回収させ、すでに脱落して野性の能力を失った相手と勝負する「鴨ネギ猟」がカモ猟だと通常は思われています。

それに対し健全なカモ猟は鴨ネギ猟とは全く別物の狩猟であり、難度は1桁以上違っていました。
まともな群には当初如何なる手法を用いても射程距離である30mまで近寄る事は不可能でした。
筆者は1時期の数年間が海辺の工場勤務だった為、連日朝出勤前にカモ猟を行い、そう言う本物の健全なカモと勝負出来る手法の幾つかを開拓出来ました。
巷では手ブラで帰らない程度がベテランの証とされておりましたが、筆者は朝の30分だけで当時の定数10~8羽を希望する場所に墜とす事が可能で、夕方にこれを売ってアルバイトをしておりました。

尚、カモは脂の乗ったカルガモとマガモに限り、比類なき抜群に美味しい食材です。
一方すでに脱落が決定した鴨ネギ猟のカモは美味しくない側の代表なのですが、当時の炉端屋や焼鳥屋はこの美味しくないカモを鶏肉に野性の香りを付ける為に適量混ぜてつくね等を作っていました。
少し偽りの感じはしますが、それなりのイイ感じのジビエ入門食でした。

  2猪猟
猪猟の場合は獲物の大きさに対して次項の鹿猟よりは多少大き目の格闘系の紀州犬等を使います。
相手が小型な猪であれば、射手は不要で、猟犬がかみ殺して1巻の終わりとなります。
もう少し猪が大きいと猟犬との格闘戦が始まり、そこにハンターが駆け付けて1発ズドンで終わりとなります。抜群に大きい猪になりますと、猟犬に追い出せないのは鹿の場合と似ていますが、猟犬の方が若いと猪にやられてしまうのが普通です。つまり猟犬の負傷又は戦死で終わります。

適当なサイズの猪であり、適度な逃げ足の猪の場合は逃避し、猟犬が追跡する事になります。
これに備えて次項の鹿猟と同様に逃避コースの随所に射手が配置されますが、猟犬が長時間追跡をしない事、射手の気配が猪に先取りされ迂回してしまう事等々、猪が射程内を通る事はかなり少なく、多くは 逃げ切られます。従って射手に撃ち止められる猪は例外的なドジ個体に限られる、これが通常の猪猟です。

殆ど猟犬頼みとなり、銃を主体に考えると非常に魅力の少ない狩猟となります。
捕獲率は猟犬次第、優秀な猟犬が複数いれば本州鹿猟より多く獲れますが、その場合も過半以上は猟犬だけで終わってしまうか、勢子が格闘現場に駆け付けてズドンで終わり、射手の出番は少ない構造です。待ち場の射手が撃てる確率は本州鹿と同等以下になると思われます。

  3本州鹿猟
本州鹿猟は猪猟と違って格闘戦コースはなく、猟犬に追い出させて逃げるルートの随所で待ち伏せして 撃ち獲る 5~10人のグループ猟ですが、本州鹿猟は長時間追跡能力を持っている小型のビーグル犬等で行ないます。従って小柄な猟犬によって追い出す事が出来るのは経験の少ない若鹿又はメスに限られ、健全な成獣のオス鹿は体格違いの小柄な猟犬を鼻であしらってしまい、狩猟の対象外となります。

猟犬が鹿を追い出したとしても撃てる可能性は低く、仮に鹿が逃げるコースに射手がいても、射手の視界は20m程しかありませんが、五感が桁違いに高い野性の鹿はその数倍以遠の50~100mで射手の気配を先取りし、迂回してしまうのが普通です。
射手は気付かないままの一方的な敗戦が続きます。
つまり射手の前に姿を出すのは例外的なドジ鹿に限られ、平均捕獲率は僅か0.05頭/日人と低く、20日も出撃しなければ1頭捕獲出来ない、これが通常の本州鹿猟です。

小物しか獲れないのと、エゾ鹿ガイド猟に比べると1桁以上少ない捕獲量が低魅力の2大要因です。
エゾ鹿ガイド猟は撃たせてもらう猟、あれは本物の狩猟ではないと言うハンターもおられますが、それで言えば本州鹿の巻狩りは猟犬とグループによって撃たせてもらう猟であり、概ね同じと思われます。
また飛行機代もガイド代も不要ですが、車で高速片道1~2時間が普通で、1頭捕獲の20回出撃にはエゾ鹿1頭目捕獲以上の意外と高額費用が必要です。

  4究極の本州鹿猟
本州鹿猟では筆者が14年ほどを掛けて開眼した「禅の心作戦」がありますが、これなら気配が1桁以上小さくなり、鹿に気配を先取りされて一方的な敗戦をする事は殆んど無くなりました。禅の心作戦で鹿を何処まで引き寄せられるかを試しました所、2mと5mでしたからこの作戦は完璧でした。

更に鹿専用のショットガンも新たに創りました。4年間に20回対戦して20連勝出来ましたから、本銃と独自のスナップショットの組合せも完璧でした。2つの完璧な組合せからは従来平均値の5倍の0.25頭/日人まで高められましたが、これが本州鹿猟の限界でした。(猟犬側の運用にはまだ大きな可能性が残っています。)

本州鹿の巻狩りで獲れない最大の原因は射手と獲物の気配勝負に射手が負けてしまっている為です。「禅の心作戦」とは射手の殺気と気配を低下させる為に、30~60分間だけですが次の事を行います。
    1.撃ってやろうと思わない。
    2.物陰に隠れず、丸見えの位置で待機する。  
    3.禅の心の様に心を静かにし、仏像の様に微動たりともしない。
    4.見張りもGPSも猟犬の発信機も無線も気配勝負に負ける為の道具その物になります。

鹿と猟犬は数km離れている事も多く、それなりの前から禅の心モードに切り替える必要がありますが、殺気を消して仏像の様に本当に動かなければ、鹿は眼が左右に付いており平面画像ですから、丸見えでも絶対に発見される事はありません。これで逃避コースさえ合っていれ鹿は射手の射程内まで間違いなく来ます。

そして射手の気配が低下しておれば、今まで自らの気配の陰に隠れて分からなかった鹿の気配は誰にでも分かる様になりますから、見張る必要は全くありません。鹿の接近時に見張りで顔が動いたり、GPSや無線の操作をしていれば、100%鹿に発見され一方的な敗戦で終わります。目を瞑っていても気配がどんどん近寄って来るのか具体的に分かります。鹿も流石に5~10mで気が付いて足が止まります。その時の鹿はフリーズ状態ですからスナップショットでそのまま撃ち、その場に倒れ1件落着となります。

  5エゾ鹿猟
エゾ鹿猟は元々本州鹿の2倍程の大きさが魅力ですが、更に猟犬を使わず繁殖行動が平原で行われる為、ボス鹿に続くNO.2級の大物も簡単に捕獲出来る所が最大の魅力となります。巨大な鹿が、しかも桁違いにたくさん獲れて、しかも脂が乗っていて美味しい、これがエゾ鹿猟の魅力です。それには飛行機代やガイド代が必要ですが、1頭目の捕獲コストで概ねイーブンとなり、大物捕獲成功はプライスレスの喜びとなります。EHG5205では過去初回参加者でも捕獲ゼロはなく、出費(1頭目捕獲コスト)は18万円で収まりました。殆んどが初回から2頭捕獲でした。

筆者は2007年、1度に処理出来る限界の5頭を朝夕5日間連続で計50頭捕獲、これが最高記録、シーズンを通してと言う事になりますと、2009年の48.5日で140頭、2.9頭/日が最高でした。
筆者のエゾ鹿猟はその習性と過去の行動をよく分析し、この1週間の天候の移りと鹿の行動から、本日なら何時何処に行けば鹿に会えると言う方法であり、これをポイント猟と名を付けました。
また大物鹿に特化して詳しく生態を調査、出会い数は平均で5回/日、内70%がオスの成獣、角長70cmを超える大物が30%、80cmを超える超大物が5%まで高める事が出来ました。

更に射撃方法も従来の1/10の時間で照準が完了すると言う、独自のスナップショットやアバウト早撃ちと言った射撃法を確立し、また通常は不可能と思われていた走る鹿に命中させる射撃方法も確立しました。更には逃げる鹿が何処に向かうのか分かり、車でその場所まで急行し、待ち伏せも可能になりました。筆者は単独猟ですが、巷の本州鹿猟の平均捕獲率から比較すれば、60倍近い捕獲が可能となります。

筆者が究めた禅の心作戦と比較しても、12倍近い差がありました。その高捕獲率は次の原因によります。鹿の行動を先読みする事でたくさんの鹿に会え、地形的に車で追い掛ける事が出来るので鹿との圧倒的体力差が逆転した事、更に長射程のライフル銃が使える事等で気配勝負ではなく人間の頭脳と射撃技術の複合勝負となる事により、エゾ鹿側圧勝の図式が崩れた事が大きいと思います。
勿論ライフル銃も独自に進化した仕様の物を創り、独自の射撃法も幾つか確立しました。
こうして下から積み上げた技術のお蔭で高い技術を究める事が出来ました。

1時期、まだ未熟だった筆者にタメを張った狩猟友人達がいました。彼らは本格的な手順を踏んでおらず、単なる小手先技術の上手さであって、筆者の未熟時代にはそれなりのライバルでありましたが、間もなく 大差が付き始め、10年もしない内に筆者の1桁以下の存在となりました。何事も基礎が大切なのです。

エゾ鹿猟の魅力は前記の様に桁違いの捕獲と、その中に大物や超大物まで含まれる事にありますが、エゾ鹿猟も巻狩りですと残念ながら全く異なります。本州からのハンターはガイド猟が良いのですが、実は本州 からの遠征者の過半がエゾ鹿の民宿巻狩りに参加しますが、北海道人は自前流し猟を行っています。

一見すると民宿巻狩りは安価に見えますが、こちらはエゾ鹿側の圧勝理論が全く崩れておらず、捕獲の難易度は本州鹿の巻狩りと比べても同~高難度となり、全然お奨めコースではありません。

北海道では猟犬に追われていないエゾ鹿が相手となり、気配先取り合戦が本州鹿猟より1段とエゾ鹿側優位に展開し、「禅の心作戦」に更に徹しない限り、容易に射的内(50m前後)まで引き寄せられません。また本州鹿猟程ではありませんが、社会的経験を多く積んだ大物勝負も期待薄となります。
高難度の巻狩りに対し北海道で主流の流し猟では射程距離が長く、本格的な射撃術が必要になる半面、巻狩りで最も難しい気配勝負が不要になる利点があります。

昨今のエゾ鹿は1年中駆除圧を受けており、巻狩りでも流し猟でも鹿はハンターを上手く避ける方法を学習済です。従いまして本州からの遠征者にはガイド付エゾ鹿猟のみがお奨めコースとなりますが、戦果はガイドの能力次第、出会える能力があればEHG5205の様に平均2頭/日の捕獲、それには0.5頭の大物が含まれますが、そうでなければ捕獲率や大物率が多少下がるのではなく、一気に多分ゼロになります。

昨今は駆除が年中行事となり、獲れるハンターは自前で捕獲した方が儲かり、獲れないハンターがガイドをすると言う社会構造となりました。ガイド選びは経験年数ではなく捕獲実績で選ぶ必要があります。しかし獲れるガイドの代表コースであるEHG5205は残念ながら2019年度が最後と決定しました。スクールの跡継ぎは未定です。







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Posted by little-ken  at 17:45 │ハンティング