2014年12月30日

飛び道具研究家が見た「NHKドラマ 3人のパイロット」

紫電改がヘルキャットやコルセアと戦うシーンが中々に良く出来ていました。
飛び道具研究家を自称する拙者から見ると、どうしてもストーリーよりも飛行シーンに目が行ってしまいますが、紫電改の飛行シーンは良く再現されていました。

1番感心したのは離陸時にプロペラ渦巻き後流の為に機種を5~10度振って斜めに離陸するシーンです。プロペラ単発の飛行機と言うのは構造上プロペラ反力とそのプロペラ渦巻き後流の為に絶対に真っすぐ飛べない飛行機なのです。
飛び道具研究家を自称する拙者も戦闘機型の練習機で飛行訓練を受けましたのでこの感覚は良く分かります。

また上げ舵を取ると飛行機は姿としてはすぐに上を向きますが、実際はかなりオーバーシュートし、上がり始めるまでにはかなり時間が掛かりますが、そう言う上昇シーンもあって涙ものでした。

急旋回時に空戦フラップと言い自動的に開くフラップを出していたのも良く再現されています。
CG制作者はこの辺の飛行特性に付いては理解していた様です。しかしそうなると余計に残念なのが射撃シーンです。

栄光弾が多数飛び交い、薬莢がバラバラで出るシーンは一見すると良く再現されているみたいに見えますが、実際は全くダメ。
何がダメなのか、それはまず発射煙がありません。実際の射撃で1番良く見えるのはこの発射煙です。実射の写真が全てを物語っており、弾道は少なくとも昼間は見えないのです。

機関銃の曳光弾は通常5~6発に1発ですが、光るのは弾の後方だけですから見えるのは射手だけ、昼間は横方向からは全く見えません。
更に言えばWW2の4年目のアメリカ軍は防弾や火災に対する装備が貧弱な日本機の撃墜効率を高めるのに全弾を普通弾に切り替えていますから弾道はますます見えません。
うす暗くなって来ると栄光弾は番組の様に横からでも良く見える様になります。

彼我の銃は下記の様に著しく違うのですが、番組では両者の曳光弾の数も薬莢の数も同じ感触でした。これも非常に残念な項目です。

日本軍の紫電改は発射速度の遅い20mm機銃4丁で合計発射速度は500発/分が4丁で2000発/分です。
アメリカ軍側は速い発射速度の12.7mm期銃が6丁、ヘルキャットやコルセアは800発/分が6丁ですから合計4800発/分、2.5倍近い発射数の違いがありますから一目で違いが分かる筈です。
仮に見えたとして栄光弾の数的には次の様になります。

栄光弾は1km先まで光るとして合計回転速度は4800発/分、計算すると空中に存在するアメリカ機の曳光弾は18発程度で、数的には番組の様な感じになると思います。
それに対して日本機は2000発/分ですから仮に見えたとしたら曳航弾は7発程度、日本機の曳光弾の数は明らかに多過ぎます。
飛び道具研究家が見た「NHKドラマ 3人のパイロット」
  F4Uコルセアの20mm銃4丁の射撃、発射煙は非常に良く見えますが弾道は見えません。
  紫電改の射撃は発射速度が更に1.4倍遅いので発射煙の間隔も同様に伸びます。


飛び道具研究家が見た「NHKドラマ 3人のパイロット」
  F6Fヘルキャットの12.7mm銃6丁の射撃、発射速度が速いので発射煙の間隔が狭く、
  他は同様です。


被弾シーンも良く出来ていたと思いますが、今度はあれ、20mmを4丁時の命中した感触です。
20mmは発射速度も銃の数も少なく、命中するのはほんの数発、但し炸裂弾も半分ほど入っているので当れば爆発し、あんな感じとなり、良く出来ていると思います。

しかし12.7mm 6丁のアメリカ軍機に撃たれますと時間当たりの弾数が2.5倍程ありますので一瞬の比弾でもすぐに10発位が命中します。命中時の音はバケツをまとめてひっくり返した様な感じと言われています。

筆者がもしWW2の戦闘機パイロットだったらですが、筆者は上達が遅くドジですから最初の1年間は相手側のカモになる以外の働きは出来ないと思います。しかしそれを運良く生き残ればきっと3年目には本当に敵を墜とせる数少ない名人級パイロットになれるだろうと思います。

個人的にはマスタングの試作機に20mm4丁を搭載した型がありますが、あのXP51Bにマルコムフードを付けてを愛機にしたいと思っています。
飛び道具研究家が見た「NHKドラマ 3人のパイロット」








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Posted by little-ken  at 16:27 │射撃飛行機&滑空機