2019年08月31日

ショットガンの撃ち方

皆さんのショットガンは当たっていますか?  実は特別の訓練をしない限り、95%は銃の反動に身構えて体が勝手に反応して固くなり、その結果として銃のスイングが止まってしまう引き止まり射撃に陥ります。

これも慣れればソコソコ当たりますが、引き止まり条件が僅かでも違ってくると途端に命中しなくなり、何処を撃っているのか分からなくなってしまう欠点を持っています。
正しい射撃をすれば必然的に2/3前後は命中し、調子の悪い日もそれなりに善戦出来、また更なる上級テクニックも求められます。ここでは正しいショットガンの射撃方法を説明したいと思います。

さて銃は2種類があり、主に50m以内の近距離の動的を撃つショットガンと、主に100m以遠の遠距離の 静的を撃つライフル銃があります。サボットスラグ銃は運用方法からここではライフル銃側に分類されます。

散弾を撃つショットガンは獲物によってその散弾粒の大きさを変えれば、小鳥からヒグマまで国内の全ての獲物と勝負出来ますが、最大射程は50m以内(実質20~30m)に限定されます。ブレネッキ弾等の改良された1粒弾を撃てば80m程度まで、またサボットスラグ銃では120mまでの実用射撃が出来ます。

   ショットガンの最大のメリット
ショットガンのメリットは散弾をバラ撒く事でショットガン効果(複数被弾複次効果)を期待出来る事です。それは3粒以上が命中すると急所でなくてもショック死を起こす事であり、その1粒の必要エネルギーは大丈夫かと思う程小さくても有効弾となる事です。その考え方を利用すればとにかく粒数の多い弾の方が効果大となります。と言って小鳥用の超小粒弾で鹿を撃っても鹿皮を貫通出来ませんから無効弾となり、少なくとも皮下の神経組織まで十分に達するパワーは不可欠です。

我が国の狩猟鳥の最大はカルガモクラスでありますが、狩猟読本による奨励弾は3~4号となっておりますが、ケンさんのカモ類5000羽以上のプロの実績から言いますと直径2.4mm粒が約400個の7.5号弾から最高撃墜率が得られました。また小型鳥のヒヨドリやタシギクラスならば2.0mm粒が約650個の9号装弾、各々32gのStd装弾がベストです。フルチョークと組合せますと50m程度まで有効となります。

ただ小粒弾は弾速の途中低下が著しく、距離の増加に従って比例的にではなく2乗的にリードを大きくして行かないと、パターンが後落してしまいます。正しくパターンを掛けられれば、撃墜率は大幅に向上するのですが、大粒弾を撃っているのと同じ感覚で撃ちますとパターンの端しか掛からず、だから小粒は非力で ダメなんだと言う間違った結論になってしまいます。その結果として装弾の選択は大粒側に移行します。

大粒側に移行するとリードは少なくても命中しますから一見すると当て易くなった感じがしますが、弾粒が少な過ぎてショットガン効果が起こりませんから、良い所に命中した時以外は半矢で飛び去られてしまい ます。そしてこれを見てこれもパワー不足だと言う事で、更なる大粒弾側に移行してしまいます。これが普通のパターンで、ケンさんも初期にはこのパターンに陥りました。

7.5号弾より大粒弾となりますと、6号装弾は2.8㎜が250粒、4号装弾は3.3㎜が150粒、BB装弾は4.6㎜が 僅か55粒、4号バックショットは6.1㎜が27粒となっており、50m射撃ではどの弾をどんなチョークと組合せてもショットガン効果が期待出来る3粒以上の被弾は期待出来ず、著しい総合効率の低下を招きます。
ショットガン効果が期待出来なければ殆ど意味がありませんから、そのクラスの装弾は不要だと言えます。

   ショットガンの欠点
ショットガンはフルチョーク時30mで直径1m弱に広がり、その中央2/3が有効となり、多少狙いがラフでも命中し、また移動的ではそのリード設定が多少ラフでも命中するメリットはありますが、散弾は弾速が遅い ので相当大きなリードを取らないと命中しません。更にベスト効率の小粒弾は空気抵抗による途中弾速低下が著しく、更なるリードの追加を要し、最早ベラボーと言える程の大きなリードで撃つ必要があります。

射程を30m、平均弾速を200m/s、カモ速度は50km/hとすれば、概略計算で2.1m前と言う事になります。抜群に弾が撃てるカモ猟場に3名の新人を案内した事がありますが、1羽を撃墜するのに使った弾は平均で約300発でした。数m前を撃たなければ命中しない事が分かっていても、直径60cmの網を飛ぶ鳥に被せる事はこんなにも難しいのです。それ程までにリードを合わせる事が難しいのがカモの遠射です。
そしてこの難点をカバーする為に、ケンさんは考案しましたのが、後述説明の高速3連射でした。

   鹿用の散弾
散弾装弾の表には10~1号の鳥撃ち装弾、その上がB-BB-BBB、更にその上にA-AA-AAAが一応 あります。更なるその上が獣用のO-OO-OOOとなります。
ゼロではなくオーと読み、OOはダブルオーバックと言います。バックとは鹿の事です。

大粒散弾はAAAでは5.8㎜、OOで8.4㎜粒が9粒、OOOでは9.1㎜粒が6粒、4号バックショットは6.1㎜が 27粒となっており、ショットガン効果を大粒弾側は全く期待出来ませんが、この4号バックだけは期待出来ます。近年はAAAと4号バックの中間に6㎜弱の5号バックとも言われる装弾が追加設定され市販されています。本州鹿の射程距離は20m前後ですから、4~5号バックにチョークはインプシリンダーがベストです。

   散弾銃動的射撃の敵
動的のショットガンと静的のライフル銃の2つは全く性格が違い撃ち方も違う様に思えましたが、やがて動的をライフル銃で狙う様になりますとその撃ち方は共通である事が分かりました。
共通点はフリンチングが共通の敵と言う事でした。ショットガンの移動射撃では大切なスイングが止まって しまいリードが合わなくなってしまい、静的のライフルではそれが照準をずらして発射となってしまい、時には50mで50㎝の的紙に命中しないハンターも珍しくありません。

先の説明時と同条件で飛ぶ鳥に命中させる事を考えてみましょう。射程を30m、平均弾速を200m/s、カモの飛ぶ速度は50km/hとすれば、概略計算で2.1m前と言う事になります。
これに命中させるのは2つの方法があります。1つは2.1m前を狙ったままのスイングを乱す事無くキープしたままで引き金を引くリード射撃と言う方法があります。

2つ目は目標をスイングで追い掛け、追い越した時に引き金を引くスイング射撃です。
追越した時に引き金を引いても、弾が出るまでにはそれなりの反応時間が掛かり、そのオーバースイング量がリードになるのです。結果的にはこの延長でライフル銃のランニング射撃も可能となりました。ライフルによるランニング射撃は150m先を走る鹿に対し、何度も5発5中が出せた程の命中率でした。実際は特別な訓練をしなければ反動に体が勝手に構えてしまい、散弾銃のスイングが止まってしまいます。

スイングが止まってしまえば命中率は激減してしまいます。
これを引止まり射撃と言いますが、散弾銃時は巷の95%以上がフリンチング未対策ですから、間違いなく引止まり射撃になります。ライフル銃でもフリンチングの害は非常に大きく、巷のハンターの95%以上がこれにより勝手に照準がずれた発砲となり、本来のライフル銃の本来の性能は300mの実用性がありますが、これと比較すれば恐ろしく不出来となり、場合によっては50mの実用性すら危うくなります。
旧技能講習で本州ライフル所持者の70%以上が不合格だった原因もここにありました。

勿論先のリード射撃に於いても本来のリードは2.1mですが、引止まり射撃で同じリードでは絶対に命中しません。引止まり射撃で命中させられる場合は引止まり分だけのリードを更に増さなければ命中しません。銃のスイングが止まった僅かな時間と言うのは不明ですが、獲物は14m/sで移動しますから、その追加リードも結構大きな量になります。慣れれば引止まり射撃でも、調子が良ければかなり命中させられますが、好不調の波が大きい、これが巷の一般のハンターの特徴です。

   5継続スイングの練習
引止まりは反動によって起りますから反動のある実射練習を控えます。素振りとイメージトレーニングを組合せて体に射撃とは反動を伴わないと言う事を実射の千~万倍の回数で体に教え込んでやります。次いでに6項のリード不足対策の高速3連射の練習を1部兼ねますが、敷居の線とか天井の線に沿って、スナップスイングをしながらスイングを止める事無く、引き金を出来るだけ速く3回引きます。
色々な方向から遠ざかる場合は近寄ってくる場合や、横切れの場合等々を想定し素振りを繰り返します。

これが板に着くまで実射はしません。そんなに実射をしなくても大丈夫なのか? 
ハイ、絶対に大丈夫です。ケンさんはその当時まだ貧乏で射撃場に行くお金がありませんでした。それでひたすら素振りとイメージトレーニングを9か月間繰り返し、来るべき11/15の解禁日に備えました。射撃場は1度も行かず、この繰返しだけで数年後には近隣の誰にも負けないプロのカモ猟ハンターになれました。実射する時はイメージトレーニングを思い出しながら、実射を行なわないと反動によるフリンチングがすぐにブリ返します。

   リード不足対策の決め手は高速3連射
前にも書きましたが、射程を30m、平均弾速を200m/s、鴨の速度は50km/hの相対角度90度の横切れとすれば、リード量は概略計算で2.1m前と言う事になります。
スイングを止めずに2.1m前を撃てば命中します。

ところが実戦では相手までの距離や目標の速度も全て目測ですから軽く見て20%以上多めに見て±2倍前後の誤差が含まれ、更に相対角度の問題があり、弾速も距離に対して2乗的に遅くなり、特に距離が遠くなりますとリードの設定は直径60cmのネットを1発で掛ける事は絶望的に難しくなります。しかしそれでもパターンをまともに掛ける事が出来れば十分に撃墜可能です。

ショットガンは3連発が可能ですが、普通の連射ではその間に飛行データが変わってしまい、その都度リードを考え直さなければなりません。結果として普通の3連発ではとてもカバー出来ず、俗に言われているのは1箱25発を撃って1羽撃墜 出来れば、悪くないと言われております。
初期にはケンさんもそんな程度でしたが、これを大幅に高める方法はないのか?  
ケンさんは考えました。そして考えたのが次に説明する高速3連射です。

カモの飛行線上に連続して3つのショットコロンを置き、そこにカモを飛び込ませ様と言う作戦です。
通常はパターンだけを言いますが、着弾の結果がパターンであり、実際の散弾群は直径1m強、長さ2~3mとなって飛行しているのであり、その集団をショットコロンと言います。

平面的なパターンだけで言えば直径1mの内の中央の60cmが有効ですが、3発を少しずつダブらせて、80cm間隔で撃ちますと、通常はパターンが薄くなって有効でない部分も2発合わせれば有効側となり、長さが220cmにも及ぶ幅広の有効パターン群が得られます。
通常は直径60cmの網をカモに被せ様としておりますが、これが220cmの細長い網になったのですから、有効度は丸々3.7倍になった計算になります。

この高速3連射をマスターしてから、ケンさんの撃墜率は約3倍に向上しました。
更にこの3連射を群に対して掛け方を工夫しますと1回の3連射から3羽前後が撃墜出来る様になりました。
命中率が3倍になり、更に3倍の撃墜数が可能になった訳ですから、総合的には9倍の効率がアップした事になります。高速3連射の技は更に留まる事を知らず、最終的には近距離の一斉飛び立ちの中から、希望する良い獲物だけ3羽を選んで撃墜出来る様にもなりました。

   高速3連射の反動対策
銃身は上部にあり、反動を受ける部分は10cm程下方ですから、撃てば反動で銃身が跳ね上がって当然です。反動その物は無くなりませんから、これの受け方と言うか受け流し方を工夫しなければなりません。秘訣は跳ね上がりを防止する部分と受け流し方の部分に分かれますが、跳ね上がり防止法は非常に簡単です。跳ね上がるタイミングに合わせて先台を持つ手を下側に引っ張って跳ね上がりを相殺させます。
スムーズなスイングをキープしながら、そうなる様にイメージトレーニングを繰り返します。

次に反動の受け流し方ですが、基本的には膝を少し曲げた姿勢で肩幅より多少広い前後のスタンスで、発射直前には体重の80~90%は前足に掛けた状態からスタートし、3発目射撃終了後にはその殆どが後足に移っています。1歩前に踏み出しながらスナップスイングショットで1発目を撃ち、体の前進パワーはここで止まります。以後はスイングの軸線をキープしたまま、スイングを継続しながら、撃つ都度に自然に上半身全体が自然に後退し、体の重心が後ろ足側に移って行くイメージトレーニングを繰り返します。

イメージが完成すれば、任意の軸線に沿った高速3連射が完全に出来る様になります。
これで命中率は3倍に向上し、更に色々を工夫すると更に3倍を撃墜出来る様になります。
ケンさんはそれが出来る様になったおかげで、カモ撃ちのプロになる事が出来ました。

   決め手のベースは「スナップショット」
順番が少しずれましたが、基本中の基本はスナップショットです。これが出来なければ全てが始まりません。スナップショットは肩に銃を付けてから速やかに撃つテクニックと初期には考えていましたが、それは間違いでした。またスキート射撃の様に最終フォームの肩に銃を滑り込ませるのでもありません。スキート射撃は実戦向きな感じを受けますが、スキート競技は実戦には全く役に立ちません。

正しいスナップショットは次の通りです。
発砲を決意したら体全体が一瞬で最終フォームに移行します。銃は銃身で指差す様に指向し、安全装置を外しながらホッペをかすめる様に肩に真っすぐ引き寄せます。眼は既に先に最終位置に来ておりますから、銃が肩に着く前からリブを通して目標が確認出来ます。

つまり肩に銃が着く前から基本照準がすでに完成しており、肩付け前に撃っても命中します。
標的が動いていれば、体が先に追尾を開始しており、そこに銃が入りますので、いきなりスイング射撃が可能となります。これが正しいスナップショットであり、スナップスイングであります。
前提条件は正しく調整されたストックと、十分な回数のトレーニングです。

スナップショットのトレーニングはひたすら素振りです。まずは最終フォームを体に覚え込ませます。
そこから銃を外し、再度銃身による指向から、肩に向けてまっすぐに銃を引き寄せ、再度フォームを完成させます。これをヒマさえあれば練習し、3000回程やりますと多少サマになって来ます。
3万回程行いますと概ね完成ですが、100回/日で300日、約1年で完成します。
色々な方向にも対応出来る様にし、次いで動的にも対応出来る様にします。約3年で全てが完成します。

尚、正しいスナップショットは西部劇の早撃ち並で撃っても、チャンと矢先の安全確認をし、目標に正しく銃を向けて照準をしておりますから 失中する事も事故る事もありません。
これが出来る事は一生の財産となりますから、手抜きする事無くトレーニングに励んで下さい。
そしてこれが全ての実戦射撃の基本となります。スナップショットを手抜きすれば、その後の上級練習も真の上達は出来ません。それ程までに重要な技術であり、ライフル射撃でもその重要度は変わりません。

鳥撃ちとエゾ鹿撃ちはどちらが難しいか?  圧倒的に難度が高いのは鳥撃ちでした。
スクールに於きましても積雪初期頃にはエゾ雷鳥やマガモの渡りに会う事がよくあります。これを撃ち獲ろうと多くの生徒(エゾ鹿累計20頭前後)が散弾銃を持ち込み挑戦しましたが、唯の1人も成功しておりません。

エゾ雷鳥猟やマガモ猟に成功したのは基礎の出来ているケンさんだけだったのです。
ケンさんの知る限り、本物の名人はライフルもショットガンも両法が上手いハンターでした。
また小物猟との楽しさの比較に付きましても、甲乙は付け難いと思います。ケンさんも鳥撃ちは大好きです。

   正しいストックの調整
ストックには長さを始めとする色々な調整項目がありますが、最も重要なのはホッペの当たり具合です。言葉を変えればリブの延長線上に正しく目が来る様にすれば良いのです。
ショットガンの撃ち方
写真はNZのカナダガン猟です。9発から7羽の捕獲と驚異的撃墜率を出す事が出来ましたが、秘密はストックに張ったガムテープにあります。
ショットガンの撃ち方
写真のNZダック猟時も黒いテープで同様に調整しています。左右的にも上下的にも僅か2mm程度の物ですが、これで正しく目がリブの延長線上に来る様になり、1日を通して1.8発/羽と言う高命中率を出す事が出来ました。レミントンは大柄なアメリカ人用にストックが設定されているので日本人には再調整が必要なのです。

よく調整されたレミントン11-87はきっと良い結果をもたらしてくれる事でしょう。
引き止まり射撃で大粒弾を適当に前を撃っても多少なら墜ちますが、より楽しみたいなら上級射撃に移行出来る様に正しいショットガン射撃をマスターし直されたら如何でしょう。

1970年当時はケンさんの月給が3万円時にカモは1000円弱/羽で売れました。
キジやマガモのオスは3000円/羽で売れました。
毎朝定数8羽で5000~10000円になり、これで随分旅行に行けました。
なお聞いた話ですが本州鹿は3~5万円/頭、猪は5~10万円/頭と聞きました。
その昔はもっと高かったと言います。






同じカテゴリー(ハンティング)の記事画像
50年間で分かった事、その3、マグナム効果は皆無だった。
50年間で分かった事、その1。
白糠のメス特別解禁。1994年。
新射撃法のメリット。
全ての射撃のベースとなる正しい「スナップショット」
ボウハンティング狩猟法。
同じカテゴリー(ハンティング)の記事
 50年間で分かった事、その3、マグナム効果は皆無だった。 (2024-05-02 09:58)
 50年間で分かった事、その1。 (2024-04-22 17:19)
 50年間で分かった事。 (2024-04-20 17:31)
 白糠のメス特別解禁。1994年。 (2024-04-14 08:46)
 新射撃法のメリット。 (2024-03-28 15:42)
 全ての射撃のベースとなる正しい「スナップショット」 (2024-03-19 09:50)

Posted by little-ken  at 15:55 │ハンティング射撃