2020年09月04日

何故銃は当たらないのか?

   ショットガンの場合
 1-1.引き止まり射撃:散弾銃は散弾をバラ撒きますから、後述の間違った引き止まり射法でも慣れれば 低命中率ながらある程度の成果が出せます。実は95%のハンターがこのタイプですが、イージチャンスならそこそこ獲れるので、それに甘えて本格的なトレーニングをしないのが現状です。

散弾銃で撃つ標的は殆んどの場合が動的です。目に入ってくる映像はリアルタイムですが、脳が判断する にはそれなりの時間を要します。従って目に入る映像は古い虚像であり、実体の無い虚像を撃っても当たる筈がありません。実体は肉眼では見えませんが、すでにもっと進んだ位置にいます。
詳しくは2-3項を参照して下さい。これはライフル銃で動的を狙う場合も全く同じです。

但しリード射法では正しく銃を構えて正しく追尾を続けていれば、銃の向いている方向と、実体の相対位置関係は保たれており、これに下記のリードを加えれば命中します。弾の飛行時間分(0.1~0.2秒程度)に目標が移動する1~2mがリードとなります。脳が撃つ指令を出しても、体がそれに反応するにはそれなりの時間が掛かります。従って引き金を引く決断をしても、実際に弾が出るまでには更にそれなりの時間が必要です。

基本的には見えているので当て易い射法ですが、完全に銃口から弾が出終わるまで、スイングを止めずに銃の向いている方向と実体の相対位置関係を保たなければ、命中条件を満たしません。
ところが引き金を引く決意と共に、体が反動を受け様と勝手に力が入り、銃のスイングが止まってしまいます。その結果、相対位置関係が著しく崩れて失中となります。これを引き止まり射法と言い、間違った射法です。

そしてその失中の対策としてリードを少しずつ追加して行きますと、予定よりかなり大幅なリードになりますが、やがて命中します。そして以後もその学習結果をベースに動的射撃(狩猟)が行われますが、残念ながら95%以上この引き止まり射法の範疇に入ります。引き止まり射法では低命中率に留まるのが普通です。ライフル銃の場合はマグレも期待出来ない程のダメ元射撃になります。

 1-2.照準:散弾銃には照準器が無く、銃身の上にあるリブが照準器の役目をします。
従いまして目はこのリブの延長線上に正しく配置しなければならず、その為には銃床の形状合わせが必要になります。人間の体格はマチマチであり、散弾銃は本来オーダーメイドである必要があります。
最近の銃ではクレー射撃用で部分的或いは全項目をアジャスト出来る様になっている銃もあります。
何故銃は当たらないのか?何故銃は当たらないのか?

ストックの調整を自分の体格に合わせ、素速く構えてリブが正しく目の前に来る様にするのは大前提ですが、それを利用する早撃ちがスナップショットになります。
初期の頃はケンさんは間違って、正しく銃を肩に着けてから、素速く狙うと考えていましたが、正しくは次の様になります。

左腕を伸ばし、銃口を正しく指で指向する様に目標に指向しながら、体全体を最終発砲状態に移行し、銃はホッペをかすめて真っ直ぐに肩に引き寄せます。
こうしますと銃が肩に着く前にリブを通して目標が見え、その時点でもう命中要件を満たしており、撃つ事が出来ます。この肩に付く前に照準が完了する、これがスナップショットであり、実戦で最も役に立つ技術です。

しかし通常のハンターはこのスナップショットや後述のスナップスイングショットを理解しておらず、その技術を持っていません。その射撃法の違いによる成果の例として、我が地区の駆除チームは参加10名余でしたが、ケンさんの単独撃墜数はしばしば全体の過半を超えていました。駆除チームはケンさん引退後、飛鳥に対応出来るメンバーが皆無となり、成果を全く上げられないと言う情けない状態になりました。

銃が他の武器に比べて圧倒的に優れているのは、この調整されたストックのお陰で、西部劇の早撃ち並みのスナップショットで命中させられる点です。しかし95%のハンターがこのスナップショットの恩恵を受けておらず、また日本の火縄銃もこの優れた特性のストックを使わなかったのですから非常に勿体ない話です。

 1-3.引き止まり防止とスナップスイング射撃:目標が動いている時はスナップスイング射撃になりますが、 銃身で指向する時からすでに全身で追尾は始まっており、最終フォームに移行する体も勿論その範疇です。その状態のまま、銃を肩に引き寄せながらスイングを加速し、目標を追い越したタイミングで引き金を引く、これがスナップスイングショットです。
この様に肩に着く前に撃てばスイングが止まる事は絶対にありません。

それとは別の練習ですが、仮想飛行ラインに向けてスナップスイングしながら、3回引き金を出来るだけ速く引く素振りをします。行動が板に付くまでしっかりやりますと、引き止まり射撃から必ず脱却出来、同時に高速3連射もマスター出来ます。

スナップスイング+高速3連射、これが散弾銃の最大のメリットとなり、これで捕獲量は必ず10倍になります。体全体と銃で目標を指向&追尾、そしてそのまま肩に引き寄せながら、スイングを加速し、追い越した時点で引き金を引く、このスナップスイング射撃が正しいショットガン射撃の手法です。

反動を受け流す方法は体全体の力を抜き、しなやかな上半身を主体に反動を逃がします。
初弾発射直前には前足80%重心ですが、3弾発射後は後ろ足80%重心になっています。銃が跳ね上がらない様にするのは左手の役目で、下から引っ張ります。

反動を予測して受け様とするのがショットガン射撃ですが、ライフル射撃ではそれを全く行なわず、余計な力を全て排除し、銃だけに撃たせる様にします。

   ライフル銃の場合
 2-1.静的の場合:市販銃には150mでワンホール崩れ程度の能力があります。
このワンホールを出す為の射撃技術と言うのは実はなく、銃だけに撃たせれば自動的に出るモノなのです。しいて言えばブレる照準の中でどのタイミングで引き金を落とすかと言う「引き金術」が多少ある程度です。

ライフル銃不要の距離なのが特徴で、その為に真面目にライフル銃を撃つ練習をしていない人が殆どです。銃だけに撃たせればワンホールなのですが、未熟な場合は大きな的紙に当たらない事も珍しくはありません。

その原因は発砲の決意と共に銃の反動の受ける為に体に勝手に力が入り、その為に銃の照準がずれ、その頃に弾が出るからです。従ってライフル銃はなるべく人の手に関わらずに撃たせなくては当たりません。

半依託テーブル撃ちの場合、正しい撃ち方は次の様になります。
先台担当の左手は発砲時に銃を落とさない程度に手を添えるだけとします。
これが「持たず」になります。

グリップを握る右手は引き金を引く時に銃がブレる事を防ぐ為、薬指と小指だけでグリップを軽く握ります。中指は人差し指に連動しているのが原因で、中指には休んで戴く、これが「握らず」になります。

引き金は最低限の力とストロークで「そっと」ですが、「一気にガク引き」します。これが「引かず」になります。

ストックは肩に当てず僅かに浮かす又は極軽く当てる程度にします。これが「当てず」になります。

「持たず」「握らず」「引かず」「当てず」 これが銃だけに撃たせるコツと言えます。
これで相当な成果が出せると思います。

 2-2.全依託射撃:300m遠射にも使える銃に撃たせるテクニックで、ワンホールと300m遠射の達成の最短距離となります。銃の先台はサンドバッグやリュックの上に置き、空いた左手はバッドエンドを持ち、肩には全く当てずに数cm浮かして照準微調整を担当します。銃のグリップも条件が許せば握る必要はありません。引き金はトリガーガードとトリガーの間を撮む様に引く事もいけなくはありません。

これらは射撃場の実射からは絶対に達成出来ない技術であり、練習は反動の発生しないドライファイアーが有効です。体を車体側面で固定するボンネット射撃や、伏せ撃ちの地面等で体側と銃側の両方を上手く固定 出来ますと照準ブレは殆ど無くなり、300m遠射は命中して当然と思える様になります。

 2-3.ウォーキングショット:ゆっくり歩いている鹿に向けて撃つ事を想定しますと、鹿の移動速度を3.6km/hとすれば秒速では1mです。
それに対し弾の飛行時間は0.1秒程度、その間の鹿の移動距離は僅か10㎝程度、ならば急所の隣付近に着弾する筈で、その場には倒れませんが約30秒で死に至ります。
所が実際は大違いの結果であり、例外なくケツの僅か後方に着弾、極稀にケツをかすめる程度です。 

なぜこの様な事になるのか? それは映像を認識する時間、脳が撃てと指令を出すまでの時間、指令から弾が出るまでの時間、弾の飛行時間、これらの合計が「約1秒を要する」と言うのが、結果からの逆算です。

従って1m前を撃てば命中する事になり、少し前方に固定照準して待ち、間もなく入るタイミングで引き金を引けばこれも命中しますが、入った事を確認して撃ちますとケツの僅か後方の着弾となります。

と言う事は見えている事象は、動的ハンターに取って全て1秒前の虚像であると言う事です。ヨチヨチ歩きの子供にボールを投げますと明らかにボールが通り過ぎてから捉まえ様としますが、あれが本来の姿なのです。

年齢を重ねて行く内に自然に先を読める様になってボールはキャッチ出来る様になりますが、銃も弾着時の先を読める様にしなければ命中させられません。ケンさんはエゾ鹿に2000発を発射し、これが分かりました。

 2-4.スナップショットとスナップスイングショット:ライフルの精密照準は相当長目の時間が必要だと思われており、近距離の素速い照準はスコープの視野の狭さから不可能と思われていました。
しかし多少練習すれば、スコープ専用銃の近距離スナップショットはすぐに得意項目側に変わります。

西部劇並の早撃ちで命中させる事が可能となり、他の射法に於いてもスコープに目標を捉えるまでの時間は従来射撃法の1/10以下に短縮され、照準時間全体を著しく短縮する事が可能です。
ライフル銃のスナップショットもスナップスイングショットもショットガンの場合と全く同じ射法です。

但しライフルはパターンでカバー出来ませんからラフな照準では意味がなく、ショットガンの時よりももう少し精度を上げた指向が必要になりますが、考え方は全く同じです。
静止の近距離であれば銃身で指向し、引き寄せながらスコープから映像が得られた時点で撃てば命中し、移動的の場合は追尾後にスイングを加速し、追い越す時に引き金を引けば命中します。

弾の飛行時間を0.1秒とすれば、その間の鹿の移動距離は1m程度ですから、1m前を狙った継続スイングのままで撃てば鹿に命中しますが、銃を止めて通常照準で狙えば10m以上も前を走っている事になります。肝心な事はその時の鹿は絶対に肉眼では見えない事です。

移動標的を撃つ場合の見えているのは虚像ですから、虚像を狙って撃っても実体はそこに無いのですから絶対に命中する筈がありません。
走る鹿を撃つには「肉眼で照準して撃つ」と言う考えを捨てなければなりません。

 2-5.危険なライフル銃のリード射撃:リード射撃は相対位置関係を保ったままでスイングを続けますので、動的に対して肉眼でリードを確認しながら撃つ事が可能です。それは大きなメリットと言えますが、しかしその時の状況は、強度の視野狭窄症に陥った状態で鹿を追尾しており、銃の方向が危険領域まで及んでも本人には全く分かりません。

つまり流れ弾事故や誤射事故は単に確率だけの問題となります。
ライフルやバックショットの流れ弾は大被害です。
大物猟でのリード射撃は絶対に使わない様にお願い致します。

その点で似た様な事をしているケンさんのスナップスイング射撃ですが、発砲を決意してから一瞬で撃ちますので直前まで安全確認が出来、危険領域に銃口を向ける事はあり得ません。
昔の地元害鳥駆除時の話です。ケンさんは必要であれば電線の間からスナップスイングで墜とす事が出来ましたので、被害を受けている人からの依頼があれば、電線や民家の近くでも撃っていました。スナップスイング射撃ですから事故は起こさなかった事は言うまでもありません。

それを通常のスイング引き止まり射撃の他の駆除要員が真似をするので、相当数の電線切断事故や流れ弾事故が起こりました。当初は駆除中と言う事で送検は見送られており、反省や再発防止が図られなかった為、ケンさんを除く、概ね全員が事故を起こしました。

結果としてスイング中に危険領域が判断出来る人は皆無、やがて余りの数の多さに行政も堪忍袋の緒が切れ、事故を起こせば送検、銃を強制卒業された駆除員も多数出ました。この事実を見ますと駆除要員はスナップスイング射撃を特別に教育する必要性を強く感じました。

 2-6.銃はなぜ危ないのか?:一般のハンターは銃の装填にはそれなりの時間が必要であり、安全装置の解除にもそれなりの時間が必要であると思われており、実弾装填済且つ安全装置解済の状態で実際の渉猟が行われます。従って一触即発で暴発事故が起こると言うより、暴発は起こらない筈が無いと言えます。

そして全員が俺は暴発事故など起こす筈が無いと思い込んでおり、車に戻っても脱砲確認を行わないのが普通で、車内での暴発事故も数年毎に10名余のメンバーの誰かが暴発事故を起こしていました。初期のスクールでも概ね同率でした。

銃には何時も安全装置を掛け、装填と安全解除は発砲の直前に行い、発砲の可能性が無くなったら直ちに脱砲をする、これが原則なのですが、全く守られていない、これが現状です。

銃を構える時に安全装置を解除する事は可能か? 
答えは楽勝可能であり、その為の時間は不要です。

銃を構える時に装填は可能か? 
これも楽勝可能であり、その為の必要時間は甚だ僅かです。
これらの装填&安全解除は僅か数カ月の練習で身に付けられますから、絶対に行うべきと言えます。

原則通りの扱いをしたら捕獲量が激減するのか? 
その様な事は無く、中期以後のスクールでは原則通りの銃の取り扱いを義務付けました所、暴発事故は皆無となり、驚いた事に捕獲率は2倍に向上しました。

こんな事例もありました。装填済&安全解除済の通常ハンターと、未装填で安全装置の掛けたケンさんと早撃ち比べをしますと、ケンさんの方が圧倒的に速く、且つ圧倒的高命中率と言う結果が得られました。練習次第で楽勝大幅逆転が可能だったのですから、事故を減少させるのは指導と練習次第と言えました。

大日本帝国時代からの銃の取り扱い思想も間違っていました。38式歩兵銃はボルトのリヤエンドを手の掌で強く押しながら、90度廻さないと安全装置の解除が出来ません。これでは咄嗟の場合にすぐに外せないので事前解除が当たり前になりました。
現在の猟銃は全て欧米式で、咄嗟の場合に安全解除しながら銃を構えられる様になっております。
何故銃は当たらないのか?
何故銃は当たらないのか?

しかし日本で教わる内容は安全装置を過信してはいけないとだけであり、なるべく常時安全装置を掛けなさいとは一言も教育されていません。狩猟事故の分析では事前装填&事前安全解除を辞め、スナップショットを マスターすれば事故の90%以上を減少させられます。安全装置だけでも掛けておけば暴発事故を99%防止出来ます。この点では日本の銃行政を非常に残念に思います。

 2-7.上達には正しい指導と少々時間が必要です:バレーボールの話で恐縮ですが、上半身発達障害且つ スポーツ音痴且つ規格外反射神経0.7秒の鈍さと不利の塊だったケンさんは、運動会は何時もダントツのビリ、腕立ても懸垂も腹筋もゼロ回、スポーツは全て大嫌いでした。

名前だけ所属のつもりで当時は筆頭マイナーのバレーボール部に入部、知らなかったのですが、そこは名門クラブでした。一刻も早く辞めたかったのですが、通りの良い理由が中々見付けられず、結局は10倍の難関を乗り越えて卒業を迎える事になってしまいました。

上級バレーボールの末端のインターハイ等に参加出来ましたが、その特別な技術や体力は思ったよりも早く、不利の塊りからでも僅か1.5年間(累計543日、3800時間)で身に付きました。
ケンさんはこの名門バレー部からスーパー体力と諦めない根性を得まして、更にどうしたら一流になれるかと言う事をから学びました。

従って通常の同好会的バレーボール部とは基礎訓練の量が1桁違いますから、市民大会如きで負ける筈がありません。仕事や狩猟もそう言う考えで構成されていますから、一般人はライバルではありません。

ケンさんは中学生までは、我儘で体力不足で屁理屈の塊の、地元でも有名なダメ息子でしたが、名門クラブのお陰で、狩猟だけではなく仕事でも大きな成果を上げる事が出来、自慢の息子と言われる様になれました。

これには正しい指導を受けなければ育たず、又それなりの期間を要します。
「不可能への挑戦」と「石の上にも3年」がケンさんの座右の銘ですが、仕事も狩猟もどんな不可能項目も3年間頑張るつもりでいれば、経験的に1~2年で不可能が必ず可能側に変わります。

おかげ様でスポーツ人生の底辺から上級までを体験したケンさんは、そんな指導者としては最適任だと自負しております。

ケンさんは考えながら試行錯誤した為にかなりの時間を要しましたが、その結果は「狩猟大全集」に纏められており、とにかくそれに従ってやって見て3年続けさえすれば、必ず大きな効果が得られます。

上手くなって周囲の猟仲間や仕事仲間の鼻を明かしてやろうではありませんか。






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Posted by little-ken  at 16:35 │射撃