2019年01月03日

究極の射撃技術&狩猟技術。

先回のレポートで究極の銃には辿り着く事が出来ました。
筆者は命中率さえ優れていれば、永らく究極の銃はオートではないかと考えておりましたが、それは間違いでした。

そして狩猟形態が変われば、その究極とする所は少し変わるかも知れない、筆者も当初はその究極の銃はそれぞれの用途毎にあると思っておりました。
少なくともヒグマ用には専用マグナム銃が必要と考えておりました。

しかしそれは間違っており、308は先回レポートのサコー75改の達成レポートの様に、予想以上に万能で高性能であり、且つボルトアクション銃は予想以上の万能銃でした。
ならば1つの銃を全ての用途に使いこなした方が遥かに高効率が出せる事が分かりました。

ではその銃さえあれば、誰でも高パフォーマンスを発揮出来るのかと言えば、残念ながらそうではありません。これから紹介する射撃技術と狩猟技術がなければ、銃は只の飾りにしか過ぎません。
その射撃と狩猟の技術は容易に得られない物もありますが、地道に積み上げていけば、必ず到達する物と筆者は信じております。

究極の銃は308のボルトアクションのスコープ専用銃だと申し上げましたが、本州巻狩りの様に射程距離を50m未満に限定すれば、リブ銃身のフルチョークのセミオート散弾銃から発射する小粒バックショットに全く敵いません。また射撃距離を更に短縮限定すれば、ベストチョークも変わって来ます。
ここでは50mを超える射撃が多いと言う前提でお話を続けます。

究極の射撃法 : その1 : ランニング射撃
連射ロマンとは言葉を変えますとランニング射撃技術の事を指します。
ライフル弾は速いので、リード射撃なら一口に言って100mに対して1m前を狙い続けて撃てば、胴体位なら簡単に命中させられます。それはショットガンと同じ撃ち方に近いと言えますが、10%以下しか出来ないと言われる正しいショットガン射撃が不可欠となります。

ライフル弾は急所に命中させなければ意味がありませんが、それには正しいリードが必要となり、それには距離と獲物の速度と相対角度のデータが必要となりますが、それらを瞬時に正しく計測する事は不可能です。正しいリードで撃たなければ急所に命中しない、これがリード射撃の欠点ですが、そこで筆者が考えたのがスイング射撃です。

究極の射撃技術&狩猟技術。
獲物を追尾し、その後スイングを加速し、追い越した所で撃つと言う単純で簡単な一律的射撃方法です。詳しい説明は省きますが、距離や速度に概ね無関係に予想外に上手く行く射撃です。
唯この射法は肉眼で見えている映像が古い虚像である事を理解する頭の切り替えが必要で、最後の引き金を引く時に見ないままで撃つ事が絶対前提条件となります。数ある射撃にはそれぞれの究極がありますが、筆者が得る事が出来た「スイング射撃」もこの究極射撃術の1つだと思います。

究極の射撃法 : その 2 : 遠射
「遠射」とは遠くの目標に命中させる技術です。ライフル銃その物は308の150grの弾頭の場合は、300m先になりますと空気の抵抗で弾速は65%程度まで減速し、銃口延長線からは約90cmの落下をします。
しかし実際は弾を少し上向きに弾を発射する為に300m先では35cm程の落下に留まります。急所の大きさは直径15cmですから、150mで7.5cmなら当たる事になり、それを超える精度を出せる腕があれば、そして落差を合わせれば300mの遠射は難しくない事になります。

銃自体は150mで2.5cm程度に命中する能力を持っており、ならば余裕率3倍で楽勝300mは当てられる事になりますが、実際は遥かに至難の技となります。精度が出せない最大の原因はフリンチングと言いますが、人間の体が反動を嫌い無意識に発射直前に強張り、その為に照準がずれてしまう事にあります。
反動は原理的に無くなりませんから、銃口から弾が出るまでの僅かな時間に、銃が微動もしない様な訓練を繰り返す事が必要になりますが、これは殆んどが家で行うトレーニングですから誰でも出来る様になります。

究極の射撃技術&狩猟技術。
筆者の場合、反動を克服するのに12年程掛かり、やっと150mでワンホールと言える12mmが出せました。ならばもうそれ以後の300mの15cmは6倍の余裕率で楽勝の筈ですが、その頃はまだマグレ以外に300mを命中させる事は出来ませんでした。
その原因は心に距離に対する不安や落差補正に対する不安があったからでした。この不安を払拭するには更に4年程掛かりました。これは実戦のみしか磨けない技術です。

単位を年で表しましたが、筆者はこの頃には年間30日前後の出猟でした。通常の本州からのハンターですとシーズンに3日程度しか実戦経験を積めませんから、達成は特別な練習方法を開発しない限り、絶望的な 難度となります。
出来る様になってから申せば、銃は人間がなるべく関与しない様に銃だけに撃たせる様にし、雑念なしに射撃する様にすれば当たります。言葉を換えれば命中して当然と言う射撃をすれば当たります。これが究極の射撃術の1つである「遠射」と言う技術です。

究極の射撃法 : その3 : 早撃ち50mのスナップショット
ライフル銃の精度は良いのですが、精密な照準を要し、通常的な 手法で行きますと多少慣れた人でも発射まで10秒以上を要します。保護区の野性動物でも50mで10秒以上の時間がもらえる確率はゼロに近いと思われます。

これを西部劇の早撃ちの様に構えるや否やで撃つ技術をスナップショットと言います。左写真がその始めと終りの写真2枚を重ねた物ですが、ボルトオープンでセーフティーONの銃を、ボルトを装填しながら指で試行する様に銃身を目標に向けて突き出し、この時の精度が概ね照準精度になり、距離が非常に近ければそのまま撃っても命中します。

究極の射撃技術&狩猟技術。
そしてセーフティーを解除しながら肩にまっすぐ引き寄せて撃つ技術ですが、2枚の写真を重ねますと頭や体の位置が殆んど変わっておりません。つまり発砲を決意した瞬間に体は最終形状に移行し、そこに銃が嵌まり込む様な形になります。更に言えば心にそのつもりがあれば、肩に銃が着く前にもうスコープを通して不完全ながら急所付近の映像が飛び込んで来ますので、肩に着く前から撃っても必ず命中します。
これが究極の射撃術の1つである「スナップショット」です。

この技術は単に早撃ちの為だけの技術ではなく、銃は早く構えられるに越した事はありませんから、全ての射撃の基本技術となります。そして他の技術と違って家で特訓すれば数カ月で必ずモノに出来る技術です。
装填しながら安全装置を解除しながら行っても総時間は変わらず、安全度は100%増しながら、通常の照準時間の1/10以下で収まるスーパー射撃術です。ぜひ自分のモノにして下さい。

究極の射撃法 : その4 : 150mアバウト照準早撃ち
昨今のエゾ鹿は1年中駆除の圧力を受けており、150m前後に多くおりますが、銃を向けると数秒で動く鹿が多くなりました。撃たれる事が分かっているのに、なぜライフル銃の射程距離内の150mに居るのか?
それは150m射撃が通常の射撃技術ではかなり難しい側に入り、そこにいるだけでもそれ程は当たらないのですが、更に銃を向けられたら数秒で動けば照準が定まらず撃たれない、或いは撃たれても絶対に当たらない事を学習した為です。つまり通常射撃術ではこれを撃ち獲る事は困難な時代になったと言えます。

しかしこれを撃ち獲る射撃術はあるのです。それにはその2で紹介したワンホールの技術と、その3で紹介したスナップショットの技術が必要です。150mでワンホールを出す為には銃だけに撃たせる技術が必要であり、精密照準も必要で時間もそれなりに必要です。しかし150mで20mm程度の射撃術があれば急所は150mmと桁違いに大きく、アバウト照準で早撃ちしても十分に命中させられます。

つまりスナップショットで瞬時に銃を構え、アバウト照準で早撃ちすれば銃を向けてから数秒で撃て、鹿が動き出す前に撃ち獲る事が可能になります。通常は難しいと言われる領域の150m射撃も、スナップアバウト照準をすれば150m射撃は近射のイージーショット側に分類変更出来る様になるのです。これが究極射撃術の1つ「150mアバウト照準早撃ち」です。

究極の狩猟 : 「迫力負け」と「恐怖負け」そして「出会い術
近射50m前後なら「スナップショット」、中距離150m前後なら「アバウト照準早撃ち」、そして走っていれば「ランニング射撃」、遠ければ「遠射」、この4種の究極の射撃術を持ち、究極の静バランスと動バランスの両方を満足するボルトアクション銃を持てば、無敵の狩猟が出来る様に思えますが、まだそれだけでは無敵の狩猟は出来ません。

それは本州では起り難いのですが、エゾ鹿猟では獲物が大物となりますと、射手より大きい事から対戦する前にその大きさに「迫力負け」してしまい、足が地に着かない射撃になってしまいます。
迫力負けは初期には3段角であるだけで起こりますが、数が多い中型までは実戦で回数をこなせば自動的に乗り越えられますが、稀にしか会えない超大物クラスには特殊なイメージトレーニングが必要になります。
これを乗り越えない限り、ハンターの悲願であるエゾ鹿の大物は永久に捕獲出来ないのです。

同様に相手がヒグマの様な猛獣となりますと対戦する前から「恐怖負け」てしまい」、体が動かなくなったり、或いは足が地に着かないを遙かに超えた気狂いに刃物的なハチャメチャ射撃となってしまいます。これも出会い数が少な過ぎて実戦で腕を磨く事は出来ませんから、特殊なイメージトレーニングが必要になります。筆者はおかげ様で450kgのヒグマを始めとし、6戦6勝を記録させてもらえました。

この様にエゾ鹿大物には「迫力負け」の克服が必要であり、ヒグマには「迫力負け」と「恐怖負け」の克服が 必要ですが、それ以外にも、鹿の様に立ち止まりませんから、「スナップショット」と「ランニングショット」の技術が不可欠になります。また国内の狩猟制度にはありませんが、狩猟制度が全く違う海外の大物猟を行う場合には、失中や未回収には別途高額料金が必要で、射撃には「ペナルティー恐怖」対策が必要になります。
その1例として下記のクドウの場合の1発には約2000㌦が伸し掛かって来ますから大変です。

筆者が実際に行なったナミビアの人気NO.1のクドウ猟の場合のお話をします。
エゾ鹿猟より遥かに難度が高いだけではなく、ミスショットが2000㌦になると言う厳しい猟になります。クドウのデビューは5歳、それまではガイドが撃たせませんが、そうは言っても群に適齢なクドウがいれば撃たれる為、デビューはいきなり200mクラスの甘くない勝負になります。
殆んどはこの時に捕獲されてしまいますが、生き残ったクドウは300m以遠に生息する様になり、以後は容易に撃たせてもらえなくなります。

300mは難度が高い為、撃つハンターは少なく、その間にクドウは成長し大物になります。
ミス射撃は獲物に傷が付かなかった完全失中時は無料ですが、少しでも傷が付けば生存率が低くなりますので、クドウ動物代の2000㌦が未回収料金として請求されます。大物になりますと2000㌦のペナルティー覚悟の300m射撃にチャレンジするハンターもおり、ここでも半数以上が捕獲されてしまいます。

これにも運良く生き残る個体は非常に少なくなりますが、次は400mクラスに生息する様になります。
400mとなりますと最早ライフル銃の限界をやや超えており、挑戦する人は益々稀になり、クドウはその間にも更に成長し、やがてはレコードクラスになります。
筆者はこのレコードクラスに挑戦、2000㌦の圧力下で380mを遠射、この捕獲に成功しました。

さて何だかんだと銃の構造や射撃技術、そして心の問題を論じて来ましたが、それら以前に重要な事は 如何にして獲物と出会うかです。獲物に出会えなければ全てが始まりません。
エゾ鹿は基本的に1年中の駆除圧から、ハンターに出会わない様な行動を取り、そんな状況下でエゾ鹿に出会うにはエゾ鹿の本来の習性にプラス、エゾ鹿がハンターを避ける方法にも精通しなければなりません。

それには過去の膨大な出会いのデータを分析し、そしてこの1週間程の天候の推移から、筆者は本日なら何処に何時に行けば鹿に出会えるのか分かる様になりましたが、これに「ポイント猟」と名を付けました。
10月25日から11月20日までの1カ月弱、高い山が冠雪し鹿が降雪の都度に山から降りて来るのですが、その時期が繁殖期と重なりエゾ鹿は特異な行動をします。

筆者はそれを分析し1日平均出会い数が5回/日、出会い内容は成獣オス率が70%と、奇跡の出会い数や出会い内容が可能になりました。この 「ポイント猟」 こそが、最も究極の狩猟技術となります。
究極の射撃技術&狩猟技術。
      超大物の捕獲はハンターの悲願です。
      2009年の1月には概ね毎日1頭の超大物が捕獲出来ました。






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Posted by little-ken  at 09:03 │ハンティング銃と弾射撃ランニング射撃