2019年07月16日

悟りの心作戦

人生にはやりたい事、成功させたい事は世の中にたくさんありますが、現実には捕獲したいと思うから捕獲出来ない、当てたいと思うから当たらない、儲けたいと思うから儲からない、そうなって欲しいがそうなってくれない、世の中の常は何時もこんな風に最初から相場が決まっています。

銃は元々当たる様に出来ており、素直に撃てば命中します。ところが素直に行かない理由はたくさんあります。本数鹿の巻狩りの逃避コースで待ち受けても、射手が来たらブッ殺してくれましょうと「殺気」をバラ撒くので鹿に先に感付かれて視程外で逃げられます。エゾ鹿猟に於いては獲物にも逃げる権利がありますから、早く撃たなければ逃げられます。だからと言って焦って早撃ちすれば命中しません。またエゾ鹿は100~150mに生息し、それを遠いと思えばそれだけで命中しなくなります。

ケンさんも本州鹿巻狩りでは9年目の出撃累計70余日まで連続敗戦が続きました。その捕獲成功の当日まで 何もしなかった訳ではなく、考えられる事を全て試しましたが、何一つ効果は得られませんでした。

捕獲成功の当日はもう思い当たる改善項目が無くなり、「どうせ今日も獲れっこない」とフテ寝をしておりました。その結果、「殺気」のバラ撒きはなくなり、鹿は近くまで来て下さり、自らの「気配」が低下していた為に鹿接近の「気配」には気が付き、スナップショットのイージーショットで射獲成功となりました。

  「禅の心作戦
この結果から勝利の方程式を作りました。つまり鹿を捕獲する為に狩猟に来ているのですが、その心を表には出さず(殺気を発しない)、物陰から伺わずに丸見えの位置で仏像の様に微動もしない(気配を低下させる)、そしてキョロキョロ見張らずに瞑想する(心を平静にする)、こうすれば鹿が来れば気配で自然に分かり、射撃自体はスナップ射撃が出来れば極めてイージー射撃となります。これを「禅の心作戦」と名を付けました。

「禅の心作戦」はどこまで有効かを試しました処、2mと5mまで鹿を寄せられましたから、この作戦は完璧でした。鹿の眼は左右に付いており、視力は良いのですが欠陥があり平面的に見え、丸見えの位置でも大木等を背に微動もしなければ、発見される事は無いのです。あれ程獲れなかった本州鹿ですが、「禅の心作戦」に徹したところ3週連続で捕獲成功、巻狩りグループ内最低のゼロだったケンさんの捕獲率は翌年から平均値の5倍のダントツのエースとなりました。捕獲し様としない「禅の心作戦」が捕獲には最も効果的だったのです。

  「悟りの心作戦
仕事もサラリーマンを辞めて自前ビジネスに切り替えましたが、それも儲けたかったからではありません。自ら考えた手法の方が優れている事を証明したかっただけなのです。その結果、浮いた時間で狩猟をたくさんしたいと考えました。

そして自らのアイデアで能率は予定通り10倍前後となり、最盛期は年間に60日の狩猟をする事が出来ました。そして結果的には収入が追い掛けて来まして、10年少々を働いただけですが、約100倍の収入となり、サラリーマンの一生の10倍程を儲ける事が出来まして、以後は仕事卒業を10年早めて青春時代にやり残したテーマを潰して来ました。これは「禅の心作戦」と同様、開き直りの「悟りの心作戦」でした。

走る鹿に対し命中させる事は夢でした。走るエゾ鹿に対し1シーズンに45日間出撃し、約1000発を鹿に向けて撃ちましたが、命中したのはマグレ藪頭のみでした。
カモ撃ちのバイト射撃では多数の実戦から自然に飛鳥射撃の技術を身に付ける事が出来ましたが、走るエゾ鹿に対しては慣れとか技量不足とかそう言う問題ではなく、射撃理論が間違っていると感じました。

  「見ないで撃つランニング射撃
弾は200mまで落差無視の高精度直撃飛行するのですから、鹿の正しい未来位置にどうやって照準を合わせるかが問題です。考えた結果、肉眼で見えている映像は古い虚像ではないかと思う様になりました。

つまりそれで言えば走っている真の映像は見えないと言う仮定になります。
もしそうであれば虚像を目視照準しても実態はそこにはないのですから、絶対に命中する筈がありません。この考えで真の実像は何処にあるのか、それをどうやって照準するかを考えました。

肉眼には見えない目標ですが、1秒以内のほんの僅か前にはそこを通過した事実は完璧です。スイングで追い越した適当な時点が、見えないその未来位置に銃口方向が達する可能性が十分にあります。それは見えない目標ですから見て撃たない事に改めました。ここでクレー射撃のスイング射撃に当て嵌めて考えてみました。ショットガンでも目標を追い越してからは目標を見ないで撃っています。
この延長で精度を向上させれば弾速が3倍ですから、100m強位までなら命中しそうな気がして来ました。

試行錯誤の結果、目標を1度追尾し、安定した所でスイングを加速、クレー射撃と同様に追い越した所で引き金を引きました。倒れませんでしたが、胴体に命中しました。銃は連射性の良いH&Kオートでした。
そのまま同様の連射を続けますと3発目被弾と同時にひっくり返りました。ショットガン効果で3粒以上命中の条件が整ったからでした。リード不足でしたからスイングの加速をもう少し強める事にしました。

結果的には限界距離は100m程度、50m前後を走るエゾ鹿に対し、5発強で1頭の捕獲が可能になりました。
こうして3シーズンの約90日間に約3000発をエゾ鹿に向けて撃ち、ランニング射撃が完成したかに見えました。しかし実はまだまだ未完成だった事が後刻に分かりました。

それはH&Kオートでは300m遠射が未達成で、次なるテーマは300mの遠射とし、その為に銃を高精度のボルトアクション銃に換えました。その為にはランニング射撃の連射性能は諦めるつもりでした。

300m遠射は全依託射撃をマスターする事により、簡単に達成する事が出来ました。
そして諦めていたランニング射撃ですが、撃ってみるとH&Kオート時代より良く当たりました。しかも初弾だけではなく連射ですらオート時より良く当たり、且つオート時よりも速く撃てる事に気が付きました。そこでデータを取りますと200mでも命中率の低下は余り無く、2.7発で1頭を捕獲している事が分かりました。その翌年には更に命中率が大幅向上し、念願の5発5中を3度記録する事が出来ました。

つまり、ランニングの連射に最も向いているのはオートだと思ったのですがそれは間違いでした。考えればオートは撃つと反動で目標を見失い、再度これをスコープに捉え直してからスイング加速に移る射撃をしていました。
それに対し、ボルトでは撃つと銃を肩から降ろして再装填しながら再肩付けをしますが、体自体が追尾を続けておりスナップスイングで肩に銃が入るや否やでスイング加速が始まるのでオートよりも早く撃てたのでした。
そして目標を見失う事がありませんから、精神的な不安が無くなり、命中率が向上したと思われます。

こうして見えない虚像相手ですから目視照準する事を諦め、見ないで撃つ様に考え方を改めました処、新しいランニング射撃理論が完成しました。このランニング射撃では見ないままで思い切り良く引金を引けば、胴体位なら距離に関係なく必ず簡単に命中します。そうでなければ5発5中が何度も達成される筈がありません。

この新理論によるランニング射撃も、当て様としない「悟りの心作戦」と言えばそうなります。人間の能力は猟犬頼みの一般のハンターに比べ、心の持ち方次第で無限の可能性がある事が分かりました。




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Posted by little-ken  at 09:49 │ハンティング射撃