2014年12月18日

失中のパターン。

失中のパターン。

1.全体の中心を撃ってしまう。
よくある失中パターンのその1は、背中のちょい上を撃ってカスリもしない失中です。
これは大物の迫力に圧倒され、角を含めた鹿全体を見てその中心付近に照準を向けてしまう、迫力負けの典型的なパターンです。
落ち付いてナミビアポイントに銃を向けて下さい。

2.胴体の中心を撃ってしまう。
よくあるパターンのその2です。鹿の急所は胴体のかなり前方にありますが、射撃の腕に自信が無いとこれに不安を覚え、胴体の中心或いは中心寄りを撃ってしまうパターンです。

この場合、写真からも分かる様に心臓にも肺にも神経系にも命中していませんから、鹿は猛スピードでトンズラ、追跡は不能です。
中心寄りを撃った場合も肺をかすめても倒れません。
やがて死ぬ事に間違いはないのですが、かなり遠方となりますのでそれをカラスのお告げ等で発見出来る事も殆どありません。

3.間違えて心臓ポイントを撃ってしまう。
これも迫力負けの典型的なパターンで、このパターンもたくさん見て来ました。
本州猟を長年やっていた人はどうしても心臓狙いの癖が残っており、事前にはよく分かっていても、迫力負けで新しい注意事項をコロリと忘れて従来の射撃をしてしまい、貴重な超大物をみすみす未回収にしてしまうのです。

4.落差補正。
ライフル銃とは言え、弾は銃口を離れた瞬間から地球の引力に引かれて落ち始めます。
本来はその落差補正をした方が良いに決まっております。

ところが殆どの場合に落差補正のベースとなる射程距離をレーザーレンジファインダー等で計測して正しくインプットする事は時間的に不可能で、目視フィーリングによる距離測定となりますが、周辺の地形や明るさ等で0.5~2倍位の大きな誤差を含んでしまいます。

それ程大きな誤差による目視距離がベースとなって落差補正するならば、話は全く別になり、その補正はしない方が上手く行く事になります。
更に不確かな落差補正には不安が付きまといますが、射撃はこうした不安要素や迷い要素がほんの少しでもあると途端に命中しません。

300m級の遠射はそれなりの技術を会得した人でないと当てられないのですが、多くのライフルハンターはそれを命中させ様と欲張り、結果として撃ち頃の適正距離の鹿を多数失中してしまいます。

普通のハンターは銃のゼロインを最も出会いの多い距離に設定するのが1番高い効果を生みます。その出会いの最も多い距離が300mであるならばその距離をゼロインするのが妥当ですが、近年ですと出会いの多くは100~200mです。

150mゼロインは0~200mまで最大誤差5cm以内の誤差で直撃出来ますから、結論としてこれが1番ベストです。そして300m級の遠射は、200mまでを外さなくなってから改めて考えましょう。出来もしない事を欲張りますと全体効率が著しく悪くなる、スクールを通して筆者はこれを痛感しました。

5.銃と弾の精度。
銃と弾は出来るだけ精度が高い方が良いに決まっています。しかし狩猟は射撃競技ではありませんから的のど真ん中に当てる必要はなく、グルーピングも良いに越した事はありませんが、急所の直径は15cmもありますから1cmを争う必要はございません。

実戦では相手に逃げる権利もありますから、逃げられない内、つまり早撃ちで急所を外さない事が最も重要と言う事になります。
一方、失中の原因は心に雑念が無い事が絶対必要条件になります。言葉を換えますと心がマイナス状態にある時は命中せず、心がプラス状態にある時だけしか命中しません。

心がマイナス状態になる最も大きな要因は焦り射撃です。
エゾ鹿猟は車に乗ってエゾ鹿を探します。そしてエゾ鹿を発見、突然に全てがこの瞬間から始まり、秒を争い、射撃準備、照準、そして逃げられない内に速やかに発砲します。

失中の原因は銃や弾の精度ではなく、この心の焦り&不安要素なのです。
発砲準備が速やかに整なわないと、スコープに速やかに捕まえられないと、そして銃の振れが速やかに収まらないと焦り射撃になってしまい、命中しません。

命中(捕獲成功)に必要な事は、速やかに発砲準備を終えられる様に発砲準備動作の練習に最大重点を置き、肩に銃を付ければ目標が捉えられている様に肩付け練習をたっぷり行い、ナミビアポイントに向けて、落差補正をせず、揺れる銃口を納め様とするのではなく、アバウトで良いから揺れる銃身が目標付近を通るタイミングに合わせて、最も早いタイミングで引き金をガク引きする事です。

捕獲成功にはこの様にパワーも精度もグルーピングも弾道係数も落差補正も全て命中にはほぼ無関係、命中させるテクニックはそれほど難しい物ではないのです。

筆者の銃はサコー75バーミンター改、あの太くて重い銃身は精度やグルーピングの為ではなく、銃のスイングを安定させる為の物です。捕獲にはパワーも殆んど関係ありませんからマグナムは必要なく、308ウインチェスターで十分、弾の精度も余り関係ありませんで最も安い市販弾(当たらない事で有名なロシア弾)で十分、弾頭も同様ですから最も安売りの初期型バーンズXの140grの売れ残り(当たらない事で有名)にすげ替えています。

これで特に問題はありません。と言うよりもこの弾で2014年度は2頭の400kgと280kgのデカイヒグマを2頭も捕獲成功、共に1発でした。
精度もグルーピングも良いに越した事はありませんが、重要な項目では無いのです。









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Posted by little-ken  at 15:40 │ハンティング銃と弾射撃