2019年04月28日

射手の心が伴なわなければライフル銃は効果を発揮しない。

  1.銃だけ良くても技術と心が伴わなければ効果はゼロです。
国産カスタムライフルメーカーのキングクラフトカスタムは1丁が400万円以上の超高価格銃でした。
価格も凄いのですが性能も半端ではなく、300m射撃の3発がワンホール崩れを射撃場の立会い実射で実証の上での引き渡しでした。そんなにも良く当たるライフル銃なら誰が撃ってもよく獲れるのか? 残念ながらその様な事は全くなく、2000年頃にキングクラフトカスタムを持つ歯科医グループを案内した事がありますが、100mの鹿に1度も当たらず、筆者の18万円のルガー77にすら全く及ばない銃でした。

  2.射撃技術が伴っていてもまだ効果は殆んど期待出来ません。
また300m射撃の現役LB射撃選手を案内した事もあります。
300mのLB標的の10点圏は直径10cm、射撃競技ではこれに当てなければ勝てません。
300mで10cmが狙える事を豪語していましたが、150m射撃で狙ったのは心臓、命中したのは頭でした。鹿の頭は上がった状態でしたから何と1mも弾着誤差を生じた事になり、他の射撃も全て類似結果でした。射撃技術だけで心が伴わなければ150mで1mもずれると言う、超お粗末な射撃に終わります。

この様に銃が良くても、更に射撃技術があっても、心が伴わなければ良い結果は得られないのです。
その心は射撃場の射撃からは育たず、実戦からしか育ちません。
勿論その心はお金では心を買う事も出来ませんし、射撃技術も買う事も出来ません。

  3.心が伴って初めて効果が期待出来ます。
筆者は10年と300日以上の実戦をこなしておかげ様で徐々に心が育ち、射撃は安定して行きましたが、その最後に射撃を完璧なモノに出来たのは「そっと撃つ」と言う呪い(まじない)でした。
まじないが画期的に利く程ですから、射撃は眞に心の持ち方次第と言え、当たると思えば当たるし、不安が少しでもあれば当たらない、それが射撃でした。

「そっと撃つ」にも色々な意味が含まれ、フリンチングを起こさない様に、ガク引きを起こさない様に、心穏やかに、雑念なしに、銃だけにそっと撃たせる、と言う意味が含まれています。
そしてこれを唱える事を忘れなかった時、失中ゼロでしたから効果は甚だ絶大でした。
と言う事で改めて心の平静さが非常に重要である事が分かります。

  4.当たらないのは自信の無い射撃が原因です。
並の腕のライフルハンターがエゾ鹿猟をしますと、基礎射撃能力の不足もありますが、次の様になります。射撃場では100mで10cmをやっと外さない程度の腕前に留まり、実戦では100mの鹿は稀にはその場に倒れますが、過半が上手く行けば回収出来る程度の着弾のバラ付きです。

150mを超えると途端に命中率激減し、200mを超えると鹿の胴体にすら命中しなくなります。まだまだ銃の性能にはまだ相当な余裕がある筈なのに、200mで殆んど命中しなくなり、250m以遠はマグレの可能性すらない程に着弾が乱れますから本当に不思議です。

勿論筆者にもそんな時代があり、その状態から300mを外さない様になれるまでは約10年間の約300日の実戦を要し、その間に実戦経験も相当量増え、徐々にですが200mの捕獲率は向上して行きました。そして並行して射撃場での精度も向上して行きました。
150mでワンホールが出せる様になったのは2002年、ライフル銃を始めてからで言えば12年を要していました。

やがて心も充実し、自信を持って200mは最早外さないと言える様になりましたが、実際の順序は分かりません。150mのワンホールが出来、200mが当たる様になれば、300mとて当たらない筈は無さそうに思えますが、まだ胴体にカスリすらしませんでした。それは落差補正に自信が無かったからでした。

  5.不安要素が無くなった結果、300mも超大物射撃も、イージー射撃となりました。
一方でこの頃には超大物対策も大きなテーマでした。
角長80cm超えは生息数が少なく、やっと稀に会える様になりましたが、何時も「迫力負け」で未回収が続き ました。やがて単に迫力負けだけの問題ではなく、心臓の急所に構造的な問題がある事が分かりました。心臓ポイントはヒットゾーンの面積が多く、命中すれば死亡に至る確率は高いのですが、エゾ鹿は意外と被弾に強い動物で被弾後に最大200mほど走ります。その為に追跡し切れずに未回収となる事が多いのです。筆者も何度泣かされた事か分からない程です。

そこで照準ポイントを即倒率の高いショルダーの急所に変更、この効果は非常に絶大、これで回収率も一気に上がる様になりました。そして同時にこのショルダーの急所は落差誤差に強い事を発見しました。並行して全依託射撃のマスターで照準時のフラ付による不安から解放されました。更に銃を特定の条件で置いて撃つと発射時に銃が適度に跳ね上がり、落差を補正してくれる事を発見しました。これらの相乗効果から300m遠射時の全ての不安から完全に解放されました。

こうして遠射時の不安から完全に解放された結果、筆者は愛銃の300m時の落差は知りませんが長い間不可能だった300m射撃は最早イージー射撃となりました。そして同時にこの頃には超大物の対する迫力負けも、自動的に乗り越えられる回数に達したのか、超大物とて必ずその場に倒れると思える様になりました。それらは2006年の事でライフル銃を始めてから15年が過ぎた頃でした。そして2006~2011年のピークを迎えられました。

  6.射手側の不安要素。
実戦に於ける射手の心には心の平静さを乱す色々な項目がたくさん飛び込んで来ます。
例を上げれば次の様な項目となります。

急げ:鹿は待ってくれません。鹿が逃げる前までに発砲準備動作を終え、素早くスコープに捉えて照準し、大きく揺れる照準ですが、早く引き金を引かなくては逃げられてしまいます。しかし焦りの心の射撃は命中しないのです。

デカい:初期にはデカいと思うだけで戦う前から心が相手の迫力に負け、足が地に着かない射撃に陥ります。その迫力負けを超えてもデカいエゾ鹿には稀にしか会えません。北海道に通う目的はこのデカい鹿を 獲る為ですから、獲りたい-外したくないと思うのは当然ですが、それが心の雑念になってしまいます。雑念射撃では命中する射撃も失中してしまいます。

遠い:大きく揺れる照準から100m以遠を狙うと胴体にすら当たらない様な気がして来ます。
更に遠射であれば落差補正の不安が生じて来ます。心に不安が残る射撃では命中しないのです。

この不安が150mを超えると途端に命中率が激減し、200mを超えると鹿の胴体にすら命中しなかった主原因でした。
つまり焦りと雑念と不安を無くせば当たる様になるのです。
  
  7.筆者の装備は安価な普及品ばかりです。
愛銃は市販サコー75バーミンターを少し短くカット銃で25万円、スコープはリューポルド3万円、弾薬は初期には120円/発の安売り市販弾にバーンズトリプルXの弾頭50円/発をすげ替えた物、後期には激安粗悪弾と 言われるロシア製弾80円/発に、命中しない事と倒れ難い事で悪名の高い初期型バーンズの売れ残り弾頭で20円/発にすげ替えた物を使っていました。そう言う精度の良く無い弾でしたが、それでも当たって当然と思える射撃が出来、そして期待を裏切られた記憶はありません。

結論として、当たる銃と弾は現在の市販品であれば余程の粗悪品でない限り、その条件を満たしており、銃だけに撃たせる技術があれば、残りは全て射手の心の充実度で決まりました。そして心に余裕が出来ますと更に細かな事までが観察出来る様になり、それが心の余裕を更に大きくしてくれました。その結果、筆者には下記の様な記録が生まれました。

最高精度   :150mテーブル撃ち5発が12mm。
最長射程   :半委託380mのクドウ、全依託540mのエゾ鹿。
最短射程 :15mのヒグマ280kg、50mのエルク320kg。
最大の獲物  :エランド940kg、ワイルドオックス700kg、ヒグマ450kg。
大記録達成 :2010年エゾ鹿1000頭の達成、2014年ヒグマ5頭の達成。
まとめ捕獲 :2007年毎朝夕各々5頭ずつ5日で50頭、この時ランニング5発5中を3度記録、
2009年48.5日猟から140頭、2011年ボス争い3頭(79cm,79cm,75cm)をまとめ捕獲。

スナップショット:肩に着く前に撃てる技術。2015年僅か15mの出会い頭で280kgのヒグマ捕獲。
ランニングショット:150m先を走る鹿の捕獲に2.7発/頭、3度の5発5中を達成。
150m早撃ち:150mを近射の早撃ち側にする技術。このおかげで捕獲率は2倍以上となった。
射撃ミス克服:銃を「そっと撃つ」と言うおまじないを開発、これを唱えた後の失中はゼロになりました。
最終捕獲数:エゾ鹿1051、ヒグマ6、本州鹿26、海外鹿猪5、海外大物59、小物81、合計1228頭/28年。

ライフル猟達成:2016年には超高額ゲームを除き、サイズ的に距離的にライフル猟を概ね究める事が出来、もうこれ以上は望めないと、28年間使ったライフル銃ですが2018年に卒業しました。

308とバーンズ銅弾頭の組合せは体重500kg以上まで大丈夫であり、300mの遠射にも問題はなく、抜群の信頼性があります。また銅弾は鉛弾の欠陥をカバーする為に開発された弾頭であり、ド至近距離で撃っても 骨に当たっても四散しないので鉛弾より信頼性は全般的に高いと言え、特にその場に倒れ難いエゾ鹿の場合には肩甲骨や脊髄に強い衝撃を与え、その場に即倒させるショルダーポイントを撃つべきだと言えます。

  8.ライフル銃は射手に更なる高い能力がなければその効果を発揮出来ません。
ライフル銃は300mの遠射からド至近距離のスナップショットまで可能で、200m前後までのランニングショットも可能です。そしてランニング射撃の連射は自動銃の連射より速く、且つ命中率も大幅に高かったのですから 驚きでした。筆者の撃ち方は再肩付けのスナップスイング射撃です。

その素晴らしいライフル銃は10年の装薬銃の実績が無ければ申請資格がありません。以前の場合はスラグ銃しかなく、スラグ銃と言えばフォスタースラグ弾かブレネッキ弾しかなく、射程距離は80m程度した。しかし今ではハーフライフルのサボットスラグ銃が良くなり、最大射程は150m、精度も100mで弾頭の大きさの差額分が増える程度、100m前後なら余りライフル銃と変わらなくなって来たと言っても過言ではありません。

100m強までは直撃照準で問題なく、150m射撃には落差補正が多少必要になりますが、心の不安さえなく 撃てる様になれば、落差誤差に強いナミビアポイント(前足軸線上のショルダーポイント)を狙えば150m射撃も何ら問題はありません。ライフル銃のメリットはこの150mを超える距離でしかその能力を発揮できず、それ以下ではサボットスラグ銃と特に変わりはありません。

多くの生徒はライフル銃に過大な期待を掛け過ぎ、その結果としてサボットスラグ銃の末期に比べると捕獲率が低下する期間が数年以上続きます。その原因は不慣れな銃が故に不安材料が増すからです。ライフル銃はサボットスラグ銃より確かに精度はやや上廻りますが、実戦射撃は射手の心の持ち方次第です から、超高額カスタムライフルの時と同様に、ライフルだけでは効果は出なくて当たり前なのです。

年間出撃3日では技量を昨年並みに戻すのに丸1日を要し、最終日は帰る関係で捕獲制限となり、十分なチャレンジが出来るのは中1日だけ、この中1日がフィーバーに当たれば大物出会いも多くなり、有意義な年になりますが、それは5~6日に1日だけですから5~6年に1回しかありません。
従いまして年に3日の出撃ではこの辺が限界であり、憧れのライフル銃を入手した物の殆んどの生徒はサボット時代の限界100mが落差不安がなくなった為に数年後には150mまでは延長されましたが、直撃可能である筈の200m射撃すらをまともに出来ていない状態です。

これがシーズンに6日の出撃となりますと、この中に大物出会い数の多いフィーバーが必ず含まれ、しかもそれが中4日に含まれる可能性が2/3になります。ライフル銃のメリットを発揮させる為には、更なる高い技術と高い精神力が伴わなければいけないのですが、年に6日出撃なら3日出撃に比べて有効度が4倍となり、更なる 高い技術と精神力に必ず発展すると思いますが、この体制が取れなければ無理してライフル銃を取得する意味は殆どありません。
行き詰れば以後は余り出撃しなくなってしまうからです。

出来れば全員に高い極みまで行けて欲しいのが筆者の願いでありますが、現実的には思い通りに行かないのが世の中です。筆者は仕事をしている時代にあっても年に30日の出猟をしながらも、筆者にしか出来ない合理化能力のお陰で趣味として続けて来れました。そしてこの1桁高い出猟日数のお蔭でこうした高い極みに辿り着けましたが、普通の人がこれをやったら道楽の範囲になってしまい、本当に仕事がなくなってしまいます。

このライフル銃を取得するかしないかは、そう言う意味の今後の狩猟人生の分かれ目の年となります。その判断は10年と言うよりサボットスラグで150m射撃が出来る様になってからにした方が良さそうに思います。




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Posted by little-ken  at 11:14 │銃と弾ライフル所持