2013年04月01日

ライフル銃2丁は有効か?

セミオートライフルの有効性
多くの方が近場用にStd口径のセミオートで遠射用にはボルトのマグナムライフルと言う複数ライフルの2丁所持パターンが主流です。それに対して筆者は次の様に思っています。

まず近場用のセミオートですが、私もかつてはそう思い、ボルトとオートの2丁体制の時期もありました。しかしその後数多くの実戦を体験し累計スコアも1000頭を大幅に越えた現在は次の様に思いが変わりました。

ショットガンでバラ弾を撃つ場合はセミオートが非常に有効ですが、それは照準誤差が向けて撃てば良いと言う程のラフさで良いと言う前提条件の元だからです。
そしてそのラフさで良ければ走る鹿に対しても追尾や連射も全く問題はありません。

それに対してライフル銃の場合は急所に当てなければなりませんから仮にバックショットクラスの近距離であってもちゃんと急所を狙わなければなりません。
鹿が止まって居ればキチンと狙うと言う難易度はそれ程ではなく誰にでも当てられます。しかし走っていれば難易度は大幅に上がりますが、これもまだ不可能ではありません。

では連射となりますとどうでしょうか? ショットガンの跳ね上がりは慣れればかなり押さえ付けられますが、ライフル銃では押さえ付けられません。反動が強いからではなく引き金を引く時に狙点が狂わない様に引かなければならない、つまりライフル銃の発射の瞬間は銃に余計な力を掛けてはならないからなのです。

その結果としてライフル銃は大きく跳ね上がり、1度消えた標的を再度スコープに捉え直し、再び所定精度を出せる追尾に戻すにはかなり長目に時間が必要です。
この点では発射後に1度肩から銃を降ろして再度スナップショット的に追尾した方が遥かに速く照準に移れる事に近年気が付きました。

しかしこのレベルのお話となりますと、並の技量の人には雲の上のお話になってしまい、実質は全く役に立ちません。
通常レベルの技量では50mの止まっている鹿には当りますが、100mを越えると止まっている目標に対しても不確かさが増して来ます。結論として止まっている目標に当てられなかったら走っている物に当たる筈が無いと言えます。

つまり動いている目標をライフル銃で捉えるのはかなり至難の業と言えます。セミオートライフルの速射性を生かして走る鹿を連射で倒すと言う作戦は全くの無意味です。
ただ絶対に当てられないかと言えばそうではなく、筆者は走っていても200m位までは十分当てられます。2010年に平均150mの距離を走る鹿50頭に対して倒すまでに使った弾は2.7発でした。

それ以後もその前後の数値で命中していると思われますが計算していません。
筆者に出来るのですから熟達すれば多くの人にも出来ると思いますが、実際問題としましてはこれを有効に使える人は筆者の知る範囲では日本大物クラブの名人1人を除いて他には見た事も出会った事も御座いません。

私自身はセミオートのライフルで多弾数を消費してランニング射撃を完成させましたが、これも全くの暗中模索状態であった為にそう言う銃の方が良いのではと思って使いました。結論的に言えばスイング射法が確立した今としてはボルトで練習を積み上げた方が早道だったと思っています。

もっと言えば仮に精度的にセミオートがボルトに対して全く劣らず完璧に同等であったとしても今の私はボルト式を選びます。
その主な理由は装填音の問題でありそして安全性と確実性です。更に申せば再度肩付け方式に熟達すればボルトの方が速く撃てます。セミオートのショットガンにはメリットも多いのですが、セミオートのライフル銃にはメリットが無い事が分かりました。


遠射性能
もう一方のライフル銃の目的である遠射方面で今まで経験や考えをまとめますと、遠射の安定性に対しましては圧倒的にボルト式の優位性があります。
遠射に付きましてはまだそれを極めたとは言い難いレベルですが、300mまでならそれほど外さなくなりました。しかし回収を考えると撃つ気がしなくなります。

実戦では遠射の技術向上よりは50m未満のスナップショットの練習の方が有効です。
更にこのスナップからスイングにそのまま移行し、100mまでならスイングを乱さなければランニング射撃をリードゼロで撃っても一応は胴体に当たります。

もちろんリードは無視して良いとは申しませんが、当たれば補正して行く事は可能ですが、カスリもしないと何処を撃っているのか分からず上達しません。

射撃精度はボルトの方が上であり、更にStd口径の方が有利です。Std口径は200mまで落差補正を無視出来て300mまでの遠射が可能になります。至近距離から300m遠射まで、走っていても1丁のStd口径のボルトライフル銃を使いこなした方が絶対に有利です。


マグナムの必要性
ニトロ系の火薬を使う場合は308の1.2倍程度の弾速が限界です。
Std口径の遠射は一口に行って300mが限界ですが、これがマグナム口径ではどれ位に伸びるのか、答えは弾速に比例しますのでせいぜい20%程度です。

等身大の人的にその許容精度も軍事的に言う戦闘能力を無くす程度で言えばどちらの口径であっても1kmは十分当てられ、マグナムの方がやや有利です。
しかし初弾を狩猟的な急所にきっちり当てる為には落差補正や横風補正、その他各種の補正を加えなければならず、全く実用的ではありません。

パワー的にはヒグマ等の猛獣にはまだ3例しか経験しておらず、多くを語る資格はありませんが、それでもその3例は308で全てが即死レベルでした。
また海外猟等の6例の経験では体重400kg程度までの危険な動物でなければ急所に当てればその場もしくは短距離で捕獲出来ました。

エネルギーの3次元空間の減衰は計算値的な数値では距離の3条に反比例し、この伝播したエネルギーが308の場合で直径約10cm程度を破壊し、その範中に急所があれば即座に倒れると考えられます。

一般的なマグナムはStd口径のエネルギー1.4倍(300ウインマグや300WSMクラス)の場合は11.9%破壊直径が大きくなりますが、半径で言えば1cm未満ですから誤差範囲に近くなり、狙いの甘さをマグナムでカバーする事は全く出来ません。

同様に1.7倍マグナム(338ウィンマグクラス)では19.3%、2倍マグナム(338ラプアマグでもここまで無い)では26.0%になりますが、それでも半径ではたった1.3cmしか有効度が増さない事になり、338ラプアマグをもってしても狙いの甘さをエネルギーでカバーする事は出来ません。
また2倍のエネルギーを超える弾は個人で携帯する火器からは反動が大き過ぎて発射できません。

エゾ鹿スクールに於いてStd口径による半矢未回収もたくさん見ました。しかしマグナムだからと言ってその確率は全く向上せず殆ど同じと感じました。
その場に倒れる確率は殆ど変わらない~微少多くなるの範囲にあると思います。
ただ半矢追跡をしますと倒れるまでの距離に付きましては微少ではなく多少短い様に感じました。


これらの事実から口径別に複数のライフル銃は不要、作動方式はボルト式が1番良いと思っています。ヒグマ専門なら話は少し(心の満足度の違い程度)変わるかも知れません。

又もう少し遡って言えば150m以遠の射撃頻度が低ければライフル銃に余りこだわる必要が無いのかも知れません(サボットスラグで十分なのかも知れません)、これが私の結論です。
故障に対してボルト銃は構造もシンプルで耐久性も高く、事前によく点検しておけば本番中に壊れる可能性は殆どないと思います。


趣味として考えたら。
当てる為にまた捕獲効率的にはすでに申し上げた通り、銃は一つを使いこなした方が絶対に得策です。しかし狩猟も捕獲が目的ではなく色々な銃を実戦で撃つ事を趣味とするならばそう言う趣味もありと思っていますし、ライフル銃の射撃的趣味が認められず、コレクション的な所持も認められないのも非常に遺憾に思っています。

しかし現実にライフル銃取得は日増しに厳しくなり、2丁目取得に対してはかなりの実績が無いと難しくなって来ました。又現複数所持者に対しての維持条件も難しくなりました。
維持条件とは使用した回数を差しますから必ずしも発射出来なくても捕獲しなくても成立しますが、結果的にそれだけ熱心に通えば必然的に捕獲も付いて来ると考えられています。

銃1丁に対して複数の出撃実績があればミニマムはクリアしますが、類似の銃が増えれば増える程に1丁当たりの銃に対するその出撃回数のハードルも上がります。
それは拘ってアレ用コレ用としているのですから当然狩猟に対する特別な熱い思いを実績と言う形にしなければならないからです。

海外では小動物から大型動物までがライフル銃の狩猟対象ですからそれ用の口径の銃と言うのは絶対に必要ですが、日本では鹿-猪-熊の3種しかライフル銃の使用は認められません。
その条件下であれば1丁のStd口径のボルト式がベストです。

そして結論として道具である銃が獲物を獲ってくれるのではなく射手が道後を使いこなして捕獲するのだと思います。1つでも使いこなすのが難しいのですから複数を使いこなす事はもっと大変です。

道具を使い分けると言うのは一見合理的な様に見えます。私も初期にはそう思いアレ用コレ用に幾つか持っていました。ライフル銃では口径は同じ308でしたがセミオートとボルトを持っていました。ショットガンも近射用と遠射用のセミオートを各1丁、それにトラップ射撃用を持っていました。

永年の経験からライフルはボルト式1丁、ショットガンも近射用を遠射まで出来る様に改良した銃に換え、射撃専用銃も辞めセミオート1丁に落ち付きました。

こんな事もありました。スクール以前の話ですが、お金持ちのチームを案内した事があります。彼らの銃は全員が1丁500万円以上の300mワンホール崩れが自慢のキングクラフト製カスタム銃の300ウィンマグナム、これにツアイスの高級そうなスコープでした。

しかし彼らは50mのエゾ鹿は撃てません。モタモタし多くがスコープに捉えられない内に逃げられてしまうのです。100mの鹿も同様でたまに焦って撃つと失中でした。
では200mはどうかと言えば、当時の鹿は何時までも待っていてくれましたが、今度は射手側の射撃精度がこれに至らずこれも当りませんでした。

もちろん精密に遠くまで当てられる事は決してマイナスにはなりません。しかし実戦では速く撃つ事の方がもっと重要です。もっともっと重要なのは速く照準できる技術です。
当時の講師の銃は18万円のルガー77ボルトの308、500万円の銃より良く当たりました。

今はサコー75バーミンター改の308を使っています。スコープは6倍、もちろんボルトですが自動銃より速く撃てますし、ランニング射撃も快調です。森の中の出会いがしらから300m遠射とオールマイティーです。








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Posted by little-ken  at 15:32 │銃と弾