2023年11月22日

北海道滝上、男女ハンター2人がヒグマに襲われ、ドクターヘリ出動。

  .事故詳細。
2023.11.21.午前8時5分頃、北海道北東部の滝上町上渚滑原野(滝上町市街地と紋別市街地の概ね中間)、現場は渚滑川へ注ぐメナシベツ川の上流付近の山林、男女ハンター2人がヒグマに襲われ、怪我をしたと消防に通報がありました。2人共自力で下山しました。

消防や北海道警によると、クマに襲われケガをしたのは、東京都目黒区に住む阿部徹さん(49)と滝上町に住む岡林佳代さん(58)です。阿部さんは頭や手足を噛まれる等の重傷、ドクターヘリで搬送されました。岡林さんは、両腕を噛まれ軽傷とみられています。

阿部さんは鹿や熊猟の為に滝上町を訪れ、岡林夫婦は数年前に稚内から引っ越し、ハンティングガイドを始めた様です。ケンさんのスクールが終わった翌々年、メールのやり取りを数回行いました。
その後ケンさんのパソコンが壊れ、古いメール記録消失の為、ガイドの名前はウロ覚えです。

ヒグマは出会えない可能性も高く、エゾ鹿猟も当然併用していたと思われます。
岡林ガイドは21日朝7時頃からに阿部さん・岡林夫婦の3人でいずれもハンター、熊と鹿の猟の為に山に入りました。

東京の阿部さんが熊を見付け猟銃で撃った所、命中したらしいのですが、熊はその場から逃げ、(失中して逃げた熊には追い付けません。)その後二手に分かれて半矢のクマを探していました。

襲われた時の状況は、阿部さんと岡林さんが襲われ、無線を受けた夫が駆付け、近くにいたクマを 射殺しました。また現場の見通しは悪く無かったと言う事ですが、CGでは安部さんは銃を手に持っていますが、その時にヒグマに発砲出来たのかどうかは不明です。
女性ガイドは銃を携帯しておらずでした。
北海道滝上、男女ハンター2人がヒグマに襲われ、ドクターヘリ出動。
2人を襲った熊は体長120㎝位体重100㎏位の5歳位のメスとみられ、女性ガイドに銃があっても周辺事情は、何も変わらなかったかも知れませんが、女性ガイドは無線が使えたのですから、銃が使える時間があった事になります。銃を携帯していなかったのは非常にマズかったと思います。


  ヒグマ猟の実際。
ヒグマは日本国内で最大の動物であり、日本で唯一の猛獣でもあり、ハンターならば、1度は勝負したいのが本音です。しかし勝負するにはハンターの心と技術の両面で下記の高いハードルがあり、 実現させる事はかなり困難であり、ヒグマガイド猟を真面に謳うガイドはいません。

ケンさん自身の経験や周囲の観察から申し上げれば、大物鹿に「迫力負け」せずに撃てるハンターは10人に1人以下、ヒグマに対して「恐怖負け」せずに撃てるハンターはもっと少なく100人に1人以下となります。

また立ち止まらないヒグマ射撃には、「スナップショット」や「ランニングショット技術」を要し、これが出来るハンターは1000人に1人以下となります。ケンさん2倍以上の猟をしていても、この技術が無ければ下記の様に、ヒグマ捕獲は半分以下、対応は難しい事が分かります。

ケンさんはヒグマ6頭を捕獲をしましたが、6頭中の2頭はスナップショット、4頭はランニングショット でした。毎年1カ月しか猟をしておりませんが、毎年2倍以上の猟をしている地元ベテラン友人でも、捕獲は2頭に留まり、彼らの普通の射撃術では撃てる機会は半減以下となってしまうのです。

ケンさんのスクールは永らく生徒のヒグマ射撃を認めませんでしたが、スクール生徒全員はスナップショットh事前講習済み、「迫力負け」は大物級まで全員が対策済です。

後期には生徒の気持ちを考え、実戦10日以上経験者で「失中しても10万円の覚悟がある」なら「恐怖負け」は未対策でもヒグマ射撃を認める事にしました。ヒットしたらすかさずケンさんが支援射撃をします。

初期のスクールはエゾ鹿が1頭も獲れないとマズイと思い、生徒の弾がヒットし、逃げる鹿をケンさんがランニング射撃で支援捕獲、ヒグマも周辺状況から安全と思われれば、これと同じ体制としました。
海外でも猛獣猟は全てガイド2名の支援付で行われます。

今回の様に、そう言う支援技術も支援体制もなしに、ヒグマ猟の案内をするべきではありません。
ましてサブガイド役の女性が銃を携帯していないなんて、とんでもない事です。

現場は森の中ですから、女性ガイドは6粒弾又は9粒弾装填のスキートチョーク又はインプシリンダーチョークのショットガンを持つべきと言えます。


  ヒグマ出没事例。
北海道ヒグマ対策室によると、今年度に道内で発生したヒグマによる人身事故は、滝上町の事例を除いて6件7人で、死者は2人。散歩や登山、釣り、林道を自転車走行中等に被害に遭っています。

今年の北海道のヒグマ目撃件数速報値は3720件、2019年の2倍以上となっています。

時期的に近い所では福島町(函館の左)で今月2日、ヒグマに襲われた登山者の遺体が見付かった事例があり、更にその近くで非番の消防隊員チームがヒグマとナイフで格闘した事件がありました。

また滝上町では4年連続で人身事故が起こっており、ヒグマ勝負が夢であるハンターには、抜群の高出会い率が期待出来るチャンスと言えます。

期間は10月下旬から11月上旬の2週間がベストです。
しかしそれでも超大物エゾ鹿より少ない3%です。

ケンさんのエリアの鹿の出会率は5回/日ですから、14日猟なら鹿とは出会い70回があり、ヒグマ出会い2回がある事になります。

出会えば獲れるのか?
ヒグマは近距離で出会い、立ち止まりませんから、ケンさんの射撃技術のスナップショットとランニング射撃で行けば、出会いの70%が獲れます。

射撃距離は50m前後、遠くても100m程度ですから、上記射撃技術を持っていれば、技術的には難しくありませんが、「迫力負け」、そして「恐怖負け」を克服し、足が地に着いた射撃の出来る、心のゆとりが必要です。

しかし、これを経験の少ない外来ハンターに求める事は絶望的です。前者の「迫力負け」により、初心者は中型エゾ鹿に対しても、足が地に着かない発泡になってしまい ます。

中型捕獲成功には失敗経験10回の積上げが必要であり、スクールの高出会い率を以ってしても、実猟3日を要し、エゾ鹿超大物を捕獲するには、平均21日を要しました。

スクールにヒグマ成功者はケンさんを除いて皆無であり、10万円の失中覚悟でのヒグマ射撃回数はゼロでした。その制度以前にツキノワグマ捕獲経験がり、50日間通った生徒に依るヒグマ射撃が2度ありましたが、残念ながら心が至らず、足が地に着かない射撃に終わりました。

「恐怖負け」が至らないと、至近距離の出会いでは、何も出来なくなってしまいます。
ヒグマの出会いは少なく、僅か数日間の滞在での、ヒグマのガイド猟は足が地に着いた射撃は不可能となり、事実上「成立困難」と言えます。

ヒグマの射撃技術的には鹿と違い、立止まる時間が非常に短く、通常射撃術では対応が不可能です。スナップショットは絶対必須項目、ランニング射撃が出来れば心強いと言えます。

これは迫力負けや恐怖負けの克服よりは克服は1桁簡単ですが、良い指導者がいても前者の「スナップショット」は1年、後者のランニングショットは3年以上を要します。

スナップショットは肩に銃を着けるや否やで撃つ射撃術ですが、ケンさん考案の新スナップショットは肩に着ける前に撃て、腰ダメ射撃ではなく、ちゃんと急所に向けて撃つ事が出来ます。

次項の過去の返り討ち事件は殆ど全てが、「恐怖負け」と「スナップショット」があれば防止出来たと思われます。


  .返り討ちの実態。
ヒグマの殆どはハンターに出会えば逃げ、撃たれれば逃げ、そして意外にも弾に弱い為、意外と近くで短時間の内に死んでいます。

そう言う現実から、ヒグマ多数捕獲経験のあるベテランハンターでも、ヒグマ対策の「心」と「技術」を持たないハンターは多数います。

ケンさんが知っているヒグマ名人2名は、共に100頭近い捕獲数でしたが、返り討ち事故でやられてしまいました。

2007年士別市で原子氏は、瀕死の重傷を負い、2022年の滝上町では同様に山田氏は重傷を負いました。共に該当のヒグマは翌日、近くから死体で発見されています。

他にも過去、1962~2022の60年間にヒグマ駆除34件&ヒグマ狩猟15件の合計49件が起こり、死亡16件と負傷33件が起こりました。

ヒグマの価値の高かった1962~1973の11年間ではヒグマ駆除13件、ヒグマ狩猟7件、合計20件の事故が起こり、死亡10件、負傷10件の事故になっています。この頃のヒグマ2頭捕獲は年収に匹敵する為、ハンターは生活を掛けた真剣勝負をしていました。

それに対し、ヒグマの価値が著しく低下し、ヒグマが増加して来たと言える、2007~2022の15年間ではヒグマ駆除11件、ヒグマ狩猟1件、事故件数が合計12件と概ね半減し、死亡は僅か1件に減少、負傷11件の半減となりました。

言える事はヒグマの価値が下がった為、もうこの頃はヤバい思いをしてまで、ヒグマを捕獲する価値が無くなった事を意味し、その為に事故件数は半減し、特に死亡事故は1/10に著しく減少しました。

もう1つ言える事は、どちらの期間も多くの地元ベテランハンターが上記知合い2名を含め、ヒグマの返り討ちを受けていますが、今も昔もその多くは「恐怖負け」から、殆ど何も出来ない内に、やられてしまっています。

心が至らなければスナップショットも威力を発揮出来ません。それらは事故ではなく、身に付けるべく「恐怖負け」対策と、「スナップショット」技術を欠いた為に、起こるべきして起こった事象と言えます。

地元ベテランでもその両方が著しく不足するハンター多数が返り討ちの現状から、その両方が更に超著しく不足する一般にハンターに商業的に撃たせるには、そう言う能力が十分にある複数人の同行支援を受けなければ、不可能であり、実質的にヒグマガイド猟は成立しません。

そしてかつてはヒグマの毛皮は50万円前後しましたが、現在はネットで10万円以下、鞣し代にもなりません。ヒグマの価値はそこまで低下しており、この意味からもヒグマガイド猟は成立しません。

  ヒグマの駆除行政。
クマの駆除に対し批判の声もある中、北海道は公式HPで、ハンターによるクマ捕獲への理解を呼び掛けています。これまで表示回数は2100万回を超え、大きな反響を呼んでいます。

今後はハンターの報酬や弾の購入費用の補助に乗り出します。市町村が行う「春期管理捕獲」が対象で、28日からの定例道議会に1500万円の補正予算案を提出する事にしています。

そんな中で、今問題となっているのがハンターの不足です。
道によりますと、道内のハンターの人数は2021年時点で6639人。

この40年程で3分の1に減って  います。この中で本当にヒグマ猟に耐えられるハンターは、恐らく10人程度でしょう。「迫力負け」と「恐怖負け」は、元々10~100人に1人の特別なセンスが無ければ不可能です。

その特別センスがある人が10年の経験を要するのですから、その出動手当は半日で3万円、1日5万円は極めて妥当な価格であり、成功報酬はこれの10倍程度が妥当です。

しかし現実にはパートタイマー並時給の1000円程度の支給に留まっています。実際に捕獲能力のなくなった、70代の戦力外の猟友会御老人にはそれ位が妥当と言えるでしょう。

話は別件ですが、ケンさんが参加していたバレーボールチームは、60才を過ぎた頃から、反応遅れでプレー続行が不可能となり、全てのチームが65才までに解散し、ハンターにもこれが適用されると思われ、使えるのは60歳まで、65才がリミットです。





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Posted by little-ken  at 15:17 │ハンティング