2023年01月31日

ボス争い トリプル捕獲。

ライフル射撃の憧れは300m遠射、夢は超大物エゾ鹿のランニング射撃5発5中です。その出発点である「フリンチング対策」を完成されれば、達成が可能となる、それが「ワンホール射撃」でした。ライフル銃運用者としては一生に1度位は達成したいモノです。

そのフリンチング対策は巻き込まれた交通事故のリハビリ中に偶然得られ、そこから運命が変わりました。そしてこの交通事故により、ケンさんは2.0共4.0とも言える自慢の視力を失い、狩猟方法の変更を余儀なくされました。その経緯を紹介したいと思います。

 ワンホール射撃:2000年末に巻き込まれた交通事故で骨折7ケ所と右目が動かなくなりました。骨折は1か月で繋がり、その後の数カ月のリハビリで概ね元通りとなりました。

目の方も2か月後の手術により動く様になりましたが、見る方向によりズレが著しく違い、まっすぐ歩く事も出来ず、距離感も掴めず、約2年間は1人で外出する事が出来ずにいました。

家では銃のドライファイアと素振りのスイング射撃の練習位しか行えず、射撃場には2年程行けずにいましたが、2年後にやっと新しい眼にも慣れ、何とか距離感や方向感覚が掴める様になり、久しぶりに20発の予定で実射に行きました。実は愛銃H&Kオートも交通事故で骨折、ストックが折れました。

保険で新品ストックに換えましたが、再開1発目の射撃は50mで20㎝もズレており、この銃はもうダメかなと思いました。しかし撃つ毎に弾着は中央に寄って来まして、これは行けるかもと思いました。

10発で弾着も概ね安定して来ましたので、スコープ調整し、中央に弾着が来る様にセットし、150m射撃に切り替えました。そして黙って観的せずに5発撃ちました。的紙には右端に大き目の穴が1個だけ、残りは弾着不明、「何だこりゃ~」、やはりこの銃はもはや使い物にならないのかと思いました。
ボス争い トリプル捕獲。
しかし家に帰ってからよく見ますと、拡大写真1の様に5発が8㎜のワンホール射撃だったのです。2002年の事でした。そうとは知らないケンさんは、本日最後の射撃に入りました。

弾着が中央に来る様にもう1度スコープ調整をし、1発目を撃ちました。概ね中央にヒット、イイ感じです。続いて2発目、撃ちました。これも悪くない感じで引き金が落ちましたが、観的スコープで見ると弾着不明でした。続いて撃った3発目も同様でした。4発目と5発目はもう観的をせずに撃ちました。
ボス争い トリプル捕獲。
標的紙を回収に行ってビックリ、5発が12㎜のワンホールが達成されていたのです。2002年の事でした。弾痕はそれまで散ると思っていたので、1ホールは全くの想定外でした。

Min.ワンホールは5発8㎜ですが、それはベンチレスト定義としての話、狩猟では直径15㎝の急所にヒットしなければ意味がありません。直径15㎝には5発8㎜の記録は中心から8㎝程ズレ」ており、急所を外し兼ねません。それ故にケンさんの最高記録は写真2の5発12㎜としています。

実は最初からフリンチング対策で、ドライファイアを2年続けたのではありません。しかし結果的に2年間のドライファイアは銃の発射には反動を伴わないと体を騙す事が出来、その結果として完全なフリンチング対策が完成し、射撃再開のその日に、ワンホール射撃が達成されました。行うべき練習は射撃には反動を伴わないと、体を騙す為の練習でした。

銃は普及品のH&Kオート、弾はラプアの185gr安売り市販弾、スコープは4倍固定タスコ安物、驚きました。市販普及品のセットでも、フリンチング対策さえ完璧ならば、ワンホール射撃が達成出来たのです。

高精度を謳う高額カスタム銃も、高精度な高額スコープも、そしてこれまた高精度射撃には絶対に避けて通れないと思わされていた高精度リロード弾も、全てが全く不要でした。最初から行うべきはコレだったのです。

そしてこれ以後、不可能だった項目にも順次手が届き始めました。そして2006年には銃をH&Kオートからサコー75に換えた途端、全ての憧れの項目が達成されました。この面からもライフル銃はボルトアクションが1番良いと思います。

 ポイント猟の開拓:交通事故以前の狩猟方法は広大なモンゴル丘等を除き、自慢の視力を生かし、林道流しで木の陰の隠れる鹿を発見して撃ち獲る手法でした。

交通事故リハビリのお陰で、フリンチング対策を完了し、射撃技術は大幅に上がりましたが、従来の狩猟方法は視力不足で不可能となりました。尚、視力不足とは言え、視力は1.5で並程度でした。

そこで新しく考えた手法は鹿の行動を読み、牧草地に出て来る、丸見えの鹿と勝負する手法でした。この過程で方向音痴対策も並行して進めました。するとやはり1年強で方向音痴も克服され、過去の鹿の行動データが立体的に繋がり、ポイント猟が可能になりました。

ポイント猟とはケンさんが付けた名称ですが、季節の時期、積雪の経緯、天候の経緯、月例の経緯等々と、鹿の行動を合わせて考えると、当日の朝にならないと最終的に決断が付きませんが、今日の今なら、鹿は何処にいるのかが分かる様になりました。

2002年から仕事を卒業し、紋別にエゾ鹿のハンティングスクールを開講、連日エゾ鹿猟が可能になり、ポイント猟を開拓する事が出来ました。スクール初期には朝夕各1回ずつの出会いしか予測は出来ませんでしたが、やがて鹿の行動が分かって来ると朝2番目以降の行動も予測が可能となりました。

2003年には1日平均の出会いは3回可能となり、2005年頃には1日5回の出会いが可能となりました。これと並行して、初心者の事前教育に努めた結果、ハンティングスクール開講16年間で捕獲ゼロを1人も出さずに済みました。これはポイント猟開拓と共にケンさんの誇りの1つです。

 フリンチング:射撃精度が出せない原因の全ては体が反動を嫌うフリンチングにあり、銃には反動が必ず発生し、フリンチングは射手の体が反動を嫌う生体反応ですから、無くす事は不可能です。原因が反動にある訳ですから、反動の強い口径は大幅に不利となります。

従いまして根本的な対策としては、銃を撃っても反動は発生しないと、体を騙す事に成功する以外に、これを完璧に乗り越える方法はありません。2年間の実射なしがケンさんにワンホール射撃達成を呼び込みました。

フリンチングをゼロにして銃の性能を十分に発揮させれば、現在の市販銃なら自動的に ワンホールは達成され、300mの遠射も僅かな落差を補正すれば自動的に命中する様になります。

ケンさんの場合、骨折と眼の手術により、実射をしないイメージトレーニングとドライファイアに2年間に及んだ事で、結果的に射撃には反動が伴わないと体を完全に騙す事が出来たのです。

射撃場に多数通って、ガンガン撃てば上手くなると言うコースは原理上から無かったのです。撃てば反動によるフリンチングは直ちにブリ返しますので、実射は必要最小限に留め、更に実射をする前に10度以上のドライファイアの確認練習に効果がありました。

更にケンさんが実施して効果があったのは「そっと撃つ」事を心に念ずるオマジナイでした。これも効果は絶大であり、これを行う様になってからの実戦の失中率はゼロになりました。

元々射撃は精神的な物が多く、当たると思えば命中し、不案が少しでもあれば命中率の低下ではなく、カスリもしない失中に激変します。

 スナップショット50m:至近距離で獲物を銃口で指差す様に向け、そのまま肩に真直ぐ引き寄せます。頭は発砲の決断と同時にすでに最終位置に移動を完了しており、銃を引き寄せて来ますと、射手にそのつもりがあれば、銃が肩に着く前から、やや不完全ですが、スコープを通し、獲物の急所が目に入って来ます。その時点で照準誤差が許容範囲であれば、銃が肩に着く前に発砲します。

西部劇の腰ダメ早撃ちの様に、一見すると勘だけの無照準の様に見えますが、スナップショットの照準は確実ですから、撃てば必ず命中し、スコープに捉えられなかったと言う言葉は一切不要になります。

銃は早く撃てるに越した事はありませんから、銃を取り扱えると言う事は、スナップショットが出来る事を意味する、そんな時代が来るとイイナと思います。ボルトアクション銃の場合は、このスナップショットに装填と安全装置解除を入れても時間は殆ど増えません。従ってボルトアクション銃は最も安全な銃になります。

 アバウト早撃ち150m:実戦で狙う急所は直径で約15㎝です。平均的ベテランライフルマンの有効射程は100mであり、150m以遠の射撃はかなり高難度の射撃に分類されます。

一方ワンホールを狙える腕があれば、直径15㎝は1桁大きく、精密に狙わなくてもアバウトな早撃ちで十分命中させられます。当たると思う射撃は必ず命中します。これが中距離を早撃ちするテクニックです。

 .遠射300m
:ライフル銃は200mまでは落差補正無しで射撃出来ますが、300mは落差を補正しなければなりません。しかし適正落差を補正すれば、命中させる事は比較的容易です。

軍用狙撃銃では射程1000m以上を謳っておりますが、それは縦に長い人間に命中させる事を目的としております。狩猟では直径15㎝の急所にヒットさせなければ意味が薄くなり、精度基準が違う為、同じライフル銃と弾であっても、狩猟用としては一般に最大射程は300m程度が限界となります。

思えば1984年、レミントン1100ディアーガンで始まったスラグ弾射撃50mでは、25㎝角SB50m用の的紙から少しハミ出しました。そしてこれは類似形状のライフルのレミントン742でも類似結果でした。

そして10年が過ぎても100mの急所がまだ怪しげな射撃技術でした。やがて100mなら概ね確実に仕留められる様になりましたが、200mはまだまだダメ元射撃でした。当初からすれば14年後の1998年、マグレですが300mの遠射に初成功しました。

2000年の交通事故で射撃場通いが2年間中断、2002年の再開後の初射撃でワンホールが達成されましたが、その後まもなく、2005年頃になりますと300m遠射は時々決まる様になり、2006年に銃をサコー75に換えた頃には外す気がしない様になりました。後刻に考えますと、全てはフリンチング対策に掛かっていました。

銃と弾は当たる様に出来ていても、人間の未熟な技術が、それを阻止していたのです。





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Posted by little-ken  at 11:50 │銃と弾