2020年08月10日

空中空き缶撃ちは可能か。

   投げた空き缶を撃つ
西部劇では空中に投げた空き缶を撃つと,缶が跳ね上がり落ちてくる空き缶をまた撃ち、また跳ね上がる、それを繰り返す芸当がよく披露されます。あれは本当に出来るのか?  
左掌で撃鉄を叩く様にコッキングするので、コッキング時に銃がブレ、出来るのは伝説の名人クラスだけに留まると思われます。

では空中に投げた空き缶撃ち自体は可能か?  
これはケンさんにも実際に出来ましたから十分に可能です。
それは難しいのか?  投げた空き缶の未来位置に弾を送る事も不可能ではありませんが、ケンさんはもっと 簡単に、投げた空き缶が失速して空中に止まるタイミングと位置を予測し、スナップショットをしていました。ピストル、ライフル、ショットガン、そしてパチンコでも命中させられました。
但し、国内でこれをやりますとパチンコ以外は違法になりますので注意して下さい。

   戦闘機の機銃は当たるのか?
当たりますが、かなり難しいと思います。と言うのはプロペラ戦闘機と言うのは原理的に安定直進しないからです。それは作用反作用の法則により、プロペラの反動で飛行機が傾こうとします。更にプロペラで掻き回された空気の流れは斜めの渦巻きとなり、後方に位置する方向舵等に大きな横向きの力を発生します。

飛び道具研究家のケンさんは戦闘機型の練習機でライセンス取得しましたから分かりますが、離陸開始時の スロットル全開時には直進しないの程度ではなく、飛行機は30度以上ずれた方向に進もうとします。

ずれる方向はプロペラの回転方向によります。離陸直前でもまだ方向舵30%位の当て舵をして、飛行機は15度位機種を振ったままで滑走路を直進します。そして速度が上がれば当て舵は減少し、巡航高度の巡航速度で 水平飛行する時に手放しでも直進する様に、飛行機は予め少し斜めに捻って出来ています。スロットルを開くと 上がるのは速度ではなく高度です。勿論プロペラ反力や渦巻き後流が強くなりますから当て舵が必要です。

速度を上げる時は降下します。すると機体が斜めに出来ていますから、今度は離陸時と反対側に機体が持って行かれます。当て舵をして進路を保持するのですが、飛行機は離陸時とは反対のかなり機種を振っています。更に降下を続けますと過速状態に陥り、制御困難となりやがて空中分解してしまいます。

そうならない様にスロットルを絞れば増々機体側が強くなり、離陸時の反対側の強い当て舵が必要になります。機銃は飛行機の前方に向けて固定取付けされていますから、斜めに飛んでいては絶対に当てられません。

そこで短時間だけ、飛行機を正しく敵機に向けます。飛行機は斜めに飛んでいるのですから、すぐに照準がずれてしまいます。WW2のエースの殆んどはド接近して射撃直前に機種を敵に向け、素速く射撃して離脱しています。更に実戦では敵機の被弾時の破片を喰らう事無く、ぶつからない様に離脱しなければなりません。そんな訳で プロペラ戦闘機の機銃を命中させる事はかなり特殊技術、ベテラン戦闘機乗り10人中の1人程度となります。

そんな経緯からアメリカ軍が採用した戦術は4機編隊2つを1ユニットとし、前の4機の1番機が敵機を墜とす係で、2番機はその後方支援、3&4番機は1&2番機の後方支援となります。第2編隊の4機は第1編隊4機の後方支援をする係になります。敵戦闘機が近付くと狙われている味方の飛行機に離脱方向の指示を出します。
その方向とは後方支援係がショートカットで急行し救援出来る方向です。
そして当たらない機銃ですが斜め横方向から撃って敵を追い払うのが任務です。
空中空き缶撃ちは可能か。空中空き缶撃ちは可能か。
飛行機を100m先に飛行機に向け正しくセットする事自体かなり精密な操作を必要とします。更にそれが絶対に真っ直ぐ飛ばない飛行機を真っすぐ目標に向けるのですから、かなり困難と言えます。飛行機が正しく向く僅かな時間に照準器に完璧に捉えられる様な読みを入れた操縦が必要となり、戦闘機からの射撃は極めて至難です。

ケンさんは実機の空戦で2回成功しています。逃げる敵機を0.3秒以上照準器に捉えると撃墜と判断されます。勿論実弾の実戦ではなく、レーザー光線を使った模擬空戦ですがやるべき事は同じです。
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   カモ撃ちの遠射
カモ撃ち(カルガモ&マガモ)の遠射では弾速とカモの飛行速度比が小さく、リード合わせがかなり困難です。この場合のベストな装弾は多数の実戦経験から、直径2.4㎜の7.5号の32gです。初速は余り速くなく350m/s 程度、しかし途中弾速低下が大きいので平均弾速は250m/s、これに対し追い風に乗ったカモの飛行速度は80㎞/hの22m/s、カモが50m先を真横に飛んで行くなら、弾の飛行時間は0.2秒、リードは4.4mとなりますが、 50mフルチョークの有効パターンは直径60cmですから、リードを±30cm以内でなければ墜ちません。

距離50mを45mと読めばリードは4.0mとなり、それだけで失中になってしまいます。もちろん鳥の飛行速度が 10%ズレても類似結果になります。つまり距離も速度も読みが概ね完璧でなければ、リードを完璧に合わせる事は絶望的と言えます。そこでケンさんは60cmピッチの高速3連射で180cmのパターンを作り、そこにカモを  飛び込ませる様にし、ケンさんの撃墜率は1桁アップとなり、遠射のリード合わせの問題から解放されました。下写真は友人との共猟でしたが、友人は高速3連射をマスターしておらず10対0の捕獲結果に終わりました。

尚、高速3連射ですが、反動の逃がし方は体全体で行います。
上半身の力を抜いておき、銃の跳ね上がりは左手で引き込む様に阻止をしますが、反動は体全体を後退させ、射撃開始時には前足80%重心であったのが終了時には後足80%重心に変わります。
空中空き缶撃ちは可能か。空中空き缶撃ちは可能か。

   カモの隠密接近時の大猟
海岸や河岸、或いはため池等でカモが付いている場所を発見する事もあると思います。
こんな時の散弾銃は情けない程の短射程、このカモに如何にして十分な射撃距離である20~30mまで接近し、如何に連射して大猟に結び付けるかのお話です。カモは視力も非常に良く、音に対しても敏感です。まずは姿を見られず音も立てずに接近する事が原則ですが、現場の事情からすればそうは行かない事情だらけです。

そう言うカモの付き場は条件の揃った時にはまた来ますから、音を立てず、姿も見られない様なアプローチルートを事前工事で作っておく事が次回の成功に続ながります。そんな場所を10カ所も持っていれば毎回何処かにはカモが付いていますから何時も大猟が可能です。

カモへの接近時の注意としてカモが首を上げたら、ハンターは完璧なフリーズに入ります。
5分程度で警戒は解けますのでそうなったらまた前進します。何度かそう言う警戒を乗り越えて射撃ポイントに着きました。すぐに射撃開始しますと、カモは何となく異変を感じており、すぐに飛び立ちますのでダブル撃墜が 限界ですが、射撃場所に到着後に完全に警戒が解けるまで更に数分待ちながら、草の間からカモをよく観察し、第1撃は2羽ダブルを狙います。銃を向けたその瞬間カモがフリーズになり、ダブルは難しくありません。

第2撃以降も群れの濃い場所の検討を予め付けておきます。そうする事により、良い獲物ばかりを2撃以降も毎回少なく共1羽、上手く行けば複数撃墜も期待出来、定数捕獲も夢ではなくなります。
ケンさんは4連発時代や5連発時代には当時の定数であった8羽とか10羽を一瞬で捕獲していました。そんな場数をたくさん経験している内に10~20羽が一斉に飛び立っても、その中から大きな良い獲物だけを選んで墜とせる様になりました。前ページ右写真のアオクビ3羽はマガモ10数羽の一斉飛び立ちから戴きました。

   引き止まり射撃時のリードに付いて
3項で約4.4mのリードが必要であるとの計算結果が出ましたが、それはスイングを止めない正しいショットガン射撃が行われた場合に限られます。実際のハンターの95%以上が残念ながら引き止まり射撃をしています。引き止まり射撃に陥る原因はフリンチングです。銃の反動に身構えてスイングが止まってドカンとなるのです。フリンチング射撃ですと命中率は近距離の低速時を除いて絶望的な情けないレベルに留まります。

完全に銃を止めた場合の射撃は事実上ありませんが、スイングを止めたままの発射とすれば命中させられる 条件は反応時間を平均値の0.4秒、弾の飛行時間と合わせて0.6秒、リードは13.2mとなります。

これを1発射撃で合わせる事は絶望的になります。仮にリードが合っていても引き金のタイミングが0.014秒ズレますと失中となってしまい、これを合わせるのは神業となり、引き止まり射撃の遠射は絶望的難易度になります。

   ライフル射撃
ライフル射撃時でも反動を受ける為に体が身構えるまでは同じですが、それにより精密照準がずれてドカンとなり、銃に300m射撃能力があっても、50~100mが限界となります。
銃だけに撃たせる事が出来れば全て解決します。

ランニング射撃も銃には200mの能力が十分にありますが、静止射撃とは理論が全く違うので対処不能となります。
ライフルによるスイング射撃は正しいショットガンの技術があればそのまま使えますが、しかし引き止まり射撃をするハンターが95%以上でこの場合は使えません。
空中空き缶撃ちは可能か。
写真は150mで生徒が失中後、ケンさんのランニング射撃の第1弾がショルダーの急所を撃ち抜き即死、鹿はその後2回転して止まりました。被弾の瞬間には被弾部が膨れ上がり、水蒸気を噴き出しているのが見えます。スイングショットは決して難しいモノではなく、そして当初ケンさんが思っていたよりも、遥かに高命中率でした。

5日間に150m級の5発5中を3度記録(3連続に近い)したのですから、最早決してマグレではありません。銃はショットガンもライフル銃も狙って撃つのではなく、スイング状態のまま向けて見ないで撃つのが正解です。これが出来る様になって新しい世界が広がりました。

初心者の銃は良く狙っても当たりません。その結果として更に慎重にじっくり狙う方向になりますが、それは照準技術の問題ではなく、フリンチング対策の未達成が主原因です。ライフル銃は銃だけに撃たせれば、そして十分な練習を積めば、短時間照準でも十分に命中します。

照準とは肩に当てた銃を小手先と目で行うのでは なく、体全体で行います。そう言うつもりの練習をしますと、スコープは自動的に急所を捉えますので必要であれば微調整を少し加えて引き金を引きます。じっと狙い込むとブレて、照準が定まらなくなります。

300mの遠射であっても銃だけに撃たせれば、銃の性能はあり、弾の落差は多少ありますが、前足軸線を撃てば何処にヒットしてもその場に倒れ、落差補正から解放されます。
その場の即倒は多少無理でも失中する気がしなくなります。射撃とはそう言う様な心で撃つ物だと思っています。

それに必要なステップはやはり150mの1ホールを達成する事だと思います。ケンさんも2002年にワンホールを達成後、急速に新しい世界が連鎖的に開きまして、2006年には憧れの全ての項目を達成出来ました。

フリンチングは本能的な物ですからその克服は簡単ではありませんが、しぶとくドライファイアの訓練をすれば 必ず全員が克服出来ます。銃を特別な方法で扱えと言っているのではなく、銃だけに撃たせれば良いのです。

従いまして特別な高精度を謳っているカスタム銃や、高精度には不可欠を謳っている高級スコープを購入しても、フリンチング対策には全く効果はありません。効果のあるのはその予算を実戦に投入し、経験を積む事です。

   カスタム銃が役に立たなかった実例
キングクラフト カスタム : スコープを含めますと概ね1丁が600万円、300mで数cmのワンホール崩れを  実際に立ち合い射撃で出して、その上で引き渡しをする会社でした。
ケンさんは1998年頃、根室で歯科医3人のグループを案内した事があります。
空中空き缶撃ちは可能か。
3人が持っていた銃がこのキングクラフトカスタムの300ウインマグ、噂には聞いていましたが、ケンさんも実物を見るのは初めてでした。結論は300mの1ホールどころか3人共実戦100mはダメ、50mも怪しげでした。射撃技術不足と狩猟経験不足もありますが、迫力負けもあった様です。それでも当時は50mを大幅に切る様なデメキンと呼ばれる鹿との出会いも稀にあり、3日間猟で全員が小物1頭以上の捕獲になりました。

このキングクラフトはアフリカ猟の為に購入した銃でした。シンワールド主催の南アフリカのアンテロープ5種猟で1式200万円でした。そして成果は総支払額400万円で一応目標動物の全てを達成したそうです。

通常は私有地に放牧された動物を100m前後から撃つのですが、あの腕前では迫力負け等で50mでもまともな勝負が出来ず、恐らく最後の手段として更なる特別料金で、養殖場から直送された放牧前の動物を狭い柵の中で至近距離から射撃、フィールドに持ち出し写真撮影したと思われます。これではハンティングとは言えません。

他にもイカサマハンティングの手法はあり、1つは支援射撃、客が失中してからガイドが撃つ場合もありますが、ランニング射撃の出来るガイドも少なく、多くは同時撃ちをします。
それで客の弾が命中した事にするのです。
2番目は代理射撃です。客に代わってガイドが撃ち、共に客が獲った事にして写真を撮影します。

1990年頃のライフル初心者教習の事です。
的紙は100mのライフル用、銃はウインチェスター70、口径は243、サイトはオープンサイトで射撃距離は50mでした。合格ラインは20発で40点以上です。

5名受験し、ケンさんは10発以下で40点を達成しましたが、他の4名は追試、1回目の追試は射撃距離が半分、これで 1名が追加合格、他の3名はあろう事か10m射撃でやっと 合格しましたが、追試組がまともなライフル人生を送る事が出来たのかはかなり疑問です。






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Posted by little-ken  at 09:53 │ハンティング銃と弾