2022年10月07日

テレビ取材-3.

  フジTV,海外猟の取材、2018年頃。
海外狩猟の同行取材させて欲しいと言って来ました。聞けば取材費は出せないから、ケンさんが自分の費用で行く時に同行させて欲しいと言う、虫の良い依頼内容でした。

ケンさんは2016年のナミビア猟を最後にするつもりでしたから、もう海外出撃の予定はありません。そんな事から話は流れましたが、昨今の海外猟を紹介しましょう。

アフリカ猟は自然の猟場ではなく、大規模ランチ猟が主流です。
それは何かと言えば、ハンターを多数受け入れ狩猟をさせるのですが、野性動物がそんなには いる筈もなく、養殖専門業者から動物を買い入れ、それを私有地猟場に放牧して撃たせます。

動物は撃たれた経験がないので、シロートでも100m以内から、超じっくり狙いで撃てます。
ランチ猟はエゾ鹿猟より遥かにイージーな、本物とは言い難い狩猟ですが、これが現在の主流です。

ランチ猟は従前からありました。2009年、我々をガイドしてくれたアレックス氏は数年後、ランチ猟が圧倒的に増えつつある事を感じ、ハンティングガイドを辞めて、野性動物商に転職、自家用ヘリを所有するまでになりました。

もう一つはファーム猟です。これは私有地に住む本物の野性動物と勝負しますので、エゾ鹿猟より遥かに高難度、完璧に本物の狩猟と言えます。動物はある程度撃たれ慣れしているので、通常
ハンターが余り撃たない距離にいます。高人気のクドウは300m以遠で、しかも早撃ちを要します。

ケンさんの捕獲したクドウ2頭は300mと380mでした。かなり遠距離ですが、それでもブッシュからブッシュに駆け込み照準時間をもらえません。

ケンさんの選んだ手法は、エゾ鹿猟でも時々使う「待ってたホイ猟」でした。次に止まる場所を予測して、そこに銃を照準し、スコープに捉えるや否やで発砲します。ファーム猟は大物捕獲が可能ですが、非常に高難度な射撃技術を要します。

もし本物の狩猟である、ファーム猟を取材するとしたら、その瞬間を撮影する事は自室不可能と なり、至難の業となる事でしょう。

しかし本物狩猟とは言えないランチ猟であれば、時間的余裕がありますから、映画撮影の様に カメラがポジション取りをしてから、発砲する事も可能となります。
巷のマスコミには本物の狩猟を撮る事は出来ず、ヤラセ撮影の能力しかありません。

  映画サファリの配布用資料。2017年。
テレビ取材-3.テレビ取材-3.テレビ取材-3.
2018年新春に国内放映される、映画サファリの配布資料作成の依頼が来ました。
そしてケンさんが書いたのが、アフリカ猟の歴史、そして終わりなき情熱でした。

 アフリカ猟の歴史のあらすじ。
15世紀から17世に掛けた大航海時代、アフリカの中南部には奇跡の大型動物が多数生息して いる事が紹介されました。そこから貴族や金持ちハンターのアフリカ猟が始まりました。

この頃の銃身は日本の火縄銃と同じ巻針式、弾は先込め式、火薬は黒色火薬、しかし発火方式は燧石式に発展していました。日本では初期の火縄銃が300年間も発展する事なく使われました。

やがて時代は変わり、18世紀になりますと、ヨーロッパの鉄は鉄鉱石とコークスから大量に生産  される様になり、1864年には薬莢式の弾が開発され、超大口径の8番(21㎜)の特製水平2連銃が作られ、これがアフリカ猟に使われました。貴族は競って大物を求め、アフリカに出猟しました。

1884年、無煙火薬が発明されると、一気に弾速は2倍、エネルギーは4倍となり、20番(15㎜)口径でも威力を持て余す様な弾が製造可能となり、こうした弾をニトロエクスプレスと言います。

直訳すれば無煙火薬の高速弾になりますが、今で言えば重量低速弾となります。現在の主流の弾は300mの遠射が可能な、軽量高速弾になっています。昨今は遠射も可能な338ウインチェスターマグナム等が良く使われています。

アフリカ猟で高名な弾は、象撃ちの600ニトロエクスプレス(20番口径)、現在は使う人はいません。この時代にはアフリカを訪れるハンターは急増し、間もなく撃たれ慣れした獲物との距離は遠くなり、重量低速弾は適さなくなり、ニトロエクスプレス時代は短期に終わりました。

ハンターは年を追う毎に急速に増えましたが、激変はWW2前後でした。アフリカは大規模開拓 され牧場となり、そこにいた数え切れない程の大量の動物は、駆除されWW2の兵士の食糧となりました。90%の動物がいなくなりましたが、それでもまだ動物は多数残っていたと言えました。

更に大きく変わったのはアフリカ猟のブームが起こり、マグナム銃が大量に作られた、第2次大戦後でした。日本でも1960年前後にはアフリカ猟ブームが起こり、当時の銃砲年鑑の銃リストには
アフリカ猟用の大口径銃や、弾のリストには象撃ち用の600ニトロエクスプレス等が載っていました。

日本のマスコミはプロハンターを雇い、競ってアフリカ猟を紹介し、狩猟熱を煽りました。
大藪晴彦氏の「ビッグゲーム」や柳田佳久氏の「ライフルハンター」もこの時期に作られました。

毎週日曜日にはアフリカ猟特集の定期テレビ番組があり、ケンさんもこのウイルスに感染し、大人になったら狩猟をやろうと決め、何時かはアフリカ猟を目指す様になりました。

しかしこのアフリカ猟ブームは銃業界がWW2の特需が終わった為に起こした、業界主導ブームであり、そのトップにアフリカンがあり、2番目にはアラスカンがありました。

マグナムブームは世界中に及び、日本でもエゾ鹿猟にはマグナムが必要と言う時代でした。未熟な射撃技術を補い即倒率を上げると言うのが謳い文句でしたが、その様な効果は皆無、今では誰もマグナムを使わなくなりました。

もちろんアフリカ猟には超強力な銃が必要、と言う事も銃業界の陰謀でした。しかしアフリカ猟は人気が集中し、ゲーム価格は毎年大幅に上がりました。そして庶民に取って手が届く限界が2004年でした。

それはケンさんがアフリカ猟に向け、具体的に行動を開始した年でした。2004年価格では象が5900ドル、犀が8500ドル、豹もライオンも僅か3000ドル、ケープバッファローに至っては、僅か1000ドルでした。

ケンさんは2016年のナミビア猟を最後としましたが、この頃にはエランドもクドウも2000ドル、他は高額過ぎて手が出せませんでした。

また2015年がその次のターニングポイントになりました。その10年ほど前から中国成金が大挙  してアフリカを訪れる様になったからです。

ケンさんが初めてナミビアを訪れたのは2009年、この時は飛行機に乗り合わせたハンターはゼロでしたが、2012年は他に3組、2016年には何と12組でした。更に以前は1日1便しかなかった飛行便は、2015年から1日3便になりました。

ナミビアに人気が集中した理由は、今まで主力の南アフリカの動物を獲り尽くしたからでした。ナミビアもこのペースで行けば、10年で獲り尽くされますが、幸いコロナで3年ほど永らえています。

もちろん現在の主流は大規模狩猟場に、養殖動物を放牧して狩猟するランチ猟です。ハンターの数が多過ぎ、養殖動物(本来5年)が間に合わず、繰り上げ卒業させる様になり、ますます大物捕獲が困難となった、それがアフリカ猟の現状です。 終わりなき情熱の紹介は頁の関係で省きます。
テレビ取材-3.テレビ取材-3.テレビ取材-3.テレビ取材-3.
今後のアフリカ猟は、比較的繁殖の良い、ゲムズボックと呼ばれるオリックスや、ワイルドビーストと呼ばれるヌーや、レッドハートビーストや、スプリングボック&ブレスボック(少し大きい)や、イボイノシシに限られて来ると思われます。

遠からずアフリカがダメになると、エゾ鹿猟の価値が一段と上がって来ます。
法律的な問題を対策すれば、エゾ鹿は完全なワールドサイズ、世界断トツの生息密度ですから、世界のハンターが注目すると思います。




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Posted by little-ken  at 15:42 │海外狩猟狩猟雑誌「けもの道」