2018年06月30日

レミントン700の欠陥。

レミントン社が2018年に倒産しました。銃器業界だけではなくアメリカではどの業界も倒産や合併や身売りは極普通にある事ですが、NO.1メーカーとなると話はやや別になります。
日本のハンターは最早絶滅寸前ですが、世界の若者も以前ほどハンティングに興味を示さなくなり、日本ほど顕著ではありませんが大幅減少しています。これはハンティングの魅力が減少したと言うより、もっと手軽に楽しめる新しい遊びやスポーツが増えたからだと思います。

  1.究極のハンティングライフルと言われた ウインチェスターM70:1936年。
自働ライフルではライバルのレミントンに大きく出遅れてしまいましたが、ウインチェスター社のNO.1の地位はまだまだ不動でした。本銃は当時のボルトアクションのハンティングライフルの究極とまで言われたベストセラーモデル、初のハンティング専用モデルであり、口径は30-06から各種マグナムまでを設定。また1961年のベトナム戦で狙撃銃に採用され大きな  成果を上げたモデルとなり、これを機に一気に世界の超ベストセラーになりました。

非常に優れた命中精度と信頼性があり、セミオート銃に傾きかけたハンティングライフルをボルトアクション銃に呼び戻すきっかけを本銃は作りました。
しかし超抜群の好評が故に、かつて無い程の大量注文が軍民から殺到、ウインチェスター社はこれを捌く為に1964年に大胆なマイナーチェンジを企画、製造設備を持たないウイン  チェスター社は他の銃器メーカー多数に委託生産し、レミントン社もその1つでした。

しかしマイナーチェンジの結果は甚だ不評、ユーザーである軍からもハンターからも憤慨と共に拒絶される事となってしまい、売り上げは急速に落ち込みましたが、委託生産分は  それでもどんどん納品され、ウインチェスター社の経営を圧迫しました。
それ以後は軍民問わずライバルのレミントン社に王座を奪われ、現在に至ります。

  2.ウインチェスターの自滅で浮上した レミントン700:1962年。
名銃ウインチェスター70に押され、評判が上がらなかった720シリーズから1962年に改良されモデル700となりました。口径は30-06や308から各種マグナムまで。
当初はパッとしない銃でしたが、2年後の1964年には超好評だったウインチェスター70が  マイナーチェンジ失敗の自滅で浮上し、以後は現在までレミントン社の優位が続いています。

更にレミントン優勢の決定打となったのは4年後1966年に追加デビューしたヘビー銃身の バーミンターでした。抜群の命中率(100mワンホールが可能)を誇り、海兵隊の狙撃銃M40のベースと(狙撃銃への改造は海兵隊)なり 、これを機に軍民共に不動の地位を築き上げました。

海兵隊M40の好評から、レミントン社も類似の射撃仕様単発のM40及びそれにマガジンを装備したM40Xをシリーズ化させました。
M40Xはその後、各警察署の狙撃銃に採用され、1988年にはアメリカ陸軍のM24狙撃銃と  して採用され、近年は我が国の自衛隊や警察も同モデルを少数装備しています。

ここまでを読みますと、レミントン700と言うのは世界中で1番優れた完全無欠の銃だと 思われるかも知れませんが、事実はまるで違っていました。
後述の10項には筆者が運用したレミントン700の欠陥をまとめましたが、そう言う酷い欠陥を野放しにした経営が今回の倒産に結び付いたのはないかと、筆者は思っております。

  3.レミントン700の欠陥。
ベストセラーとして名高い銃である事は2項の通りですが、筆者は2005年の1シーズンだけ 本銃を運用し50頭余を捕獲しました。
その結果、数々のトラブルの要因を持つ酷い欠陥銃である事が分かりました。
レミントン700の欠陥。

トラブルの項目は全てマガジン周辺のトラブルでした。
 1. 弾をマガジンに入れる時、後ろに寄り過ぎると入りません。
 2. 中心から左に寄り過ぎるとニッチもサッチも出来ないポイントに入ってしまいます。
   固定マガジンを開けてジャム弾を排除しなければ回復出来ません。これは致命的です。
 3. 装填する時に時々ですが、弾底がボルトヘッドに収まらず、装填不能となりました。
 4. それ以外にもスムーズに装填出来る可能性は80~90%とジャム率の多い銃と感じました。
   2017年、U生徒がレミントン700のマガジン着脱式の新銃を購入しましたが、
   全く改善されていない処か更にもう少し酷い状態でした。
 5. SWATの取材記録を見る機会がありました。スナイパーは308の弾込めをしていました。
   そのつもりで見ていますと、トラブラない様に慎重に弾を込め、且つジャムらない様に
   注意して装填しておりましたから、あの欠陥はずっと放置されたままの様子でした。
 6. またレミントンで多種類の弾を試射しました所、50mで最大5cmのズレがありました。
   原因は不明ですが、他の銃ではこれ程までズレた事はなく、これでは十分な信頼を
   しろと言う方に無理があります。
   因みにサコーバーミンター改では海外猟を現地弾で行っておりますが、弾によって
   照準を変えた事は1度もありません。

ボルトアクションは絶対的な信頼性がある? とんでもない。
少なくともレミントン700はかなり不出来な欠陥銃、こんな銃を1流メーカーとしてよくも 恥ずかしくもなく売っているとずっと思っていました。倒産して当然だと筆者は思います。
写真の銃の元オーナーのS生徒も、そして筆者もこれに懲りてサコーに換えました。

レミントン700の酷評ばかりを書きましたが、良い点は頑丈である事と、水平状態で弾を1発マガジンの上に置けばボルト前進だけで装填出来る事の2つがあります。
この2つはリロードシューターには抜群の長所となり、彼らはレミントンを絶賛、それはマガジンを使わない単発運用専門である事と、精度のベストポイントがしばしばMax.ロード付近にある事からであり、その為に強度的な余裕の少ないサコーを酷評しています。

筆者のサコーに於ける装填トラブルは皆無でした。もしレミントンを運用していたら、稀に出会えた超大物チャンスの1部を装填不良で棒に振る事になり、またヒグマ戦でもヤバイ思いをする事になったかも知れません。

サコーも僅かにジャムりますが、少し注意すれば100%防止出来ます。
それはマガジンに弾を入れてボルトオープンで携帯する時、ボルトのガタ付きで初弾がやや前進してしまう事があり、その時はジャムる率がやや高くなります。これにはボルトを完全に前進させて弾を薬室に送り込み、装填しないで携帯する様にすれば100%防止出来ます。
もう1つは全長の短い弾やラウンドノーズ(ラプアナチュラリス)の場合、3発目がジャムる可能性が相当高くなる事でしたが、そう言う弾さえ使わなければ問題が起こる筈もありません。

ライフル銃のレミントン700はこの様にお粗末な銃でしたが、散弾銃レミントン1100の出来は概ね良好、丈夫で回転も安定しており、重くて錆び易い欠点はありますが、悪くない銃でした。筆者もレミントン11-87にはお世話になり、本州鹿の巻狩りの20連勝記録や、NZに於けるカナダガンやパラダイスダック猟でも抜群の結果を残せました。
チークピース再調整ですが、前者は2連射9発から8羽撃墜の7羽回収、後者は85発から47羽回収と共に脅威的な命中率を記録する事が出来ました。







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Posted by little-ken  at 10:24 │ハンティング銃と弾