2018年02月24日

ライフル銃の選択。

ライフル銃には他の銃にない大きなメリットがあり、多くのハンターが憧れます。
実は必ずしも万能ではなく、120m以下ではライフル銃のメリットはなく、50m以下ではデメリットの方が大きい、これがライフル銃の現実です。

ライフル銃のメリットがはっきり出せるのは150m超えの射撃だけなのですが、これを命中させると言う事は特殊な射撃技術を要します。銃と弾には300mの能力がありますが、90%以上のハンターは射撃技術不足でそれを発揮出来ないのが現状なのです。

ライフル銃は一般的に静止している標的専用ですが、走る鹿に当てる事は射撃距離が150m前後までであれば、それ程は難しい物ではありません。しかしそれには肉眼で見えている映像が古い虚像である事を理解出来れば、と言うちょっとした前提が付きます。

筆者は平均150m先を走る鹿に対して、2.7発で倒す事が出来る様になりました。それは3割強がヒットするのではなく、倒すのに複数弾を撃つ事も多いと言う意味でヒットの確率で言えば6割超えになります。しかしこの技術を教えても誰も出来ない所を見ると例外的と考えるべきかも知れません。

  ライフル銃のメリット:150m超だけです。
精度が高く近年の銃は市販弾でも100mで15mm程度に収まり、弾速が速く300mの遠射能力があります。特殊なランニング射撃技術があればですが、弾速が速いお陰で150m程度までは移動的であっても予想外によく当たります。

ライフル銃の精度追及にリロードと言うテクニックはかつては必需でした。しかし狩猟目的の高精度追及の為のリロードは市販弾の精度が画期的に向上した現在ではすでに無用となりました。
安く上げる為のリロードと言う方法は今も有効ですが、落とし穴に注意しなければなりません。

それは作業ミス率が工場製弾に比べて2桁高い事であり、肝心の貴重なチャンスを潰す事が無い様に入念なチェックが必要です。過去そのチェックが不十分で肝心の実戦を台無しにした生徒がかなりの複数に達しました。それらに対し市販弾は絶対的に不良品の無い安定した品質が魅力で、実戦にはこちらが絶対的にお奨め、世界のプロハンターもリロード弾は使いません。

10年の経験を要さないサボットスラグ銃(ハーフライフル)と言うのもありますが、弾速が遅く射程距離は150mに留まり、150m超の射撃はライフル銃の独断場です。
更に弾速の速いマグナムですと射程距離はややの程度で長くなり、魅力は微少ですが増す方向にあります。

  ライフル銃のデメリット:デメリットは意外と多く、近距離程その傾向が強く出ます。
特に通常鉛弾に多いのですが、銃口から出たばかりの弾頭は頭と尻を激しく振った状態にあり、その状態でヒットしたり、或いは弾速が設定以上の過速状態でヒットすると皮膚の表面で弾頭が爆発を起こしてしまい、鉛部分が全飛散してしまいダメージが中まで伝わりません。
その為に弾道&弾速が落ち着く150m以遠がライフル銃の強みを本当に発揮出来る距離となります。

また過速状態でなくても鉛弾頭は骨に命中しますとそこで同様に爆発してしまい、そこで威力を失ってしまい、半矢で逃げられてしまいます。
その弾頭が爆発するデメリットはエゾ鹿猟で有名となった銅弾頭またはA型フレームの上下セパレート構造の弾頭を選択すれば大幅に減少させる事は出来ます。
銅弾頭は鉛弾頭の欠点を対策する為に開発された新型の弾頭なのです。

しかしその最も近代的な銅弾頭であっても木の葉1枚にヒットすると弾頭が開いてしまい、変形した弾頭は行方不明になります。
つまりライフル弾は木の葉1枚をまともに貫通する事が出来ない、これが最大の欠点なのです。

また取得までに10年以上の装薬銃の経験を要し、用途も鹿&猪&熊の狩猟に限られる為、射撃用途で楽しむ事は出来ず、狩猟実績の提出もうるさくなります。
従って射撃距離によっては散弾を使うショットガンの方が有利であったり、サボットスラグ弾を使うハーフライフル銃の方が有利になります。
サボットスラグ銃は50mで20mm程度に収まり、木の葉如きでは弾頭が余り変形しない弾速帯であり、弾道の変化も少ないからです。

  ショットガンを敢えて選択:40m未満なら最強はショットガンです。
ライフル銃にはそう言うデメリットもある為、と言うより射程距離が40m未満であればショットガンこそが最強です。従って射程距離が20m前後の巻狩りではショットガンの方が絶対に有利です。
しかし6粒や9粒弾の大粒バックショットも非常に有効なのですが、猟友会からの間違った指導で禁止されております。

実はあまり知られておりませんが、ショットガンは1粒の威力には余り関係なく、ショットガン効果は被弾粒数にほぼ比例します。6粒や9粒を含めてバックショットは27粒弾が最高のお奨め弾なのです。27粒弾の4号バックショット、こちらは特に禁止されていません。使用機会は大幅に減少しておりますが、北海道でも鉛弾が使えるメリットがあります。

ではこれを発射する銃はどれが良いか?
ショットガンのメリットは散弾をバラ撒く事と更に連射が出来る事です。
従いまして鹿猟には22~24インチリブバレルのフルチョークのセミオートがベストです。
筆者は本州鹿の巻狩りでこれを運用し、連続20頭を失中も未回収も無く捕獲した記録を持ちますが、その要因は腕が半分、装備の良さが半分です。

通常はインプシリンダーで使われますが、実はフルチョークの方がメリットが大きく、27粒弾をフルチョークで運用しますと射程距離は40~45mに及びます。
これを超え100m前後までの機会がもし頻繁にあれば、サボットスラグ銃の方がライフル銃より何かに付けて有利です。

  ライフル銃の選択:業界の思惑に乗せられてはなりません。
ライフル銃のメリットは150mを超えないと発揮されず、ライフル銃は実質エゾ鹿専用銃と言えます。昨今のエゾ鹿は100~150mに多く、大物は150~250mに多くなります。
ではその型式や口径や照準器の選択に付いてお話ししましょう。

1.型式の選択:エゾ鹿に連射は不要、ボルト銃の圧勝です。
ライフル銃にはボルトアクション、セミオート、スライドアクションがあり、150m以内であればどの銃の精度でも問題ありません。しかし止まっている鹿に対して初弾で倒し切れなかった場合、逃げる鹿に次弾以降が命中する筈も無く、通常はエゾ鹿猟に連射は全く不要です。
スクールではマガジンを使わない単発連射ですが1日2頭前後と言う成果を上げており、連発機能は使わなくても成果に変わりはないと言い切れます。

またエゾ鹿猟では時に300m級の遠射もあり、フルフローティングバレルや、偏荷重を発生しないボルトの閉鎖構造等々、精度面から言ってもボルト銃の圧勝となります。
連射が不要で高精度が必要となれば最早答えは決まって来ますが、更にエゾ鹿猟では鹿の目前で無音装填する必要性も高く、その面で言ってもボルトアクション銃に落ち着きます。

また装填や脱砲は急いで行わなければならない事も多く、安全に出来る事が不可欠となります。その意味では安全装置を掛けたまま脱砲出来る事が望ましいのですが、その機能はサコーしか持っていません。ウインチェスターやルガーの様にセーフティーが3ポジションの場合は中央ポジションで概ねこの機能を果たします。

ライフル銃では連射その物が不要ですから、オートやスライドアクションはその存在価値が全く無くなります。連射の特別な事例に属しますが、筆者はオートとボルトの両方でランニング射撃を多数成功させましたが、ある時、気が付くとボルト銃の方がかなり速く連射しておりました。
ランニング射撃の連射でも後述の様にボルト銃の再肩付けの方が速いのです。

2.お試し遠征猟:お試しで捕獲する事は昔と違って難しくなりました。
エゾ鹿猟のお試し遠征を手持ち銃&ノーマルスラグ弾で安価にトライしてみたいと言う考えは誰にも浮かびます。しかしこの考えが通用したのは20年前まで、今では50m前後にいるエゾ鹿は殆どいなくなり、この考え方では捕獲の可能性が殆んど無くなりました。
但しエゾ鹿猟を見物すると言うなら話は別になります。

手持ち銃にハーフライフル替銃身だけ購入してと言う考え方もありますが、昨今のエゾ鹿は100m以遠におり、後述で説明するスコープが不可欠となりました。
更に100m先の急所に命中させる為にはそれなりの気合を入れた射撃技術が不可欠となり、道具さえあればお試し遠征で捕獲と言う考え方は10年前で終わり、こちらも今では全く通用しなくなりました。

そう言う経緯からエゾ鹿猟の捕獲が目的であるならばは、お試しではなく真面目に取り組む必要があります。どうせやるなら角長70cm超の体重120kgの大物エゾ鹿を捕獲しましょう。
それには中古銃でもOKですからスコープ専用銃のボルトアクション式のライフル銃またはハーフライフル銃を購入し、本格的な射撃練習をすれば、講師のスクールならば概ね全員が3日遠征の2年目でこれを捕獲成功しております。

3.照準器の選択:スコープの圧勝です。
照準器には50m以下がメインの昔ながらのオープンサイト、100m以下がメインのドットサイトやホローサイト、そして遠距離を含めて全てにベストなスコープサイトがあります。
昨今のエゾ鹿は100m以遠におり、その急所が狙えるのは最早スコープサイトしかありません。
スコープ専用銃またはチークピースを正しく調整したスコープ銃では走る鹿に対しても至近距離のスナップショットにも筆者の経験から申しますと十分に対処出来ます。
適性倍率は4~6倍です。3~9倍又は4~12倍辺の普及品が適当な選択です。

スナップショット&スイングショットと言いますが、正しく調整された銃を使い所定の練習をこなせば、銃を構えれば目標は瞬時に自動的に捉えられ、近距離なら肩に付く前に射撃可能です。
また連射速度も一見信じられないのですが、自動銃より再肩付けするボルト銃の方が速くなります。筆者は全捕獲の30%以上が走る鹿であり、至近距離のヒグマの出会い頭等にも全く不便は感じておりません。

スコープは走る鹿や至近距離には使えないと従来は思われていましたが、それはチークピースが合わない後付スコープの場合です。
そう言う事から、エゾ鹿猟にはボルト式のスコープ専用銃の選択が不可欠となり、その他の銃の型式や照準器の可能性は全く有り得ません。
ドットサイトやホローサイトは斜めから見ても照準出来る点をメリットとして謳っておりますが、構え方が決まれば必然的に命中する様になりますから、その考え方自体が不要です。

4.口径の選択:マグナムは誤差範囲、308が必然的にベストです。
ライフル銃大手弾薬メーカーの一覧表によれば、口径違い、弾頭の重さ違い、弾頭の潰れ具合の違い、等々で100種近くが並んでいます。
色々な動物を色々な場面で撃って、少しでも可能性を高くしようとした長い間の試行錯誤の結果がこの100種類になりました。

しかし日本で撃てるのは法的に鹿と猪と熊だけとなり、本州猟ではその必要性も全く無く、ヒグマは一般から対象外、用途は実質的にエゾ鹿専用になって来ます。
法的に弾頭は非鉛に限られ、更に法的な口径制限が6.5~9mmと言う事、市販弾薬や資材等の流通性を考えますと、答えは30口径の308に必然的に落ち着きます。

弾頭が鉛の場合はその欠陥を出さない為に、弾頭重量や形状等々の選択が考えられますが、弾頭が銅に限られれば話は150~165grだけとなりどちらも大差なく話は簡単です。
古い選択では30-06か308かと言う事が考えられますが、30-06は1906年制定の軍用カートリッジ、それが1950年代に軍用が更新され今に至るのが308ですから、わざわざ100年以上も前の古い物を好んで使う事はまともに考えても有り得ません。

マグナムかStdかの選択に付きましても、すでに誤差範囲であると言う結果が出ております。
エゾ鹿だけに限らず全ての獲物は直径150mm程の急所に正しくヒットさせないとその場に倒れませんが、マグナムは多少でもその可能性を高める目的で開発されました。
しかしスクールを通して主に300ウインマグと308の残念な未回収を多数見て参りましたが、そのパワー比は約1.4倍、効果も比例すれば良いのですが、実は全くの誤差範囲でした。

  5ナミビアポイント:どんな大物も必ずその場に即倒、この考えなら308で十分です。
その場に倒すヒットポイントもヘッドやネックではなく、もちろん心臓でもありません。その新しいポイントはナミビアのプロハンターから教わりましたのでナミビアポイント(NP)と呼んでおりますが、前足軸線上の背骨の交点である事があらゆる動物の共通点である事が分かりました。
NPは骨を貫くので銅弾でなければ成立しません。
スクールでもNPの考えを取り入れてから生徒の大物捕獲率は約3倍に向上しました。

NPは間違いなくその場に即倒し、最高の捕獲率である事は間違いありませんが、ショック死ポイントですから欠点として約20%が10~30秒後に起き上がります。
そして逃げられたらもう数kmでは止まる事は無く、間違いなく未回収となります。
これに対処として、倒れている内の最初の10秒以内にもう1発撃ち込む事をお奨め致します。

  6理想のライフル銃とは:筆者が思うにサコーバーミンターのライト&ショートモデルです。
筆者の経験からベストライフル銃はエゾ鹿流し猟だけでなく、全てのシチュエーションで最高の成果を発揮します。場所に合わせて銃をチョイスするのは最早古い考え方です。
その万能銃は下記の条件をマスターする銃となります。
    1.ボルトアクション銃。
    2.チークピースの合うスコープ専用銃。
    3.スコープの倍率は6倍の普及品。
    4.口径は308の工場製弾。
    5.使用弾は銅弾頭で弾頭重量は150~165gr。
    6.全長は1050mm前後。
    7.安全装置の操作性に優れる。
    8.スコープマウントが一体式。
    9.マガジンは複列着脱式。

そしてこれを満足する銃として筆者はサコー75バーミンターを選択し、ライト&ショートモデルはありませんから独自に作り上げました。
銃身側で5cmとストック側で2cmカットし、ストックを再整形し軽量化しました。

筆者も未熟時代にはかなり迷わされましたが、市販銃はすでにハンターの腕前以上に精度が良くなり、高額カスタム銃である必要は毛頭なくなり、スコープも普及品で要求精度を十分満たしています。サボットスラグ銃でこれらを完全に満足する銃はありませんが、ライフルと違って一生使う物でもなく、サベージボルト12番が安価で比較的良いと思います。

  7ライフル銃で達成したい項目:男なら前半は絶対に達成、出来れば全部達成しましょう。
    1.テーブル撃ち150m 5発1ホール。
    2.肩に着く前に撃つスナップショット。
    3.遠射300m以上。
    4.角長80cmオーバーの超大物。
    5.超大物ダブル又は累計5頭。
    6.ランニング射撃150m。
    7.ランニング5発5中。
    8.捕獲100頭超え。
    9.国内唯一の猛獣ヒグマ。
   10.巨大なエルク又はムース。
   11.アフリカの巨大アンテロープ類。
ライフル銃の選択。







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Posted by little-ken  at 18:23 │ハンティング銃と弾ライフル所持