2017年08月30日

本州鹿を獲る。

  1.本州鹿が獲れない理由。
本州鹿猟は獲物がやや小さくても、その分を挽回出来る様にエゾ鹿の2~3倍の頭数が
獲れれば、絶対に楽しいと思います。

しかし現実はその真逆しかも超大差、本州鹿捕獲は獲れ難くエゾ鹿は良く獲れます。本州鹿の
巻狩りでは通常0.05頭/日-人、20日通ってやっと1頭、多くてその2倍止まりですが、筆者の
エゾ鹿スクールでは2.0頭/日-人、少なく見ても20倍以上の差があります。

エゾ鹿猟では、鹿に会えない、上手くアプローチ出来ない、逃げる前に撃てない、当たらない、
これらは全てハンターの能力不足にあり、逆に言えばそれらの全てを至れる様に対策すれば、
どの項目も簡単とは申しませんが、結果的に誰もが筆者の様になれる筈です。

本州鹿が獲れない理由、それは猪猟を含めて1口に言えば、猟犬頼みであるからだと思います。
その為に狩猟その物をしっかり考える事も無く、射撃技術を含む本人の能力を上げ様とする
努力が殆んど見られない事にあると思います。


  2.気配消し技術こそ全て。
筆者もそうでしたから偉そうな事は言えませんが、若いハンターは新式のグッズに頼ろうとします。
最近では猟犬のGPSがそれになります。進行度合いはよく分る素晴らしい装置ですが、鹿が
GPSを着けておらず、着けているのは猟犬、鹿の位置は不明なのです。
鹿と猟犬の距離は経験上で30分が多く、換算すると数km以上になります。

本州鹿の巻狩りに於いて、最も重要な技術は気配消し技術です。これが不完全ですと待ち場に
掛かる鹿はこの山に不慣れな新着の若いオス鹿が、気配先取り合戦その物をまだ知らないか、
或いは後述のケツに火が付いた時だけに限られます。
普通の巻狩りグループが捕獲しているのはこれらの鹿だけに留まります。

鹿の走行速度は匂い追跡する猟犬より遥かに速く、鹿はリードするとゆっくり歩いて時々立ち
止まって先の気配を取ってから歩きます。
この状態では射手が気配消し技術を持たない限り、鹿が先に射手の存在に感付き、待ち場に
鹿が現れる可能性は殆どありません。

これが敗戦パターンその1で、全体比率の70%がこれに終わります。
筆者の9年間と70余日の敗戦もずっとこのパターンでした。
この結果に対し、作戦が当たらず待ち場に鹿が掛からなかったとしていますが、実際は鹿に
軽く交わされているに過ぎません。

しかし、そうして気配を取りながらゆっくり歩く鹿は、猟犬の追跡速度よりかなり遅くなります。
そうするとその内に鹿は猟犬に追い付かれ、再度猟犬を引き離す為に200mほど突走ります。
この200mをケツに火が付いた状態と言いますが、こんな時でも老練な鹿はすでに待ち場の
配置を知っていますから安全なコースを逃げます。

待ち場の配置を知らない新着の若鹿であれば、この200mの間の待ち場の射程内を通り、
捕獲の可能性が生まれますが、このパターンは全体比率の10%程度以下と思われます。


  3.気配を消せば全てが自然に分かって来る。
射手が自らの気配を消せていない=自分の気配の陰に隠れた鹿の接近には気が使ない状態
です。この場合は疾風の様に突然現れた鹿に射手は驚き、ダメ元射撃をするに留まります。
せっかく来てくれた貴重なチャンスですが、3/4以上がこのパターンで失中する、これが敗戦
パターンのその2になります。

獲れるのはそう言う事ですから、気配先取り合戦その物を知らない相当ドジな新着の若鹿と、
ダメ元射撃マグレ命中時だけとなり、非常に僅かな確率に留まる、これが本州鹿の巻狩りです。
そう言う現状ですから、やり方次第で1桁捕獲率のアップは可能だと、筆者は考えております。

例えば先のダメ元射撃時でも、もしこの時に鹿の接近に気が付いていれば話は大幅に変わり、
全く同じ条件の射撃もイージー射撃になり、過半以上が命中します。筆者の本州鹿の捕獲は
26頭ですが、2頭がケツに火の付いた鹿でした。
もちろん2頭とも接近にはかなり前から気付いていましたからイージー射撃でした。


  4.物陰に隠れない。
巻狩りはハイテク機器による捕獲ゲームではなく、また射撃技術に依る捕獲合戦でもなく、
鹿と射手との気配先取り合戦です。

姿を隠す事は基本的に悪い事ではありませんが、そのままでは鹿が見えませんから、結局は
物陰から伺う事になります。
伺えば3桁高い能力を持つ鹿に感付かれ、鹿の一方勝ちになってしまいます。
筆者の70余日の連続敗戦もここに原因がありました。

試行錯誤の末に辿り着いた手法は、大きな木等を背中にして、見張る必要のない丸見えに
場所に陣取り、目以外は動かさない事です。この手法に開眼して以来、拙者のグループ内の
順位は最下位から翌年には最上位に激変しました。
本州鹿を獲る。
  木の後ろにいたら視界は半分以下にしかなく、多少動かなければ見張りが出来ません。
  動けば射手の存在がバレてしまいます。また移動しなければ撃てませんから、その移動の
  瞬間に鹿はトンズラを開始し、難しい射撃になってしまいます。わざわざ発見され易い、
  且つ撃ち難い場所を待ち場に選ぶ事は有り得ません。



  5.スナップショット。
丸見えの所にじっとして、自らの気配を低下させますと、今まで自分の気配の影で分から
なかった鹿の接近する気配が自然に分かる様になります。
見張る必要は全く無く、目を閉じていても来れば自然に分かります。
むしろ目を閉じていた方が自らの気配が低下して好ましいと思います。

一方の鹿は目が両側に付いていますから、待ち場の人間もバックと一体の平面的に見えて
おり、大きな物を背中にしてジッとしている限り、丸見えでも絶対に発見されません。
これは確認テストで2mと5mまで鹿を引き寄せる事が出来ましたから絶対です。

そして完全に射撃ポイントまで来た瞬間、一気にスナップショットで撃ち倒します。
気配勝負に完全に勝ち、ノーマーク状態でスナップショットをすると、鹿は驚いてフリーズの
状態になり、撃ち獲る事は非常にイージーになります。

やるべきトレーニングはフルチョークで本式のスキート射撃をする事と、待ち場で座って銃を
置いた状態から座ったままのスナップショットのイメージトレーニングです。

スナップショット技術の無い普通のハンターの場合は、銃を引き寄せるタイミングが必然的に
早くなり、その瞬間に鹿は全速トンズラを開始し、かなり難しい射撃となります。
スナップショット自体はコンマ数秒しか時間を短縮出来ませんが、2つの差はその結果の
命中率には著しく大きな違いが出て来ます。


  6.何時もと同じ条件を崩す。
巻狩りは山を良く知っていなければなりませんが、まずはこれに拘る事を改めるべきです。
従来からの巻狩りでは、「何時ものメンバー」で「何時もの猟犬」を使い「何時もの山(複数)」に
於いて「何時もの鹿(複数)」を相手に「何時もの配置」で待ち受けます。

その結果、本州鹿は季節的な移動をしませんから、鹿の方が諸状況に詳しく、すでに何時もの
場所に何時もの射手がいる事も学習済みであり、猟犬の撒き方を学習済みです。

更にその上に射手は「気配消しが完全ではない」のですから、鹿との「気配合戦に敗れ」は
当たり前、「何時もの様」に待ちを軽く交わされて一方的な敗戦になります。
敗戦の原因は70%がこれですから山を詳しく知っている事は、この主原因に対しては少しも
メリット側になっていません。

筆者は1993年の鹿猟を始めてから12年目の90余日目、「何時もの敗戦」のパターンに気が
付きましたので、「待ち場を50m程度変え」、その上で「丸見えジッと作戦」、そして「バックショット
&フルチョークによるスナップショット」にしました。

最もダメハンターと言われ続けた筆者ですが、この日を境に大変身、翌年早々にはグループの
エースハンターに昇格しました。
その数年後には本州鹿巻狩り専用銃を新作、これも非常に効果があり、以後4年間に本州鹿等
約20頭を捕獲出来ました。

平均20日で1頭獲れる(0.05頭/日-人)と言われる巻狩りに於いて、同じ20日間(1シーズン)で
従来の5倍の5頭(0.25頭/日-人)を捕獲しました。
特筆は待ち場に来た鹿は100%射程内まで引き寄せに成功、失中や半矢未回収もゼロでした
から、この作戦は完璧でした。
本州鹿を獲る。
  本州鹿巻狩り用に新作したレミントンのリブ銃身21インチ+ターキーチョーク。
  近年はホローサイトやドットサイトを付ける事が流行っている様ですが、鹿は走っている
  場合も多く、リブサイトに勝るサイトはありません。



  7.エゾ鹿10頭/日、本州鹿0.25頭/日、最終的に40倍と遠く及びません。
当時のエゾ鹿猟は今よりかなり未熟で捕獲は2頭/日、これに0.25頭/日-人の本州鹿猟のトップ
クラスを以ってしてもまだ8倍の差がありました。
筆者は本州猟の限界を感じ、2000年に本州鹿巻狩りを卒業、エゾ鹿猟に専念する事にしました。

エゾ鹿捕獲はその10年後のピーク時は朝夕各々5頭ずつを捕獲、
「エゾ鹿肉の大量注文の思い出」にあります様に https://smcb.jp/diaries/7450072 捕獲数は
5倍の10頭/日まで向上しましたが、以後は需要が続かず低くセーブしておりました。

本州鹿巻狩りはこうして途中までに留まりましたが、この何時もの作戦を更に変えれば、
一桁猟果を上げ得る事が可能だと思います。

その手法として猟犬を100%変え(他のグループの猟犬を勢子付で借りる)、勢子には従来の
勢子長が補助に付く、待ち場の射手を半分入れ替え、旧来の射手も出来れば違う待ち場に付く、
これに気配消しの丸見え&スナップショットと組み合わせれば、更に数倍の猟果を上げられると
思われます。もちろん他にも効果的な猟法はまだまだあると信じます。
本州鹿を獲る。
  1993年末のこの日を境に本州鹿猟に開眼し、数年後には平均値の5倍の捕獲率に達し
  ましたが、それでもエゾ鹿に比べてまだ8倍もの差、2000年に本州鹿猟を卒業しました。








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Posted by little-ken  at 17:18 │ハンティング