2017年06月15日

狩猟をコスト計算で比較する。

今回は従来と違った観点からエゾ鹿猟のコスト比較をしてみます。
もし間違いがありましたら、御指摘頂ければ幸いです。

  1.エゾ鹿猟の実態。
筆者の所はエゾ鹿猟のガイド付単独猟に分類され、その狩猟データは下記の5205です。
     5:出会い回数が1日平均5回ある。
     2:捕獲頭数は1日平均2頭です。
     0:天候不良で出撃出来ない日はありません。
     5:大物捕獲が1日平均0.5頭です。

この数年はベテランが卒業し、新人比率が高まり、ややこの数値にやや届かなくなったのも
事実ですが、この名称に変更した2014年から遡った5年間の平均値は5205を10%程
上回っておりました。5205では客の事を生徒と呼んでいますが、その理由は分からない人に
ゴチャゴチャ言わせない為です。
北海道の狩猟は基本的にドッグレスの単独猟が多くなります。

これに対し、本州では殆どが5~10人程度のグループ猟で猟犬を使います。
その結果、2~3日やって1頭獲れるのが一般的な平均値で、それを参加人数で割りますと
捕獲率は0.05頭/日-人になり、20回通うと1頭を捕獲出来る事になります。

  2.本州猟の実態。
先日も相当獲れる事が自慢のグループのデータを頂き計算してみました。
シーズンに37日出猟、かなり気合が入っているグループです。24頭捕獲、10頭未満のグループ
もザラですから素晴らしい数字です。
平均すると3日で2頭とかなり獲れていると言えますが、延出猟315人、平均参加8.5人ですから、
1日1人当りの捕獲率では0.076頭/日-人と平均値の1.5倍程度になります。

どんなに獲れるグループでも一般的平均値の2倍を超える所は甚だ僅かです。
つまり超抜群と言われるグループでも捕獲率は0.1頭/日-人の程度、10人グループなら平均で
毎日1頭が獲れると言う数字です。

北海道の2頭/日との比較であれば2~4倍程度、ならば地元猟ならタダですから、それ位の差で
あれば高額な飛行機代やガイド代と貴重な休暇を使って北海道まで行く必要が無いと言えます。
一見すると正しそうな気もします。
因みにエゾ鹿3日ガイド猟はその全費用約20万円が必要で決して安くはありません。

実は多くの高捕獲率が自慢のハンター達に聞くと何時もそう言う答えが返って来ました。
信じ難いのですが、多くの人が実際に心からそう思っているのが事実の様です。

  3.でも何処か変です。
まず人数換算が行われていません。
10人で1頭なら1人当りは0.1頭/日です。エゾ鹿猟は参加1人ですから2.0頭/日のまま、20倍も
獲れます。
これによって一桁も話が変わってしまうのですから、きちんと検討し直さなくてはなりません。

次に変なのは地元猟のコストをゼロとしている点です。
自宅が猟場の中にあり直接徒歩で行けるなら本当にゼロと言えます。
或いは極めて近くであれば著しく高額でない事は容易に想像が付きますが、実は車を使うと
なると一気に話が大幅に変わって来ます。

  4.正しい車の走行コスト。
車の走行コストは非常に分かり易いタクシーなら約400円/kmです。
マイカーなら運転手の人件費等は不要ですからその分は確実に安くなります。しかし並の
マイカーはタクシ-より高額な車両を使い、タクシーのLPより高額な燃料であるガソリンを
使っていますから決して低額走行コストではありません。かなり少な目に見ても概ね100円/km
を超える費用が掛かり、奥様の安価で低燃費な軽でも50円/kmを超える費用が必要になります。

筆者の本州鹿巻狩り後半の猟場は非常に近いと言える隣市でした。
ほぼベストな状態にあり、無料下道で片道35km、1日7000円の費用になりますが、1頭捕獲
コストは巻狩り平均値の捕獲率0.05頭/日-人としたら20日通わないと1頭捕獲出来ませんから、
かなりベストな状態であっても14万円/頭も掛かる事になります。

本州鹿巻狩り初期は隣県まで片道160kmの遠征、高速代が片道3000円必要でしたから、
1回出撃当り38000円も掛かっていた事になります。
それで標準捕獲率とすれば1頭捕獲コストは76万円/頭になります。
都心から丹沢なら距離的にはやや近く有料道路的に言えばもっと高額、伊豆半島半ばまでなら
距離的にはもう少し遠くで有料道路的にはかなり大幅高額と言ったところでしょう。
捕獲コストはもっと高額になるのかも知れません。

北海道エゾ鹿ガイド猟は総額20万円で3日猟から6頭捕獲出来ますから、1頭のコストは
3.3万円/頭とバカ安で、本州鹿巻狩りの76万円/頭に比べて23倍もの大差になります。
後述の獲物の付加価値を考慮すればこの差はもっと著しく大きくなります。

  5.エゾ鹿の付加価値。
獲物の価値として本州鹿とエゾ鹿と比べると体重は2.5倍、しかも脂がたっぷり乗って比較に
ならない程の美味しさ、更に筆者の猟場では繁殖が平場で行われる為、出会いの70%が3段角
成獣オス、憧れのビッグトロフィーは平均値の腕があれば2~3日で捕獲出来ると言うのが
エゾ鹿ガイド猟の非常に大きな魅力になります。

エゾ鹿の魅力分のコストは上手く評価出来ませんが、ハンターの出猟目的にビッグトロフィーの
ゲットがトップに出て来る事、本州鹿1頭に76万円も掛かっている事を考えますと、エゾ鹿の
ビッグトロフィーゲットに150万円なら払っても良いと言う感触は間違った評価でないと思います。
実際はその1/8の20万円で3日猟が楽しめ、6頭の捕獲があり、1頭の大物が含まれます。

同様の延長線で行きますと200万円払ってアフリカのビッグゲーム主要4種も抜群のコスパで
悪くない事になり、筆者は海外にも8回通いましたが、実際はそう言うハンターはほぼ皆無でした。
狩猟をコスト計算で比較する。狩猟をコスト計算で比較する。
  角長86cm体重150㎏の超大物エゾ鹿。そのエゾ鹿モモは脂肪圧5cmの超絶品でした。

  6.コスト計算の修正しても圧勝構図は変わらない。
このコスト計算に決して間違いはありませんが、すでに持っているマイカーは燃料等の消耗費
分の追加だけで多少なら走れると言う一般的な考え方も必ずしも間違ってはいません。
従ってマイカーの走行コストは1/2ないし1/4になると見てもいけなくはありません。
筆者も追加走行は車両価格がタクシーの3倍もする600万円のランドクルーザーですが、
目的によって50円/kmと75円/kmでやっています。

従いましてここで説明して来ました捕獲コストや比較データも1/2ないし1/3に減額して頂いても
構いませんが、それでもエゾ鹿の捕獲コスト圧勝構図は全く崩れません。
そしてエゾ鹿のビッグトロフィーをゲット出来る魅力の圧勝構図も全く崩れません。

それ程までに魅力のあるエゾ鹿猟ですが、多くのハンターがその魅力を感じていても実際に
来る人は10%を遥かに下回り1%程度です。
海外猟に至っても同様なのですが、実際に行動を起こす人はたったの1人でした。
きっと日本語が理解出来なくて、コスト計算も出来ないのだと思います。




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Posted by little-ken  at 17:15 │EHG5205近況ハンティング